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依頼の報酬

「──という訳で、こちらが街に潜伏して預言者を詐称していた魔族の討伐証明の魔石です」


 レーシュのこんこんと続く「オハナシ」からなんとか生還した俺は、冒険者ギルドで依頼に関する報告をしていた。


 ──あれは、まさにいつ果てるとも知れぬ苦行だった。


 報告をしている俺の横で、にこにことしているレーシュをそっと横目で伺う。なんだかいつもより肌艶が良くて、つやつやしているようにすら見える。


 俺はレーシュを観察していたことを気づかれる前に視線をもとに戻すと、報告することに集中する。


 今回は調査依頼だったので、こうして結果報告をして、内容を記載してもらうことで依頼が完了となるのだ。


 ギルドのカウンターで俺が報告しているのはいつもの受付嬢さんだった。

 ただ、なぜか俺の話の途中から、ペンが止まっていた。


 ──あれ、話す速度が速かったか? この受付嬢さん、事務仕事は手早かったと思ったんだけど……。もしかしてまた、同じ内容を話さないといけない? もしそうなら二度手間だから報告書、自分で書いちゃいたいかも……


 前世でも今世でも、報告書の類いは死ぬほど書かされてきた。


「あの、受付嬢さん、大丈夫ですか、それ?」

「うぇ! あ、すいません。あまりに情報量が多すぎて……大変失礼いたしました!」


 そう言うと、慌ててペンを走らせ始める受付嬢さん。

 その速度は流石の一言だ。

 ちらりと見えた文面を見ても、どうやら話した内容までちゃんと追い付いている。


「──以上となります」

「……はい、確かに。……はあ、しかしこの短期間でまさか街を騒がす預言者の正体を暴くばかりか、黒幕の魔族の討伐までなされてしまうとは。まさに規格外。英雄と呼ばれる大賢者の異名は伊達じゃないのですね……」


 受付嬢さんが、最後に何を言ったのかなぜかうまく聞き取れなかった。

 俺が首をかしげている横でレーシュとアルマ、セシリーまでも満足そうにしていた。


 ──まあ、無事に依頼も完了したし、セシリーに至っては魔族討伐の大金星だしな。


 俺が考え事をしている間に話が進んでいた。


「──今回の依頼の報酬にあわせて、魔族の討伐の特別報酬が出ます」

「そちらは実際に討伐したセシリーに。レーシュとアルマも、それでよいかな」

「もちろんです」「はぃ」

「え、あの。……本当にいいんですか?」


 遠慮がちに、でも嬉しそうに特別報酬を受けとるセシリー。

 アルマとレーシュも、それを微笑ましそうに見ていた。


「それと、お待たせいたしました。『始まりの火種』の皆様に召還状が届きました」


 そういって受付嬢さんが一通の手紙を差し出してきた。

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