47 ユイン第五王子
「ん~。食べ物は……食糧難になっているかはわかりませんね。城下町だから、食べ物が集まっているだけで、田舎の方は困窮しているのかもしれませんね」
「あぁ、そうだな。見た感じは……普通に商売ができていそうだが」
城下町では、城で働く人も集まってくるので食べ物が豊富にあるのかもしれない。
アラマンダは、パン屋の店先でパンを買いながら店主に話を聞いてみることにした。
「こんにちは。このパンを二つ包んでいただけますか?」
「あいよ。100FBだよ」
アラマンダは街中で両替をしたばかりのファイ国の通貨を渡す。
「あの……価格って以前からこの価格でしたか?」
「お? お嬢ちゃん、よく覚えているねぇ。今月から値上がりしているんだよ。なんせ、小麦が手に入らなくなってきてねぇ」
「そうでしたか。ありがとうございます」
パンの包みを受け取ったアラマンダはルートロックと別のお店にも行ってみる。今度は菓子店だ。
そこでもさりげなく聞き込みをしてみたが、そこでは価格は変えずにケーキの大きさを一回り小さくして販売していると教えてくれた。みんな、苦肉の策でしのいでいるようだ。
「ロック様。やはり……」
「あぁ、何か異変が起きているのは間違いないようだな」
ルートロックとアラマンダが、顔を見合わせたその瞬間。
「あの……失礼ですが……」
ルートロックとアラマンダの間の背後に人が立っており、耳元で小声で話かけてくる人物がいた。
(! こいつ、気配を消して近づいてきていたのか!)
ルートロックは、咄嗟にアラマンダを引き寄せて自分の背後にアラマンダを隠す。
暗殺者だとしたら、かなりの手練れだろう。相手に気配を気取られることなく接近してくるとは気味が悪い。
「失礼致しました。私、ファイ国のユインと申します。シーダム王国からようこそお越し下さいました。お二人がお忍びかと思い、静かにお声かけさせていただいたのですが、驚かせてしまい申し訳ございません」
ルートロックはまだ、警戒を緩めることはない。そこには体躯の良い銀髪で赤い目をした男性が立っている。身なりは……よく見るとこの国の騎士服を着ている。
「私は……ここではロックと名乗らせてもらおう。後ろにいるのが妻だ」
「驚かせてしまい、申し訳ありません」
再び謝罪しながらファイ国の王家の紋章の入った剣の柄をチラッと見せる。
確かに王家の人間で間違いないと確認がとれたところで、ルートロックは小さく息を吐き出した。
「ロック様、ここでは何ですから私の家へどうぞ……」
ここでいう家とは王城を意味している。
ルートロックも手紙に記載されていた内容と、国交を結んでいないシーダム王国になぜ手紙を送ってきたかなど聞きたいことが山ほどあったので、場所を移すことに賛同した。
(私のドラゴンもいるし、アラマンダにはメオ様がいるから……万が一、囚われても何とかなるだろう。国賓として招かれていない以上、ここで秘密裏に処理されてしまう可能性もある。ここで殺されたとしてもファイ国にはメリットが何もないから、そんなことはないとは思うのだが)




