第34話
第34話「温泉とお隣さん⑤」
千乃さんがまだお風呂に入っているという可能性はゼロではないが夕食の時間はわかっていたはずだ。何をしているのだろうか?
「すいません、少し出てきます」
「かしこまりました」
どこにいるんだよ千乃さん。お土産のある売店なのか?いない。中庭のベンチか?ここにもいない。もう一度電話をかけてみる。だが出ない。
考えながら温泉に入っているとつい長く入ってしまってのぼせていた。上がった今もボーっとしてしまっている。スマホが鳴っている。だけど今は出れそうにない。
どこだよ、どこにいるんだよ千乃さん。温泉の入り口の横のベンチとかかな?のぼせてあそこで休んでいるかもしれない。
というかこれから私は文也くんとどう接するのが正解なのだろうか?だってさ、お互いに彼氏や彼女を作らないという人どうしだから今まで一緒に過ごせてきたわけだ。私が好きだと知ったら文也くんは私を軽蔑するかもしれない。恋人を作りたくない文也くんからしたら私は邪魔になってしまう。それに私も叶わぬ恋をすることになってしまう。それは私としても辛い事になる。
僕は温泉の入り口に来た。すると千乃さんがいた。
「千乃さんやっと見つけた」
「ふ、文也くん?どうしたの?」
「どうしたのじゃないですよ。夕食の時間になっても千乃さん来ないし、電話にも出ないしで探したんですよ」
「あ、もうご飯の時間だった!?ごめん、忘れてボーっとしてた」
「もう、何してるんですか。はやく行きますよ。夕食が待ってますよ」
「そうだね、行こうか」
君は心配して色んな場所を探してくれたんだね。せっかく温泉に入ったのにたくさんの汗をかいている。
それから私達は部屋に戻った。
「すいません、のぼせてしまって」
「いえいえ大丈夫ですよ、こちらに火をつけさせていただきますね」
「はい、お願いします」
「それではごゆっくりなさってください」
「じゃあ、食べますか」
「そうだね」
「いただきまーす」
文也くんが自分のグラスを出してきた。
「せっかくの旅行ですよ。乾杯しましょ」
「そうだね、カンパーイ」
「これめっちゃうまいっすよ」
君は本当に美味しそうにご飯を食べるね。それを見ているとこっちまで幸せになってくるよ。
「これも美味しいよ」
「本当だ、これも美味しいですね」
やっぱり思ってしまった。君が恋人を作りたくなくても私は君のそばに居たい。
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