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宇宙空港 Ⅰ.セールスマン

空港職員と旅客の話。ショートショートです。

「いやぁ参った参った。参ったよぉほんと」

 それが口癖のお得意様――空港のヘヴィ・ユーザーといって過言ではない――が、今日もまたお決まりの台詞とアタッシェケース、それからヘルメットを携え、出星手続きのカウンターに姿を現す。口調とは裏腹に小ざっぱりとした身なりと表情なのもいつも通りだ。

「お疲れ様です。今回はどちらへ?」

「へびつかい座のあたり。そこの人たちってなんかやたら血の気が多いらしいんだよ~」

「そのようですね」

「今度という今度はヤバそうだよね。いやぁ参った、逃げ出したいよ」

 男は絶え間なく愚痴をこぼしつつ、手にぶら下げているもの――自動翻訳機内蔵の防弾ヘルメット――を軽く揺らす。もちろんスーツは防刃防燃仕様、その下には念を入れて防弾チョッキも仕込んでいるし、機内に乗り込むために一通り外してあるものの、アタッシェケースの中には背中と足首それぞれに銃を携行するためのホルスターが、安全装置を掛けた銃とともに入れられている。だが、当の本人はそんなきな臭いアイテムをフル装備しているようには到底見えない。にこにこと人懐こい本人のパーソナリティとおおよそ警戒されにくい愛くるしい顔立ちには好感ばかりがあふれているから、きっと紛争地帯――今回はへびつかい座――でも善人というジャッジをされやすかろう。

 本当はと言うと、『逃げ出したい』と頻繁に口にしつつも実際にそうする意思は特にないという、見た目からは想像もつかない胆力の持ち主であるのだけれど。


 もう余白を探すのが難しいパスポートの出星欄へなんとか押し込むようにしてスタンプを押し、更に陣地を狭めた後、手短に言葉を交わし合った。

「幸運を」

「ありがと。行ってきまーす!」

 気ままな観光へ旅立つような笑顔で手を振り、スキップしているようにも見える軽やかな足取りで去ってゆく男の後ろ姿をちらりと追いかけ、それから次の旅客のパスポートを受け取る。

 ――武器商人っていうのも大変なものだな。とても自分には務まりそうもない。


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