40 指輪
アラマンダ王太子妃が聖獣の猫、メオと一緒にシーダム王国の山岳地帯に住む部族の為に学校建設を建てることに尽力したあと。
一妻多夫の求婚を山岳部族のナウに提案されて、それを退けてからルートロック王太子は、妻であり王太子妃のアラマンダに今まで以上に愛を囁くようになっていた。
(アラマンダの女性としての魅力がいろんな人に認められるのは嬉しいが、求婚されるのは……困る)
だからこそ、アラマンダに自分の気持ちを真っ直ぐに伝えられるようにルートロックは努めていた。
そんな揺るぎない寵愛を受けているアラマンダも、王太子妃としてルートロックの公務を手伝うようになっていた。
最近では、アラマンダがルートロックの執務室に立ち寄る時間も増えてきている。
予想以上に博識なアラマンダの意見も参考までに聞いておきたいというルートロックとサルフ宰相の意向により、アラマンダは二日置きにルートロックの執務室に顔を出すようになっていた。
それでも、公務で忙しい王太子のルートロックとは婚姻を結んだ後もデートらしいことはしたことがない。
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執務室でルートロックとアラマンダ、そして聖獣のメオが休憩をしている時のこと。
「アラマンダ。王宮魔導士にお願いして、聖獣が住処として出たり入ったりできる指輪を作ったのだが、どうだろうか。私の持っている聖獣のドラゴンもこの指輪から出入りしていただろう?」
ルートロックの手のひらには、聖獣のメオの瞳と同じ翡翠色の魔石が組み込まれた指輪があった。
デザインもルートロックが所持している指輪と似ているけれど、少し女性らしく繊細な模様が刻まれている。
「まあ! メオ様の瞳と同じ色で綺麗ですわね!」
「にゃ~」
どうやら、魔石の色自体はメオ様のお気に召したようだ。
(……でも、メオ様は指輪には入ってくれなさそうね……。だって自由気ままな猫様ですから)
アラマンダはメオが自由奔放に出歩くことが好きな猫だと理解しているので、指輪の中に入る機会があるのかと考えを巡らしてみる。
(きっと入ってくれなさそうね)
「うふふふふ」
思わず考えていたことが、顔に出ていたようで笑いがこみ上げてくる。
「どうして笑っているのだ?」
ルートロックはなぜアラマンダが笑い出したかわからずに、理由を問うてみる。
「いえ、ルートロック殿下のお気持ちはとても嬉しいです。指輪をわざわざ作っていただきありがとうございます。でも、メオ様は猫でございましょう? いつも夜になるとどこかにふらっとお出かけしているようですので、あまり指輪の中に入る機会はないかもしれません」
「メオ様、指輪の中に入ることも……あるだろう?」
ルートロックは、アラマンダの膝の上で丸まっているメオに直接聞いてみる。
「にゃぃ」
「うふふふ。メオ様。『ない』と今、おっしゃったのですよね?」
メオ様が人語を話すのは、いまだアラマンダの前だけでルートロックの前では人語で話そうとしない。
(……でも、今、明らかに人語を話しそうになっていましたわよ……。気が抜けているとポロッとルートロック王太子殿下の前でも人語で話すようになるかもしれませんわね)
メオもうっかり人語を話してしまいそうになり、「しまった!」という顔をしている。
「ルートロック殿下。いつかこの指輪を必要とする日が来るかもしれません。だから、今すぐには使う機会がないかもしれませんが、常に指輪は身に着けておきますわ」
「あぁ、……そうしてくれ……」
ルートロックも、メオの人語っぽい返事が面白くてツボにはまってしまったようで、まだ顔を横に背けて右手を拳にして口元を隠してクククと笑い続けている。




