42 ババタの大量発生
「では、ひとまず私が行って様子を見て参りましょうか?」
アラマンダは、前回の山岳地帯に行く時と同じように一人で見てくることをルートロックに提案してみる。
「う~む。アラマンダならそう言うと思ったよ。でも、ファイ国とは国交を結んでいないから正直どんな状況なのかわからないし、さすがに王太子妃が行くのは……危険が大きすぎる」
ファイ国からの手紙の内容は、ババタと呼ばれる虫が大量に発生していて穀物などを食いつぶしてしまって困っている。自国内でできる限りの最善が尽くしたが、ババタの発生に対応が追い付いていないから、助けてもらえないだろうかという内容だった。
アラマンダは、前世で見た事のあるニュースが頭に浮かぶ。
(森野かおりとして生きていた時に、海外の国で昆虫が大量発生して被害を受けているというニュースだったかドキュメント番組を観たことがあったわね。あれは……バッタだったかしら……。それに似ているような状況が起こっているというのかしら)
森野かおりの時に見たTV映像では、無数に空を埋め尽くして移動していくバッタの映像が流れていた。その光景を思い出したアラマンダは、ブルッと身震いをする。
(あんな感じで大量発生しているとしたら、確かに恐怖だわ)
「でも、このファイ国からの手紙だと助けてもらえないだろうかとは書いてありますけれど、食糧難に直面しているから食糧を支援して欲しいという意味なのか、ババタの発生を抑える為の対策を手助けして欲しいのか、どちらの意味で書かれたのかわかりませんね」
「そうなんだ。或いは、その両方という意味にも受け取れるがな」
ルートロックは国交を結んでいない国を支援するべきか悩んでいるようだった。
「ちなみにババタとはどのような生き物ですか? このシーダム王国ではあまり耳にしないですけれど」
アラマンダは、毒に関わる知識はずば抜けているけれど、昆虫は人並にしか学んでいない。アラマンダ本人の興味がなかっただけなのだが、きちんと図鑑を読み込めばすぐに知識を手に入れることができると思われた。
「ん? ババタか?この王国にも生息はしているけれど、ひょっとしたらファイ国のババタとは気候が異なるから種類が違うのかもしれないな」
「そうなのですね。シーダム王国にもいるのですね。知識不足で申し訳ありません」
アラマンダは自分の勉強不足をルートロックに謝罪する。
「いや。ちょっと安心した。アラマンダは何でも知っているから虫にも精通していると勝手に思い込んでいたんだ。アラマンダの知らないことがあるなんて、とても新鮮で、それを恥ずかしがりながら告白する姿が何とも可愛いと思ってしまったよ」
ババタの話をしていたはずなのに、いつの間にかアラマンダが可愛いと甘い言葉を紡ぐルートロックに、アラマンダは耳まで真っ赤にする。




