22 持ち込まれた毒
「すみません。団長が最期に亡くなられた時の場所にご案内いただけますか?」
「何か、わかったのですか?」
静かに無言で、アラマンダが日誌を読み終わるのを立って待っていたナルモ副団長が驚いたように顔を上げた。
「まだ、確認してみないとわかりませんが……」
「かしこまりました。ご案内いたします」
ナルモ副団長に連れられて、団長の最期に亡くなった場所、その他二名の不審死を遂げた方の最期にいた場所に案内してもらう。
「やっぱり……あったわ……」
アラマンダの予想通り、亡くなった方々はいずれも室内で亡くなっていた。そして、彼女は部屋の中のある場所で、気になる物を見つけた。
(三人の部屋にあったとすれば……まだ、この駐屯地の中にある可能性が高いわ!!)
アラマンダは、今日の気温も低くなっていることで更なる犠牲者が出ると容易に考えが行きつく。
「ナルモ副団長。至急、暖炉の使用、火気の使用を中止してください」
「え? でも、暖炉がないと今度は凍死してしまう者が出来てきてしまいますよ……」
「いえ。問題がないか確認できれば、使用できますのでひとまず、今からしばらく火気の使用を禁じてください。私が全て確認いたします! 時間がございませんので、早くお願い致します!!」
アラマンダの緊迫した状態が伝わったのか、ナルモ副団長は走って部下に指示を出しに行く。
(一体、こんなものがどこから入ってきたのかしら……)
アラマンダは自分の持ちうる知識を、駐屯地に伝えないといけない。
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アラマンダは毒となる物を特定することができた。でも、アラマンダにとっても初めて目にした品種だった。似たような物はこの王国にもあるけれど、今、アラマンダの手の中にある物はこの国の物ではないように思われる。
全ての火気の取り扱いを禁止したあと、ナルモ副団長に原因について話し始める。
「ナルモ副団長。燃やすと有害な毒を発生させる木があることはご存じですか?」
「……いえ。知識として……存在しているというのは昔、聞いたことはありますが、今まで目にしたことはございません」
「そうですね。この王国で自生している樹木ではほとんど見かけません。でも、今回、団長を死に至らしめたのは、暖炉の中に入っていたこの薪です」
アラマンダは、黒く墨になっている部分とまだ焼け残って年輪が見えている薪をたらいに入れて、ナルモ副団長に見せる。
「……こ、この木ですか?」
「えぇ、そうです。一見、何の変哲もない乾いた薪に見えますが、これは燃やすと簡単に致死量に至る物質を放出することができる木です」
「……なぜ、団長のお部屋で使われていたのでしょうか?」
(それは、私も疑問に思っているのよね。入手経路を確認しておかないと再び同じような事件が繰り返されてしまうわ。きっと団長が寒い思いをされないように気を利かせた団員が毒とは知らずに、部屋を暖めてしまったのね)
思いやりが、不幸にも尊敬している団長の死を招いてしまったと考えられるけれど、それについてアラマンダは一切触れなかった。
「ちなみに、この薪はどこからか購入された物ですか? それとも、団員の方が拾ってきて乾燥させたものでしょうか?」
「……団員が拾ってきてはおりません。冬になる前に商団から購入したはずです」
「ナルモ副団長。この樹種の薪は恐らくこの王国に自生していないのではないかと思います。だから、他国から意図的に持ち込まれた可能性も考慮しなければなりません」
アラマンダは、自分の持ちうる毒の知識の中から他国から流れついた薪だと目星をつけた。
「この有毒な物質を放出するこの木ですが、木の表面の表皮に特徴があります。これをご覧下さい」
アラマンダは、毒を発する木の特徴の一つとして、表皮の模様についてナルモ副団長に見分け方を教える。
「ただ、表皮を削ぎ落している場合の判断は難しいです。火をつける前のこの匂いを覚えるしかありません。これは、燃やすと有毒になる木は、似たような成分が多いので我が国の木でも燃やすと毒が発生する木はこのような香りがします。あまりそのような木は多くないので、見かける機会は少ないかとは思いますが……。燃やしていない時は、有毒ではありませんので、この匂いで特徴を覚えておく必要があります」
(表皮がなければ、匂いでかぎ分けるしかないのだけれど、こういう作業に慣れていないとすぐに判断は難しいかもしれませんわね)
その後、アラマンダは、駐屯地にある全ての薪を副団長と共に一緒にチェックしていく。すると、およそ3割の木が燃やすのに適していない、有害な木が含まれていた。




