孤児院の子供達と収穫祭-4
あれよあれよという間にもう収穫祭は今日が最終日だ。収穫祭は10日間もあったのにあっという間だな。
孤児院の出店は日を追う毎に仕込みをする肉の量も芋の量も増えていった。
初日に昼過ぎで全て売り切れてしまった為、次の日から仕込みの量を増やしたのだ。
2日目は初日の倍程の量に。それでも朝早くから長蛇の列が出来て、昼過ぎには完売していた。
なので3日目にはさらに量を増やし……と、10日間分と用意していた肉は4日間で全て売りきってしまい、俺は追加で肉を調達しに行くはめになった。
大変だったのはそれだけでは無い。
長い長い行列に並んだのに買えなかった客からのクレームだ。こんなに待ったのに買えないなんてどういうことだ!と凄いクレームだったのだ。
まぁ対応したのは俺じゃないんだけどな、リリーが対応に追われて大変そうだった。
途中から商業ギルドの人がクレーム対応を手伝いに来てくれたほどだった。
買えなかった人は、次の日に優先的に買えるように名前や所属を書き留め、別の列に並んでもらって対応していた。
俺は毎日みんなが頑張っているので、差し入れのための昼飯を買うために会場を回っていたので結構楽しめた。
この調子だと最終日まで落ち着くことはなさそうだと判断して、行ってみたかった店も見て回ったのは正解だった。
予想は的中してしまい、唐揚げやフライドポテトが売り切れる頃にはみんなクタクタになってたからな……おつかれさん。
夜にはこっそり回復魔法を全員にかけていたので次の日にはみんな元気になっていたが、回復魔法をかけてなかったら倒れる子供もいたんじゃないかと思う程忙しそうだった。
そして、最終日である今日も……列はおわりが見えないほどの長蛇の列だ。
今日買えなかったらもう買うことが出来ないので当たり前だが、開店準備のために出店の場所に行くと既にかなりの列が出来ていたようだ。
その列に並んでいる人は見たことのある顔が多い。
9日間の間に唐揚げやフライドポテトを食べ、すっかり虜になってしまった面々のようだ。
大量に購入しながら、「今日で最後かと思うと辛い……」と、本当に悲しそうな顔で買って行っていた。
そんな最終日の長蛇の列に対応している子供達の様子をしばらく見ていたが、俺もまだ回ってみたいけど行けていなかった場所へと行くことにした。
ライリーとセクリアとは、毎日夕方くらいの時間帯に少ししか一緒に回れなかった。
「もっと見たいのにー」と、2人とも残念そうにしていたが、店が忙しいので仕方ないと、諦めていた。
なので、欲しいと言っていた物を見つけたら代わりに俺が買ってくるようにしていた。
今日も商品が全て売り切れるまで手が空かなさそうなので、手伝うことの出来ない俺がライリーとセクリア、それからみんなに食べ物以外にも好きそうなものを見つけてきてあげようとウロウロしている。
ネックレスが欲しい、髪飾りが欲しいと女の子達は言っていたし、玩具が欲しい、木剣が欲しいと男の子達は言っていた。
商店で売っているものは高くて買えないが、収穫祭の時に出る出店ではかなり安く買える場合が多いようだ。
だが、店が忙しすぎて時間があまりなく、孤児院の出店から離れた所の店は見に行けなかったようだ。
子供のうちからあんなに働かされて……
俺が子供の時は親の手伝いもあんまりせずに遊び回っていたからな、本当に偉いと思う。
ということで、ご褒美の準備は任せとけ!とばかりに出店が沢山並ぶ会場を順に見ながらふわふわ進む。
「おー!凄いな……」
孤児院の出店がある場所からは1番離れた南側にある広場の端に人が集まっていたので覗いてみるとサーカスのような見世物をやっていた。
さすがに地球のサーカスとは違うし、テントなども無いのだが、後ろの人も見やすいように高さ違いの椅子は5列ほど並べられており、ショーは壇上に上がってされていた。
火や水、風等での魔法の演出もとても華やかだ。
そんな中で調教師ってより、テイマーとかだろうか?
ウルフ系の魔物に指示を出し、的に魔法の攻撃を命中させたり、複数の鳥の魔物に歌を歌わせたり、可愛らしい角の生えた兎が連なった輪をぴょんぴょんと跳んで見せたりと、なかなか楽しいものだった。
「さぁ、最後の出し物です!」
進行役らしき男の人が、そう言うと、大きい、かなりの大きさのクマが3頭も現れた。
3m、いや4mはあるだろうか?あまりの大きさのクマに見物人達はどよめき、悲鳴をあげ、逃げようと慌てふためいている人もいる。
そんな中、「ご安心ください!」と、進行役の男の声が響いた。
どうやらこの3頭のクマも、テイマーがきちんとテイムした魔物のようだ。
最後に見せてくれたのは、大きなクマの魔物の玉乗りだ。
大きな体を4本の足を乗せるのがギリギリなほどの玉に乗せて上手くバランスを取っている。
グラグラと揺れながら、バランスを取り、4本乗せていた足のうち、前足を離した。
「「おおおおお!!!!」」
二本足での玉乗りに会場がざわめく。
凄いな!あんなにグラグラする玉の上に二本足で乗れるなんて……
だが、これで終わりではなく、クマは火や水を口から出した。
どうやら動物のクマではなく、魔物だったようだ。
や、多分知っている人なら見分けがつくんだろうが、俺はこの世界の動物のクマも見たことないし、クマの魔物を見るのも初めてだからな……
玉に二本足で立っただけでなく、魔法を使うパフォーマンスまでする熊野魔物に会場は拍手喝采だ。
凄い凄いと大盛り上がりで見世物は幕を閉じた。
やー、凄かったなぁ!なかなかの見応えだった。
この見世物は見物料は決まっていなくて、お気持ちをお入れ下さいと、前に箱が置いてあるようだ。
俺もちょっと入れてくるかな!
さて、ゆっくりサーカス、もとい見世物を見ていたせいでもう昼過ぎの時間帯だ。
いつもの調子だとそろそろ孤児院の出店も唐揚げが売り切れる頃かな……?
子供達へのご褒美や差し入れも買ったし、そろそろ店まで戻ろうか。
ふわふわと孤児院の出店の方へ戻ると、何やらギャーギャーと揉めているような声が人混みの奥から聞こえてきた。
……なんだ?
ふわりと人垣の上を飛び越え騒ぎの中心を見ると……
「な?!大変だ!!」
孤児院の従業員のリリーと子供達に、怒鳴り散らしている男達がいた。
リリーが子供達を自分の後ろに隠し、守ろうとしているが、怒号が大きく子供達は耳や頭を押さえてビクビクと怖がっており、まだ小さい子は年上の子供に抱きしめられながら泣いている子もいる。
何事かと慌てて近づいていくと、どうやら唐揚げやフライドポテトが買えなかった人達のようだ。
美味いって聞いて来たのに売り切れとはどういうことかと怒っている。
収穫祭は今日までなので今日までに食べられなかった人は来年まで我慢しなくてはならない。
そんなの我慢出来るわけない!とキレているようだ。
な、なんてワガママな奴らだ!あんなに子供達が怖がってんのが見えねぇのか!と、こちらもキレそうだ。




