胃もたれ
「うっぷ……」
「カイン様、どうかされました?」
「いや、何でもないよ、レーシュ。それより、パーティーの申請の手続きありがとう」
「あ、(ありがとうございます、レーシュさん)」
「みなさんっ。僕たちの新たな門出を祝して乾杯しましょう!」
まだ午後の早い時間。レーシュと合流した俺たちはツインリバーでも、一、二の人気とされるレストランに来ていた。
──あ、あれだけのケーキを食べて、アルマもセシリーもけろっとしているとは。若さって羨ましいな
とても美味しそうに食べる二人につられてしまったのが、大きな敗因だった。二人に比べたら俺は半分も食べてはいないはず。しかしこれから乾杯して食事となると、俺の胃の許容量は、かなり心もとなかった。
しかもレーシュには内緒で、三人でケーキを爆食いしてしまったのだ。そんな泣き言を言ってはいられなかった。
「では、私たちの新たなパーティー『始まりの火種』の門出に」
「「門出に!」」「か、!」
冷やされたビールによって、まだ口に残っていた甘味が洗い流されていく。
──ふう……まだ日のあるうちの酒はうまい。
注文した食事が運ばれてくる。
楽しげに話をしながら、美味しそうに食事をするレーシュたち三人。
アルマとセシリーは、あれほど食べたケーキがどこに消えたのかと驚くほどの健啖っぷりだ。
三人の話題は俺たちのパーティー名の由来のようだ。
過去の英雄の逸話に由来するそれを、他の大陸からきたアルマは詳しく知らないようで、レーシュとセシリーが代わる代わる楽しそうに話して聞かせていた。
「カイン様、あまりお食事が進んでいないようですが、お口に合いませんでしたか?」
ふと、こちらを見たレーシュが声を潜めて聞いてくる。
──さすがレーシュ……。付き合いが長いだけあって、鋭いな。さて、なんと誤魔化したものか……
内心冷や汗をかきながらも、ここぞとばかりに年の功を活かして普段の表情を堅持する俺。
「いや、美味しく頂いているよ。昼から飲む酒が旨くてさー。ついついお酒ばかり飲んでただけだ」
「そう、ですか。追加で注文されます?」
「ああ、そうするかな」
──く、この言い訳じゃあ、苦しいか? レーシュ、きづかれた?
なぜかとても優しげな笑みで俺の方を見ているレーシュ。
俺の背中を流れる冷や汗の量が増す。
その時だった。別のテーブルから気になるフレーズが聞こえてきた。




