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孤児院の子供達と収穫祭-5

すぐさまセクリアの体を借りてライリーに話しかける。


「ライリー!」


「な、なんだよ?びっくりするだろ!」


声をかけて服を少し引っ張ると、かなり驚いたようだ。


「悪かったな、そんなに驚くと思わなくてな……」


「え……?コウヘー?」


「ああ、大丈夫か?」


「うん……俺は大丈夫だけど……」

と、周りを見回している。


そうだよな、小さい子はかなり怖がって泣いてるもんな……


「何か拘束できるロープとかあるか?」


「え?捕まえるの?」


「そうだ、ライリーがな!」


「……は?」


というわけで、セクリアにも伝えてもらい作戦開始だ!



まずは先頭で口悪く文句を言っている男の体に入っていく。


……うん、上手く入れたな。


「ライリー!セクリア!こっちだ!」


「「うん!」」


ライリーとセクリアに声をかけ、誰の体に入ったのかを伝えると、すぐにライリーとセクリアが駆け寄ってきて後ろに回した手や足をロープで括り始めた。


「「「は?!」」」

その様子に、一緒に騒いでいた男達は唖然としている。

周りで見ていた収穫祭の客たちや、孤児院のリリーや子供達も呆然とその様子を見ていた。


「コウヘー出来た!」


「よし、次だ!」


「「うん!」」


男達が思いもよらない出来事に唖然としているのを好機(チャンス)とばかりに次々と体を乗っ取り、ライリーとセクリアがロープで縛り上げて行く。


暴れていたり暴言を吐いていた男達を6人拘束した頃に、呆然としていた男達はハッと我に返り、ライリーとセクリアに「何しやがる!このガキ共が!」と、向かってくる輩が現れた。が、今の俺は動いている人の体に入るのもお手の物だ!

ヒョイっと体から体に乗り移り、動きを止めて行く。


これも先日ライリーとセクリアと出かけた際に、3人で話す為にあっちに入りこっちに入りと繰り返していた為に、憑依するのが上手くなったおかげだ。

こんな事で役に立つとは思わなかったな……


俺はそれからも、次々と害をなそうとする人に乗り移り、ライリーとセクリアに素早く拘束してもらうのを繰り返した。


文句を言い、暴れて、子供達を怖がらせていた男達をあらかた拘束した頃に衛兵達が駆けつけて来た。

あまりの出来事に誰かが呼んでくれていたようだ。

衛兵達は拘束された男達を見て驚いている。が、驚きの表情も一瞬で切り替え、連行して行った。


数人の衛兵に事情を聞かれ、リリーと一緒にライリーとセクリアも経緯を説明している。

拘束した男達は冒険者や傭兵(ようへい)達だったようで、荒事にも長けている。

そんな男達複数人を2人で拘束してしまうなんてすごい子達だなと衛兵の人達に褒められる一方、リリーからはこんな危ないことをするなんて……と、かなり心配したと叱られていた。


