27 聖獣メオの要望
アラマンダが王太子妃となって北部の国境沿いに起こった、毒による不審死事件を王太子妃自らが解決してから数週間後のこと。
アラマンダの召喚した聖獣の猫、メオは相変わらずアラマンダと二人きりの時にしか人語を話さない。王太子のルートロックもメオと人語で会話をしたことはまだ一度も無かった。
アラマンダの私室で、聖獣メオは好物の魚型のマドレーヌを、時々「にゃごにゃご」と普通の猫になりながら一心不乱になって貪りついて、ティータイムを堪能していた。
「にゃ~。もうお腹がいっぱいだにゃ」
「はい、メオ様。こちらのミルクもどうぞ」
王太子妃のアラマンダは、お皿に入ったミルクをメオの近くに置き直す。
(うふふふふ。普通のマドレーヌはあまりお召し上がりにならなかったのに、魚型に形を変えただけでとても見事な食べっぷりですわ~。猫好みの形にすることも大事ですのね)
アラマンダは、メオの好物が何か知りたくて料理長にこっそり指示を出して、最近は魚の形にしてもらっていた。
(やはり、メオ様は猫としての動物本能もお持ちなのでしょうね)
メオがおやつを完食する姿を見て、アラマンダは嬉しそうに微笑んだ。
「そういえば、アラマンダはヘルムント辺境伯領に住んでいたであろう? ヘルムント辺境伯領の北側の山岳地帯については詳しいかにゃ?」
「えぇ。毎年、許可をいただいて研究の為、毒の植物を求めて足を運んでおりましたが。……でもここ数年は足が遠のいておりました。あの山岳地帯はノーム公爵領になっておりますが、それが何か?」
「最近、いろんな山岳民族が他国から流入してきているのは知っているかにゃ?」
「もちろん、存じております。隣国から戦争や迫害を受けて逃げて来た者がいるというのは、耳にしたことがございます」
「それなら、話は早いにゃ。一度、あの地に我を連れて行って欲しいにゃ。きっと我の力が必要となっている気がするにゃ」
(そうなのですね。前回もメオ様の助言で、北部の国境の駐屯地に行くことになり毒で混乱に陥る前に、問題が早期解決できましたものね。メオ様のご助言があるのでしたら、向かわないわけには参りませんわ)
メオは行ってみないとわからないけれど、何か問題が起こっているようだと教えてくれる。
「かしこまりました。あの地はすでに雪深くなっていると思われますので、暖かくして参りましょう。ルートロック王太子殿下に許可を得て参りますわ」
「我も、ルートロックの執務室に共に行くにゃ」
アラマンダとメオはいつものように、ルートロックの執務室に行く旨の先ぶれを出してから、山岳地帯の件の相談に向かった。




