43 デートの行き先
「私にも知らないことはたくさんございますよ? 知識に関しては偏っておりますので、ルートロック殿下の足元にも及びませんわ」
アラマンダは、自分の知識が毒に関することばかりに偏っていることを自覚しているので、とても恥ずかしくなる。元はと言えば、ルートロック殿下の横に並び立てる女性になりたいと願い、命を奪う毒について自分なりに調べていただけなのだが、いつの間にか「毒」に関することで王太子妃の右に出る者はいないと思われているのかもしれない。
アラマンダはふと、自分のとった行動を思い出す。
「ひょっとして、王太子妃選考会で私が服毒したのを聞いて、毒に関する知識があるなら、そのババタに毒を食べさせて駆除して欲しいとファイ国が思って手紙をよこしたという可能性はありませんか?」
アラマンダの言葉に、ルートロックもハッと顔を上げる。
「確かに! その可能性はあるな。服毒をしたのに生き残った女性が王太子妃になったという話は隣国には届いているが、もっと離れた国にまでその話が知れ渡っていてもおかしくはないな」
「であれば、やはり私が訪問するのが良いのでしょうか」
「う~む。それは……よく知らない国に送り出すのは……許可できないなぁ」
ルートロックは、こちらを見上げて話を聞いていたであろうアラマンダの聖獣のメオにも確認してみる。
「アラマンダだけで行くのは、反対ですよね? メオ様」
「にゃ~」
どうやら、メオもその意見には賛同できないらしい。
そもそも、隣国でもない。国同士の位置があまりにも離れすぎている。
(前世なら飛行機があって、ビューンとあっという間に行くことができたでしょうに……あっ!)
森野かおりだった時の知識を思い出して、一つの方法が浮かぶ。
「では、ルートロック王太子殿下の聖獣ドラゴン様でサクッと行ってくるのはどうでしょう?」
ルートロックもすでにその考えには辿りついていたようだが、まだ首を縦には振らない。
「いくらドラゴンと共に、すぐに飛んで行けるにしても……どんな国かわからないところにアラマンダを向かわすのは許可できないな……やはり、私も一緒に行く方がいいだろうか」
アラマンダはルートロックの言葉にギョッとする。
(ここにサルフがいなくて良かったわね。彼がいたら公務が滞るから止めてくださいと絶対、止めるはずだもの)
でも、ルートロックが一緒に行くのが一番良いのかもしれない。なぜなら、国交を結んでいないなら、これを機に結んでいくことができたらお互い友好国となり、別の助けを得られることができるかもしれない。
「メオ様。ルートロック王太子殿下と私と一緒についてきていただくことはできますでしょうか?」
「にゃ~」
メオは、前足で顔を洗いながら了承する。
どうやら王太子と王太子妃が夫婦二人揃っていくなら大丈夫だということなのだろう。
「ルートロック王太子殿下! 私と一緒に参りましょう!」
「そうだな……今後、国交を結べばお互い支え合える良い国になるかもしれないから視察を兼ねて見に行ってみてもいいかもしれないな。ドラゴンを使えば、すぐに帰って来られるし、身体への負担も少ないだろう」
(サルフは……絶対、泣きながら考え直して下さいと言うだろうが、王太子妃を一人では向かわせられないし、いつも何かを察して助言してくれるという聖獣のメオ様が了承したのであれば、二人で行ったほうが良いと判断したということだ)
ルートロックは、そう判断しアラマンダと二人で外国へ行けることに内心とても喜んでいた。
(行き先は不安のある国だが愛するアラマンダと旅に出るのは、初めてだ! 本当は素敵な場所に新婚旅行に行きたいが、公務が立て込んでいてまだすぐに行けそうない。今は2人で公務であっても出かけられるだけで幸せだ)
「アラマンダ。今回は、ファイ国に挨拶だけしたらすぐに帰ってこよう。どこまでが信用していい話なのか判断材料が足らなくて、安心ができない。長居は無用だ」
「かしこまりました。うふふふ。それでしたらサルフ宰相もお許しいただけるでしょうね」
「まぁ……そうだな。それにしても、私はアラマンダと二人でデートできることの方が嬉しいな」
「確かにそうですわね。一緒に外にお出かけする機会がございませんでしたものね。殿下とのデート、私もとても楽しみですわ」
こうしてルートロックとアラマンダのデートの行き先が未知の国、ファイ国に決定した。
この後。
「王太子妃とのデートの行き先が異国って本当ですか?」
とサルフが声を荒げて叫んだのは言うまでもない。




