28 極寒の山岳地帯
ルートロックの執務室に参りますという伝令を出してから、約束の時間に王太子妃のアラマンダはメオを両腕に抱えて、ルートロックの執務室を訪れた。
(……メオ様、少し重たくなられたかしら?)
アラマンダは、何となく丸みが増したような白くてふわふわの毛を優しくなでながら、ルートロックに聖獣メオからまたしても、ご助言をいただいたことを進言する。
「ふ~む。あの山岳地帯かぁ。私も実は隣国から逃げ込んでくる民族が現在どれくらいいるのか把握できていないから気になってはいたのだが……」
「国境検問所を避けて、山の端から侵入してくるため、どれくらいの人があそこに流れついているのか把握ができていないのですよね?」
「あぁ、そうなんだ。……それで、今回もメオ様はアラマンダにご同行いただけるのでしょうか?」
「にゃ~」
「それは、助かる。アラマンダに付き添って下さり感謝申し上げます」
(ルートロック王太子殿下も猫語がわかるのでしょうか……非凡な私では、普通の猫との違いが全くわかりませんが……)
ルートロックと聖獣メオの傍で会話を見守っていたサルフ宰相は、なぜ会話が成り立つのか理解できずに首を時々かしげながらも、ルートロックの指示にはきちんと従ってくれる。
旅程などの話がまとまると、今回は雪深い山に訪れるということでルートロックの聖獣ドラゴンの背中にメオとアラマンダを乗せてビュンと一瞬のうちに向かってもらうことになった。
(下道と山道で行くのもいいけれど、今の雪深い時期はさすがに私も不安だもの。ルートロック王太子殿下の聖獣様にはきちんとお礼をしないといけないわね)
今回は、もともとこの王国の民ではなく迫害にあって逃げてきた隣国からの移民のため、王太子妃という身分は明かさずに、雪で帰路につくのが困難になった女性が、山岳民族の存在するであろう集落に天候が良くなるまで滞在させてもらう……という設定で、潜入することになった。
「……だからといって、こんな猛吹雪の中……行かなくても……寒いにゃ~」
前回の移動と異なるのは、今回は馬上ではなくドラゴンの上に防寒対策をとったアラマンダと、アラマンダの外套の中に丸まって入り込む聖獣猫のメオがいるということだ。
「やっぱり上空は……寒いですわね……」
アラマンダは、もこもことした毛皮の帽子で、亜麻色の髪も耳も全て隠している。
ルートロックの聖獣ドラゴンもゆっくり飛行してくれてはいるけれど、極寒の中、山岳地帯に向かっているのでアラマンダも正直寒くて仕方がない。
(よ、予想をはるかに超えた寒さでしたわ……)
アラマンダとメオは早く到着することを願いつつ、山岳地帯までの道のりを何とか乗り切った。
道中、聖獣猫のメオが、ドラゴンの背中に肉球をポンポンと押し当て、労いの言葉をかけているかのようにアラマンダには見えた。
(聖獣様同士、仲良く会話をされているのかしら?)
アラマンダは微笑みながら、聖獣同士の触れあいを楽しんでいた。
本当は、メオはドラゴンに乗り心地について文句を言っていたのだが……。




