21 アラマンダの仮説
「アラマンダ王太子妃殿下、こんな雪の中、こちらまで視察に来て下さりありがとうございます。実は……この駐屯地でも騎士が不審な死をとげております」
ナルモ副団長は眉をひそめた状態で、苦悶の表情を浮かべる。
(ひょっとしたら、仲の良かった団員が命を落としたのかもしれないわね)
「ちなみに、いつお亡くなりになったのですか?」
「……合計三名が急に亡くなりました。最初に亡くなったのは、五日前、その次が三日前、そして今朝です」
(やはり、村人が亡くなった時期と同じくらいの日を境に、不審な死が始まったのね。それにしても、五日前に共通することって何かしら……)
「この街道沿いの村も五日前から不審死が始まったとおっしゃっていたのですが、五日前から何か……きっかけになるような出来事はなかったでしょうか?」
「え? 村も五日前からですか? 少々、お待ちください。少し、日誌などを持って参ります」
「えぇ、宜しくお願い致します」
ナルモ副団長が日誌を取りに行くと、アラマンダは聖獣のメオと応接室で二人きりになる。共に来た護衛騎士は、駐屯地周辺に異常がないかひとまず確認をしに行ってもらっている。
「メオ様。私は、この不審死は毒だと思っているのですが、メオ様にお出しするお水も念の為、私が持って参りました物をご用意致しますので、こちらで出された物はお召し上がりにならないように宜しくお願い致します」
アラマンダは、毒だと仮説は立てているけれど、まだ毒の特定ができていない以上、この土地の物を口にするわけにはいかなかった。
「我は……毒など効かぬから、気にすることはないにゃ」
「そうは申しましても……念の為でございますわ」
アラマンダは、聖獣であるメオのお力がどのようなものか全く知らない。いくらメオ様本人が大丈夫だと言っていても、安心できなかった。
ほどなくして、ナルモ副団長がたくさんの日誌を抱えて、アラマンダの元に戻ってきた。
「こちらが、我々の日誌なのですが、亡くなった者の日誌も最期の行動がわかるかもしれないと思い、持って参りました」
そう言いながら、ナルモ副団長は机の上に日誌をバサッと置いた。
「拝読いたします」
アラマンダはそう言って、一番上に置いてある日誌を手に取る。
「それは、団長の日誌になります」
「そうですか。団長は今、どちらに?」
アラマンダは嫌な予感がして、ナルモ副団長に団長の居場所を問うてみた。
「……団長が、最初にお亡くなりになられました。五日前のことです」
アラマンダは、ナルモ副団長の表情が悲し気に歪むのを見て、そうではないだろうかと予想はしていた。
(やっぱり、親しくて尊敬していた団長が亡くなられたのね……)
アラマンダは私情を挟むことなく、日誌とこの五日間の客観的な出来事だけを見て、情報収集を行う。
手元に積み上げれた日誌につぎつぎと目を通していく。
(ひょっとしたら……)
アラマンダは、一つの可能性に気が付く。
それは、五日前から急に冷え込み、気温が氷点下になり始めたということだ。
(食べ物の毒を疑っていたけれど、これは、違っていたのかもしれない)




