46 城下町の散策
ドラゴンに乗って移動している時に、空にうごめく黒い物が群れを成して飛翔していくのが遠くに確認することができる。
(……あれがババタかしら? 大量発生しているというのは、本当かもしれないわね。あんなに群れを成して移動しながら農作物を食べているのだとしたら、大変なことになるわね)
そんな不安を抱えながら、ファイ国の王都近くの城が見える丘に、そっとドラゴンは降り立った。ルートロックが先に地面に降り立った後、アラマンダの手を取ってドラゴンから降りるのを手伝う。メオもジャンプして地面に降りたのをルートロックは確認すると『隠ぺい魔法』を解除してすぐに指輪の中に聖獣ドラゴンをしまってしまった。
ドラゴンはどこの国でも目立ちすぎる。聖獣がいることで民の心は安心できるが、ドラゴンの大きさを目の当たりにするとどうしても混乱は避けられないとルートロックは考えていた。
ルートロックとアラマンダの二人は商家のご子息とその彼女に見えるように装い、辻馬車に乗ってファイ国の城門の前までやってくる。辻馬車に乗るまでに聖獣メオもアラマンダの指輪の中に入ってもらう。
今回は、ファイ国からの手紙に対する返事を出す前に、直接王都までやってきてしまった。
シーダム王国の王太子夫妻がお忍びでやって来たということにして、城門まで行き、取り次いでもらうしかない。空を飛んできたから国境の検問所も立ち寄っていない。ある意味、ファイ国に不法侵入していることになる。
「ファイ国のこのお手紙を下さった……お名前は……そうそう、ユイン第五王子に直接、ルートロック殿下の封書を渡していただきましょうか?」
「そうだな。助けて欲しいと手紙を送ってきた人物に会うのが、一番良いだろうな」
ルートロックは、シーダム王国の王家の刻印入りの封書を城門にいた門番に手渡し、ユイン第五王子に届けて欲しいと依頼をして、その日は城下町を散策することにした。
ルートロックは城下町を歩けば、食糧難かどうかわかるかと思って、今晩の宿を探しを兼ねて、ぶらぶらと街歩きをアラマンダと手を繋ぎながら楽しむことにした。
「ロック様……どう思われますか?」
アラマンダは、王太子のルートロックのことを念の為、街中では「ロック」と呼ぶようにした。
「クッ……そなたにロック様と呼ばれるとは……破壊力がすごいなぁ。想像よりも……ドキドキして新鮮だ」
ルートロックは、子供の頃の呼び名をアラマンダが急にしてきたので、突然のことに驚き胸を押さえる。
「だ、大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ない。嬉しすぎて心臓が口まで出てきそうになっただけだ……」
「うふふふ。ロック様、ご冗談も素敵ですね」
アラマンダとルートロックは、二人だけの甘い会話を楽しみながら城下町の様子を観察する。




