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「ふぁ……」


 目を覚ますと、そこは品の良い調度品の並ぶ、宿の一室だった。


 冒険者ギルドのギルド長ハーリッシュさんへの報告を終えた俺たちは、ハーリッシュさんのたってのお願いでしばらくの間ツインリバーの町での逗留となった。


 一連の出来事を国へとハーリッシュさんが報告した際に、俺たちへ召喚命令が出る可能性が高い。その時にふらふらとどこか別の場所にいられると困るのだろう。


 ぶっちゃけその気持ちは良くわかる。

 召喚命令を記す召喚状だが、専用の祐筆がだいたいどの国にもいる。そして彼らはだいたい皆忙しいし、召喚状一つ作るのにも時間がかかるのだ。


 前に王宮で働いていたときは、そんな祐筆の方への召喚状の作成依頼の事務手続きもしたことがあるが、これもめんどくさいのだ。

 やれ文字の間違いはないか。紙とインクは送る相手の格式に沿っているか。さらには、召喚状を届ける人物の選定もしなければならない、

 それに、掴まるまで何度も召喚状を発行しなければならない。


 そういった諸々の事務手続きの上に成り立つ国からの召喚命令だ。

 せめて送り先の人物の場所は確定させておかねば、報告を上げるハーリッシュさんの面子が立たないだろう。


 ただ、ツインリバー内であれば移動は自由だし、この品の良い宿の代金は逗留期間中、冒険者ギルドで持ってくれるとのことで、せっかくなのでしばらくはゆっくりしようと、レーシュたち三人と決めていた。


 俺は軽く身支度を整えると食堂へ向かう。

 朝食も宿代に含まれるので実質ただだ。


 俺が食堂へつくと、レーシュたち三人はすでに席についていた。俺は三人の座っている席に挨拶にいく。


「皆、おはよう。早いね。あれ、もしかして食事せずに待ってくれてた?」

「おはようございます。いえ、私たちもちょうど今きたばかりですよ」「は、(はい。お茶だけ頂いていました)」「ここ、朝食すごいんですよ。自分達でとるみたいですけど、どれも美味しそうです」「カイン様は座って場所取りしててください。今一緒にとってきますね」


 いわゆるビュッフェとかバイキング形式と呼ばれるもののようだ。過去に現れた転移者から伝わったのだろう。


 食堂は確かに混んでいるというほどでは無いが、それなりに食事をしている人がいる。俺はおとなしく場所取りとしてそこに残ると、楽しそうに談笑しながら食事を取りにいくレーシュたちを見送る。

 なんだか三人ともいつもより気合いの入った格好をしていて、美しい。


 ──休日みたいなものだし、どこかお出かけかな。俺は今日はどうするかなー。夜営をした際に使った消耗品の補充はしとくとして……


「はい、カイン様。お先にお茶です」

「ありがとう、レーシュ」

「いえ、好みはお変わりありませんよね」

「うん、大丈夫」


 俺の返事ににこりと笑ってレーシュは再び食事を取りに戻っていく。

 俺は温かいミルクの入ったお茶をゆっくりと飲みながら、穏やかな朝の日差しの照らす室内で楽しそうにしているレーシュたちを見守るのだった。




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