だが、みんな怪我もなく無事でよかった。


事情聴取が終わると片付けは後回しに一旦孤児院に帰ることになった。

子供達は精神的に疲弊しており、みんなぐったりとしている。

ただでさえ大忙しの出店(でみせ)をやり終えて疲れていただろうに……


孤児院に戻ると、院長先生に先程の事を伝えていた。


「まぁ、そんな事が……怪我をした子はいないかしら?」


「はい、なんとか……ライリーとセクリアのおかげで暴れていた人も捕まえられましたし……」


「そう……ライリー、セクリア、頑張ったのね」


「「うん!」」


「無事で良かったわ」


そう言って、子供達をギュッと抱きしめていた。


院長先生に抱きしめられホッとしたのか、力が抜けたようでお腹をグーッと鳴らす子がいた。


お腹がなった子が、少し恥ずかしそうにお腹を押さえると、他の子供達のお腹もグー、グー、と伝播する様になり始めた。


「ふふ、お昼にしましょうか!」


「「わーい!」」


もうお昼の時間もだいぶ過ぎているのでお腹が空いていても当然だ。

俺はライリーとセクリアとこっそり抜け出し、厨房の方で今日もそそくさと買ってきていた料理や子供達が欲しいと言っていた物を取り出していく。


「え!コレ木剣!?」


「わぁ、ネックレス!」


「コウヘー、コレも俺らに……?」


「うん、みんな欲しがってたろ?」


「いいのか?」


「もちろん、みんな出店頑張ってたからな!俺からのご褒美だ!」


「わぁ!ありがとう!」




「コウヘーなんて??」

セクリアの体から抜け出すと、セクリアはライリーに何の話をしたのかと尋ねている。


「出店頑張ったご褒美だってさ!」


「コウヘー聞こえてる?ありがとう!ご飯だけでも嬉しいのにこんな素敵なネックレスまで……凄く嬉しい!」


「どういたしまして!喜んでもらえたなら俺も嬉しいよ」

と、ライリーの体を借りて返事をした。


「うん!コウヘー大好き!」


大好きとか言われるとちょっと照れるな……

と、話していると


「あらあら、まぁまぁ……」

「これ、今日もお昼ご飯の差し入れを頂いたの?」

と、院長先生とリリーな厨房に入ってきた。


「うん」


「いつもの方?」

「またこんなに沢山……」


「そうだよ」


「一度御礼が言いたいわ……」

「そうねぇ、会うことはできるかしら?」


「「……」」

院長先生とリリーの言葉に、ライリーとセクリアは困った顔で黙り込んだ。


「……どこにいるか分からないの?」


「うん」


「そう……こんなにお世話になって……」

「次会った時には、お礼がしたいから連れてきてもらえるかしら?」


「う……ん、聞いとくね……」と、セクリアは苦笑いだ。

いや、ほんと2人には気を使わせてスマンと思ってる。

だが、会いたくても体が無いから会えないんだよな……まさか幽霊ですなんて言う訳にもいかないしな……

ということで、俺に会うのは諦めてもらおう。


料理を食堂に運び、ご褒美として買ってきた物も子供達に配ってもらうと、みんなとても喜んでくれた。

欲しかったけど買えなかった物が手に入った子もいたようだ。

先程まで怖い思いをしていた子供達も少し元気になったようだ。


みんなで楽しくワイワイとかなり遅い昼食を食べていると、玄関扉を叩く音と共に「ごめんください」という声が響いた。

誰かが訪ねて来たようだ。


訪ねて来たのは、衛兵の人、商業ギルドマスターのクラレンスとギルドスタッフ、それから冒険者ギルドのマスターと先程の冒険者達、傭兵ギルドのマスターと先程の傭兵達だった。


暴れたり暴言を吐いていた冒険者や傭兵達は、それぞれのギルドのマスターにもこってり絞られたようだ。


奥に通されると、ライリーやセクリア、子供達に本当に申し訳なかったと深々と頭を下げ謝罪している。

唐揚げが食べれないと思うと、衝動が抑えられなかったそうだ。

「子供達に当たり散らすなんて、大人気なかったと反省している……」と、本当に悪いと思い反省したようだ。


謝罪が終わると、冒険者ギルド、傭兵ギルド、衛兵達から「この子達には凄い才能があるに違いないから能力鑑定を受けさせるべきだ」と提案されていた。

普通なら5歳になると教会で能力鑑定をしてもらうそうなのだが、孤児院の子供達は能力鑑定をしてもらうのに必要なお金が払える状態ではなかった為、能力鑑定を受けていなかったようだ。その事を知り、迷惑もかけたお詫びの気持ちも込めて、暴れていた冒険者や傭兵達がお金を出してくれ、後日孤児院の子供達全員が能力鑑定してもらえることになった。

今ではお金に余裕が出てきているが、今までそういった事をしてこなかったので院長先生もリリーも失念していたようだ。

いい機会だし5歳以上の子はみんな見てもらって、5歳になっていない子もこれからは5歳になったら見てもらうようにすると言っていた。


能力鑑定とは、その子のステータスが確認出来るというものだ。

スキルや使える魔法の属性なんかも確認できるので、将来なんの職業につくかなどの参考になるのだそう。

子供のうちにそういった能力を確認しておき、スキルや魔法を使いこなせるようになっておけば就職にも有利なようだ。

なんの才能もなかったり、スキルや魔法の才はあっても使えなければ低賃金で過酷な仕事にしかつけない場合もあるのだとか。



それから、一緒に来ていたクラレンスからも提案を持ちかけられた。

提案の内容は今後も唐揚げとフライドポテトの販売をして欲しいというものだった。

唐揚げとフライドポテトが美味しすぎて、中毒のようになっているのは今回暴れ回っていた冒険者や傭兵達だけでは無い。

毎日長蛇の列を作っていた人達もだ。

来年の収穫祭までなんてとてもじゃないが待てないと嘆願されたそうだ。

それを相談に来たのだとか。

相談の結果、商業ギルドからも人員を派遣してくれることになり収穫祭が終わった後も、孤児院の建物の前で唐揚げの販売を数量限定でする事になった。

焼肉のタレも作らないといけないので大変ではあるが、また来年の収穫祭までは待てないと何度も何度も懇願された為だ。

レシピを教えたらいいんじゃないか?とライリーに聞いてみてもらったら!商業ギルドの人に大反対された。こんな秘伝のタレのレシピを公開するなんて信じられません!止めた方がいい!絶対後悔します!との事だ。

秘伝のタレ……いや、日本では調べればすぐに大量に検索に引っかかるありふれた味付けなんだが、まだ醤油も取りに行ける人が少ないこの世界(アルナイル)では秘伝扱いのようだ。

子供達も話を聞いてやる気になっていたので、結局受け入れたようだ。



そんなこんなで、10日間の収穫祭は少しトラブルはあったものの誰も怪我はすること無く無事に終わったのだった。


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