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なろうラジオ大賞6投稿作品

観覧車だって

作者: 輪形月
掲載日:2024/12/23

本日も拙作をお読みいただきまして、ありがとうございます。

 観覧車だって、横回転で空を飛ばないとも限らない。


 深夜。ライトアップもすべて消えた観覧車は、こっそり遊園地から抜け出した。軸受けだけをお留守番にして。


 空中で真横になっても回転を続ける観覧車のホイールから、ゴンドラも次々と空に滑り出す。

 ホイールの回りで複雑な軌道を描きながら。親ガモを追う子ガモのように。母船の目となる偵察艇のように。


(右よーし)(左よーし)

(前よーし)(後ろよーし)

(上よーし)(下よーし)


 スポークの表面を飛び回る紙飛行機は、ゴンドラたちの安全確認に余念がない。


 つかず離れず飛ぶゴンドラたちも、でもそんなに高くは飛べない。

 いろいろな警戒網にひっかからないよう、しずしずと住宅街の上を越え、公園の上を通っていく。

 動物園の上を、ビルの上を、山の上を。

 川の上を、海の上を渡り鳥の群れのようにそっと飛び過ぎて。

 でもそんなに速くはない。

 もっと飛んで、飛んで、飛んで……


 砂漠に着陸した一つのゴンドラから、女の子が降り立った。

 月に照らされた銀砂の山にちょんと腰掛ける。

 その隣は、別のゴンドラから下りてきた男の子だ。


 他のゴンドラからも次々下りてくる。

 指輪を見つめて幸せそうに笑い合うカップル。

 ステッキを携えたシルクハットの老紳士や、やさしそうな老婦人。

 服を着て、二本足で立って歩く兎や猫。

 みんな仲良くいっしょに、女の子がバスケットから取りだしたお弁当を分け合った。


 ホイールの表面で滑るように飛んでいた紙飛行機が、ふっと止まった。

 かすかな足音に彼らが目をやれば、古い飛行服を着た人影が立っている。

 その人影が指す方向へと、紙飛行機が飛んでいく。女の子たちも追いかけると、たった一輪の花が咲いていた。

 砂漠の真ん中で、しおれかけながらも懸命に。


 女の子はべそをかいた。バスケットはもう空っぽだ。

 すると老紳士がポケットから虹を取りだした。

 空に放たれた虹は月光で銀色に染まり、お天気雨を降らせた。

 花の上にも。


 動物たちを呼び戻し、女の子も男の子も動物たちもゴンドラに戻れば、ゴンドラは観覧車の回りを飛び、観覧車はもと来た空をゆっくりと戻り始めた。


(ねえ知ってる?あの観覧車の噂)

(ゴンドラの中にトリックアートが描かれているんだけど)

(その中の一つ、バスケットを持って座席に座っている女の子)

(月夜にまばたきするんだって)


 それ以上の出来事、長いお散歩に時たま観覧車のみんなでおでかけしていることを、人はまだ誰も知らない。

詩人・入沢康夫氏の『未確認飛行物体』という詩がとても好きです。

そこからなぜか、観覧車が横回転しないとも限らない、という言葉が生え。

砂漠に大勢のゴンドラで向かったら……あれ、なんだかサン=テグジュペリが出てきたような。

(断じて星の王子さまではない)

〆部分は微ホラーか、ファンタジーか……超ジャンル迷子です。

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― 新着の感想 ―
観覧車が横回転! 本当にそうなったらびっくりですねー。
2024/12/26 11:48 退会済み
管理
静かな物語の奥底から、囁きが聞こえてきました。 読んでいる最中私のなかにいる何かがざわめき、いつの間にか物語の中へと紛れ込んでいった……そんな気持ちになる作品です。 
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