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歴戦の女戦士アルマさん

 俺は、ギルドボードに貼り出された依頼を見ていく。


 ──出来たら、がっつり戦闘じゃないのがいいなー。フィールド調査系とかないかな……うわ……


 俺がそんなことを考えながら貼り出された依頼票を眺めていると、一枚、かなりヤバそうな物が混ざっていた。


 一見すると、普通の依頼だ。しかし、俺の「理解力」スキルが告げる。

 俺が、ここで平穏な冒険者生活を続けるためには、それは処理しておかないといけない依頼だと。


 実は、王宮で事務員として働いていたときも似たようなことが、たまにあったのだ。その時も、放っておくと、ろくなことにならないよと、まるで「理解力」スキルが告げているかのようだった。


 俺がため息をつきながらその依頼票を手にしたときだった。服の裾が、だれかにちょんちょんと後ろに引っ張られるのを感じる。


 なんだろうと振り替えると、先程の女戦士さんがいた。


 手には、発行してもらったのだろう。冒険者カードをもっていて、こちらにおずおずと見せている。


 冒険者カードに書かれた名前が見える。


 ──アルマ=カタストロフィさん、か。うわ、19歳っ、若っ。まあ、でもそう言われてみれば確かに若いよな。


 俺はアルマさんの全身を失礼にならないようにこっそりと見ていく。


 ──パッと見がね……。俺と()()変わらないぐらいの身長あるし。それに、所作も立派な戦士のそれで、大人びた雰囲気ある。もう少し、年は上かと思ったよ……


 ひとまわり以上若く美しい女性相手に、俺が若干引いていると、アルマさんが話しかけてくる。


「あり、お、れい……。それ、てつだ……(ありがとうございました。お礼をさせてください。よかったら、その依頼をお手伝いさせて頂けますか?)」

「いやー。そんな。お礼だなんて。俺は少し口出ししただけですし。お気になさらず」

「わた、つよい。おやく、たて、る(私は強いです。お役に立てると思います)」


 俺の服の裾をぎゅっと握って、真っ正面から俺を少し見下ろす角度で告げるアルマさん。

 真剣な眼差しだ。


 ──アルマさんの代償スキル、「身体操作」は全身の動作能力の向上、か。アルマさん自身も、自らを鍛えぬいているのが見てわかる。背負っている大剣も武骨ながら、なかなかの業物。まあ、普通に考えても相当強いみたいだ。


 俺は「理解力」スキルが告げるアルマさんのスペックを冷静に検討する。ここの冒険者ギルドはわからないが、俺の前にいた国の冒険者ギルドで考えれば、アルマさんは一二を争う実力者といえる。


 ──まあ、自分で自分を強いと言える自信があって、当然ってところか。しかし、どうしたものか……やんわりと断りたいけど……


 俺みたいなおっさんが、アルマさんみたいな若い女性と二人連れで冒険とか、外聞が悪すぎる。俺がどうしたものかと悩んでいると、アルマさんが必死な様子で、たたみかけてくる。それは少しばかり不安そうにすら見えた。


「おねが、はじめ、て。わかって、く、れる(お願いします。初めてなんです。私の話を、こんなにわかってくれる人に出会えたのは!)」


 そのすがるような眼差しに、アルマさんのこれまでを、思わず想像してしまう。


 ──ああ、なるほど。アルマさんも、代償スキルのせいでうまく話せなくて、これまで相当苦労してきたんだろうな。それこそ、強くなければ生き残れないぐらいの。──それゆえの、強さ、か。


 少し想像するだけでも、福祉的なものが未発達なこの世界で、アルマさんのような代償スキル持ちが働くのは困難だと想像がつく。それこそ冒険者として働くしかなかったのだろう。


「──わかりました。それではとりあえずこの依頼の間だけ、お手伝い頂けますか」


 妥協案を告げる、俺の肯定の返事にぱあっと顔を明るくして、嬉しそうに俺の手を握るアルマさん。歴戦の戦士の手とは思えないほど、柔らかな感触。

 そうしていると、アルマさんは本当に19歳の娘さんといった感じだ。


 俺はアルマさんに手を握られたまま、どうにもいたたまれず、身じろぎするのだった。

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