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代償

「帰ってきた、な」

「はい。帰ってきました」

「宿で、ゆっくり寝たいですー」

「報告したらな。さすがにこのまま、って訳にはいかんしなー」


 とはいえ、たぶんこの四人のなかで一番ぐったりしているのは俺だろう。体の芯の方に疲労感がこびりついているかのようだ。


 ──この歳になると、夜営はやっぱり辛いな……


 こっそりと肩を回すと、バキバキという音がする。

 中年の矜持で、疲れが顔には出さないように気を付けてはいる。


 ただ、その疲労感に負けないぐらい、今の俺の頭のなかを占めているのは、昨夜セシリーからきいた話だった。


 あの時、とても悲しそうに笑っていたセシリー。話したことで、それでも少しだけでもすっきりしたのか、見張りの交代後は寝れてはいたようだった。


 そんなことを考えながら、俺たちは冒険者ギルドの中へと入る。


 ──ここに来るのも、久しぶりなきがするな……ん?


 不自然なほど、冒険者ギルドの中が静まり返っていた。そして、ものすごい数の視線が集まってきているのを感じる。


 ギルドにいる人々のほぼ全員が俺たちのことを見ているようだった。

 一瞬、気圧される。しかし、次の瞬間、何かが切り替わったかのように、俺は周囲からの視線が全く気にならなくなる。それは明らかに不自然な、どこか強制的な切り替えだった。


 ただ、俺は全く違和感を覚えなくなっていた。


 というのも、こういうことが起きるのは、ここへ転移してきて以来、いつものことだったのだ。

 こういった、人からの注目が集まる時などには、必ず起きるのだ。


 ──そういや、前王の時代に王宮で働いていたときも、良くあったよな、こういうこと。


 俺は軽く肩をすくめると、ギルドの受付へと歩き出す。相変わらずの周囲からの視線の存在は認識しているも、それが何を意味しているか、全く気にならない。


 そんな俺の横をともに来るのは、レーシュだった。堂々としたものだ。さすがに経験の違いが顕著だった。


 アルマとセシリーは俺たちの後ろをおっかなびっくりといった様子でついてくる。


 そうしてギルドの受付までたどり着くと、俺は名乗る。


「カインです。ビヨンド王国から戻りました」


 それはたまたま、最初にアルマとトラブっていた、顔馴染みの受付嬢だった。






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