30 衰退していく民族
パチパチパチパチパチ
火の爆ぜる音を聞きながら、しばらく火に当たっていると、この民族が差し出してくれた温かい飲み物をいただく。
身体の中がほっこりしてくるのを感じた、ちょうどその時。
「おまえさん、帰れなくなったのかい?」
このシーダム王国の言葉で、急に話しかけられアラマンダは、腰かけていた木でできた椅子の上から立ち上がり、慌てて後ろを振り向く。
洞穴の入り口に狩りから帰ってきたらしき男性が一人立っているのが目に入った。
「は、はい。初めまして。アラマンダです。吹雪で帰れなくなったので、雪が落ち着くまでここに留まらせてください」
(王国語を話せる方もいらっしゃったのですね。……でも、この方だけかしら?)
この民族の話を聞くとしたら、この人が適任かもしれない。
「オレの名前はナウ。宜しくな。困った事があれば何でも聞いてくれ」
「ありがとうございます」
アラマンダは、あくまで村娘を装って、貴族独特の品の良さが動作に出ないように気を付ける。
「それは、野兎ですか?」
ナウと名乗った男性の手には、狩ってきたと思われる野兎が3羽がいた。
「あぁ、美味しそうだろう?」
「えぇ、そうですね」
アラマンダもヘルムント辺境伯領で兎狩りはやったことがあったので、見慣れた光景だった。
「私も何か手伝います」
そう言って、当たり前のように野兎の皮をはぎ、調理前の下処理をナウと一緒に行った。
(大事な命を頂くのですもの。この野兎の毛皮もこの民族にとっては防寒着として必需品だったり、これを売ることで暮らしが成り立っているはずだわ)
ナウと一緒に作業をしながら、この山岳民族のことをいろいろと教えてもらうことができた。
まず、この山岳地帯には三つの部族がいること。そして、三つの部族それぞれが独自の言語を話しているので、言葉の障害があり交流は思ったほどできていないこと。そして、三つの部族を集めても百名くらいしかいないということ。戦争からの避難や迫害を受けて隣国から逃げてきたけれど、言葉の壁もあり同族以外と結婚する機会もないので繁栄することができず、人数が減少していっているとのことだった。
「実はな、もう一つ部族はいたんだが……そこは、もう無くなってしまったな。子供が生まれて来なければ衰退していくだけだからな」
「……そうなのですね……」
ひっそりと隠れ住んでいる山岳民族の話を聞いて、アラマンダは何かできることがないか一晩、洞穴の中で彼らと雑魚寝をしながら考えた。




