10 創世記に書かれた内容
ふと創世記に記載してあったことを思い出した王太子のルートロックは、アラマンダにその記載内容も覚えているのか確認するため、質問してみる。
「では、なぜこの儀式が必要かも、すでに理解しているのか?」
「えぇ、もちろんですわ。 婚儀の前に王太子妃が聖獣を召喚することができると、その治世はとても安泰になるとのことでしたわね。 あとは、隠された意味としまして、聖獣が召喚できている状態で、初夜を迎えると将来、子供に加護が授かるのだとか……うふふふ。そんな記載を読んでしまったら、聖獣を召喚して、是非ともルートロック殿下との初夜を迎えたいと望んでしまいますわ」
(きちんと、理解していたか……しかも彼女もそれを望んでくれているなら、私と気持ちは一緒だとさりげなく伝えてくれるとは……ありがたいな)
「さすがだな。そんな気位の高いそなただから私は惚れてしまったのだが。 そなたを愛せる私は幸せ者だな」
アラマンダは、ルートロックの不意打ちの甘い言葉に反応してしまった両頬に、手の平をあてて赤くなった頬を覆い隠す。
(あぁ。豪気な女性なのに、いきなり少女のような恥じらう可愛い仕草をする落差にも私は魅力を感じてしまうな)
ルートロックは、心の奥にある彼女への愛情がどんどん育っていることを楽しんでいた。
「ちなみに、ルートロック殿下は聖獣を召喚されているのでしょうか?」
「あぁ。一体だけだけどな」
「ちなみにどんな聖獣でしょうか?」
アラマンダはルートロックの召喚獣が気になって仕方がない。
「私の聖獣は……ドラゴンだな」
「まぁ、それはなんと勇ましいのでしょう。普段、そのドラゴン様はどちらにいらっしゃるのですか?」
アラマンダは、そんな大きい聖獣がこの王宮のどこに住まわれているのか気になって仕方がない。
「あぁ。私の聖獣はここにいる」
そう言いながら、指にはめてある王家の紋章付きの指輪を見せる。一見、普通の指輪に見えるここにそんな大きなドラゴンがいるなんて、想像もしていなかったアラマンダは口元を左手で覆い、目を大きく見開いた。
「すごいですわね……ここに……殿下の指に一緒にいらっしゃるなんて想像していませんでしたわ」
「そうだな。私も召喚するまでは想像できなかったんだが、どうやら召喚された聖獣は呼び出された相手の傍にいると心地よさを感じているみたいだぞ」
ルートロックは創世記に記載されていないけれど、自分が召喚獣を持つことで感じた追加情報をアラマンダに教える。
「へぇ~存じませんでした。何が召喚されるか、全くわからないのですよね? 自分で何を召喚したいか決めることはできないのですか?」
アラマンダは、希望した召喚獣が出てくるものか気になってルートロックを質問攻めにする。
「私は、召喚さえできれば、この国は安泰だと思っていたから、大それた希望は抱かずに臨んでしまったかな。今、思えば何かしら希望の聖獣を思い描いてみても良かったかもしれないが、私はこのドラゴンを存外気に入っているんだよ。 ただし、記録によると、希望をした召喚獣を呼び出せた……という話も言い伝えで残ってはいる。それがたまたまだったのかは、わからないがな」
「そうなのですね。かしこまりました。では、私はその言い伝えの検証を兼ねて、希望した召喚獣が出てくるのか挑戦してみますわ。 何も召喚できないかもしれませんが、その時は私と相性の良い召喚獣がいなかっただけだと解釈することに致します」
アラマンダは、この儀式で自分の願った召喚獣が出てくるのか試みるという。
大事な儀式だというのに、望み高く行動を起こそうと挑戦する彼女に、ルートロックは自分に持ち合わせていない気概があることを知って、とても好ましく感じていた。
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