宇宙空港 Ⅲ.密出星者
空港職員と旅客?の話。
おどおどとした態度、揺れる目線、心拍数の上昇及び身体の末端における急激な低温化。
全身をスキャンして瞬時に普通の旅客ではない、と分かった。
こちらにへ投げつけるように出された偽装パスポートも、けして出来がいいとは言えない代物。ためらいなくカウンターの裏に設置された呼び出しボタンを押せば、警備犬を引き連れた職員数名が俊敏な動きですぐさま現れ、そして彼を囲んだ。
「な、なんだよ?!」
「あなたの提示したパスポートには、重大な欠陥があると判断しました。別室でお話をお聞かせ願えますか」
「ふざけんな!!」
男は、隠し持っていたピストルを胸元から取り出し、私の額のその真ん中にぴたりと当て、周囲に向かって高らかに宣言した。
「コイツの命が惜しけりゃ、今すぐ俺にロケットを用意しろ!」
「お言葉ですが、私の命を惜しむ人はいません」
「……あぁ?」
突きつけられたピストル――こちらも暴発が多いことで有名な粗悪品――の銃身を、棒きれ同然にひょいと持ち額から外し、そのままくいと軽く自身の手首をひねる。すると、ピストルは飴細工のようにぐんにゃりとUの字状に銃身の軌道を変えた。
「ぇ、」
さっきまで威勢のよかった男が、汗ひとつかかず容易く銃を曲げた私に対し、思わずと言った驚嘆を漏らした。
そしてその隙を突いた警備の者に手早く確保され、なすすべもなくカウンターから連行されてゆく。それをやれやれと見送っていると、なじみの清掃業者がモップをかけながら声をかけてきた。
「あんたも大変だね、お疲れさん」
「お気遣いありがとうございます」
「しかしこのところ多いねえ」
「今月だけで、もう三件目ですからね」
「……それだけ、みんな生活が苦しいってことなんだろうね」
「ええ」
だからと言ってむやみにハイジャックを目論まれてはたまらないが、そうせざるを得ない彼らのこれまでを思うと同情したくもなる。
「おっと、あんまり油を売っていると怒られるね、じゃあまた」
「ええ、また」
そうあいさつを交わして元の持ち場へ戻ってゆくと思いきや、清掃業者はぱっと振り返った。
「でもあんなことしたら危ないよ、いくらロボットでも打ち所が悪けりゃ死んじまうんだからね」
「はい、気を付けます」
大勢の人間が新天地を目指して地球から飛び立てば、残された人類の数は激減し、社会インフラの維持が喫緊の課題とされた。
そこで私たちロボットが、その一助を担うこととなった。ちなみに、先ほどの警備職員もなじみの清掃業者もみなロボットだ。
ハイジャックの計画が潰えたあの男に言ったのは本当で、われわれヒューマノイドなどいくらでも替えがきく。人権があるわけでもないものの命の軽さと言ったら、ランニングコストを回収出来た後はたかだかレシート一枚程度のものだ。
けれど我々は死を人間のように恐怖することもないし、悲観することもない。むしろなぜ人はそんなにも、と思ったところで、また新たな旅客がカウンターへとやってきた。