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そこは輝き

「背後に、魔族がいるか否か、ですか」

「最悪の場合、だがな。ギルドもそれを考えての特別依頼だろうな。まあ、これで動く名分が出来たってことだ」


 俺たちはギルドを出て、まずは現場を確認しようと例の預言者がよく説法をしているという場所を目指していた。


 歩くにつれ、だんだんと路上に放置されたゴミが目立ち始め、立ち並ぶ家屋も貧相になっていく。周囲が、徐々に徐々に荒れた様相になってくる。


 目的地はどこの街にもある、スラム化した地区。その境目あたり。


 ──アレス神は人と魔族の隔てなく遇してくる神。ただ、圧倒的に魔族の方が、その信徒が多いと聞くしな。


 ビヨンド王国で邂逅した、神の様子を思い出す。


 ──まあ、あんな恐ろしく理不尽な存在は崇めても遠ざけたいってのが、普通の人間の感覚だとは思うが……


 ガヤガヤと遠くから人が集まっている喧騒が聞こえてくる。


「どうやら、丁度良いタイミングみたい、だな」


 集まった人々は男性も女性もいるようだ。年は、若い者が多い。身なりはほとんどが質素な服装だが、時おり豪奢な服の者も混じり、かなり広い層の人々が、預言者とされる存在の話を聞きに集まっているようだった。


 その人々の中心にいたのは、一人の壮年の男性だった。

 仕立てのよい、落ち着いた色合いの服をまとった男性。ごくごく平凡に、いっけん見える。


 ただ、一点だけ、ひどく目を引く特徴があった。

 鈍色の髪が金属のように、キラキラと輝いているのだ。


「なんだろう、あの髪は……」


 俺は思わず呟いてしまう。


「髪? なにか、変ですか? 普通の灰色に見えますが」


 俺の呟きに、レーシュが不思議そうに聞いてくる。


「え、アルマとセシリーもあの中央の男性の髪は普通の灰色に見える?」

「は、(はい。見えます)」

「……あの、僕には、何だか少し光って見えます。あの……とくにてっぺんの部分が」


 セシリーだけが、どうやら俺と同じ様に見えているようだった。いや、俺よりもよく見えている可能性もある。


 頭頂部の輝きが他より強く光っているというのは、俺もセシリーに言われて初めて気がついたからだ。


「……不思議ですね。まるで──」


 何かを言いかけて飲み込むレーシュ。

 その時だった。

 預言者とされる壮年の男性の話が終わったようだ。

 周囲からの大きな拍手に両手をあげて応える壮年の男性。

 彼に触れようと押し寄せる人々と、それを阻止するように壮年の男性を取り囲む人々に、集まっいた人たちが別れる。

 取り囲んでいるのが、取り巻きとされる者たちなのだろう。


 その取り巻きに囲まれながら、壮年の男性が立ち去っていく。


「追う、か」

「はい。少し距離をあけてで、行けますか?」

「問題ないよ」


 俺は安物の指輪を光らせ小声で呟きながら追跡用の魔法を使用するのだった。

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