表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/49

孤児院の子供達と収穫祭-3

おぉーー!!!すっげぇ!!


そこでは大きな大きな豚の丸焼きが……いや、看板にレッドボアと書いてあるな。

豚ではなく、レッドボアの丸焼きのようだ。


かなりの大きさのグリルの上で、巨大なレッドボアは頭側と尻側を貫くように棒に刺され、ぐるぐると回転させられながら火に炙られている。


デカいレッドボアからはポタリ、ポタリと脂が(したた)り、炭に落ちると、ジュゥッ……ジュゥゥゥゥッ……と、美味しそうな音が響く。

音と共に脂の燃えた煙と、いい香りが辺りに広がる度、周りで見ている人達はゴクリと生唾を飲み込んだ。


「あと少しで焼けるよー」

「買ってくれる人はこっちに並んでくれ!」



「「「「「わぁ!!!」」」」」


レッドボアの丸焼きを焼いている人が声をかけると、ワッと歓声が上がり、みんな我先にと()し合い()し合い並んでくれと言われた場所へと向かっていく。


うっまそぉ……ちょ、俺も!俺も欲しい!誰か体!体!


人垣を作っていた人は自分の分を買うだろうからと、通行人の体を借りた。


ヘッドボアの丸焼きは、丸焼きにした肉の表面からゾリゾリとそずりとって皿に乗せて渡しているようだ。

切った断面からジュワッと艶々と光る脂が流れ出している。


うっわ、美味そうすぎる……ゴクッ……


並びながらそずりとっている様子を見ていると、皿に乗せた肉に何かスパイスの様なものをかけているようだ。

それがまた風に乗って香ってくる。とても食欲をそそるいい匂いだ。


はぁ……まだかなー?


列が進む度ソワソワしながら待っているとやっと順番が回ってきた。

ここでも50人前と伝えるとギョッとした顔をされた。


難しいだろうか……?と、少し心配になったが、大丈夫なようだ。


皿は同じでも良いかと聞かれ、大丈夫だと答えると、山盛りに肉が盛られた皿を次々と渡してくれる。


美味そう……


我慢できずに、1口だけ……と、肉を1切れつまみ上げ、いただきます!とパクリ。


ん!んん〜!!!


「うっめぇぇぇぇえ!!!」


表面がカリッとするまで焼かれた肉は、反対の面や中はしっとりプルプルだ。


柔らかい……


それに噛めば噛むほど、ジュワッと甘みのある肉汁と、旨味が溢れてくる。

それにこのスパイスが良い。

ピリッと辛味もある風味豊かなスパイスだ。何種類かを混ぜてるんだろうな。

このスパイスがある事で、肉の旨みや甘みが引き立てられ、味も引き締まっている。噛みごたえがしっかりあるが歯切れが良い肉は本当に美味い!それからこの炭の香りも最高だ!あぁ、ここでエールを飲めたらもっと最高だったな……


「めちゃくちゃ美味そうに食うなー!」


これで最後だと、最後の皿を渡され、声をかけられると俺はハッと我に返った。

美味さの余韻が口の中に広がっている。

この余韻だけでエールが3杯は飲めそうだが、レッドボアの丸焼きも手に入ったし、そろそろ子供達の店の様子も見に行かなくては。


「すげぇ美味いよ!」と感想を伝えると、お会計を終わらせ、店員の兄ちゃんにお礼を言って、体を元いた場所で返してふわふわと孤児院の出店の方へ戻るのだった。


◇◇◇


お?


孤児院が出している出店の近くまで戻るとお客さんはい無くなっていた。


あれだけ並んでいたのに……?


出店の中を覗くと、みんなぐったりした様子でへたり込んでいた。


コソッとセクリアの体を借りてライリーに話しかけると、仕込んでいた肉も芋もエールも全部売り切れになったそうだ。


すげぇな……まだ昼過ぎなのに……あの大量の肉や芋を売りきったのか……


みんな最後のお客さんの対応を終えると、貼っていた気が抜け、疲れが一気に来たようだ。

少し休んでから片付けをしようと休憩中だったようだ。


「それなら昼を食べてから片付けをしたらいいんじゃないか?」


「……昼買いに行かないと……」


「俺がなんでいなかったと思う?」


「……!!」


ライリーはパッと顔を上げ、キラキラした目でこちらを見た。


「全員分買ってきたからな!孤児院に戻って食うか?」


「うん!!!」


とてもいい返事だ。

あまりに大きな声で返事をするものだから、クタっとへたり込んでいた他の子供たちも、なんだ?と顔をこちらへ向けている。


ライリーは一気にテンションが上がり、みんなに説明すると、火元の確認だけしてみんなで孤児院まで急ぐ。

さっきまでクタクタになっていたとは思えない程のテンションだ。

今にもみんなで歌を歌いながらスキップでもしそうな勢いだ。


子供は元気だな……


あまりの急変ぶりに感心しながらも後を追うのだった。




孤児院に戻ると、残って明日の分の仕込みをしている子供達が食堂で肉を切っていた。


「ただいまー!」と、ぞろぞろとみんな揃って帰ってきたことに院長先生をはじめ、みんなどうしたのかと驚いている。


全て売りきってしまった事を伝えると、それにもまた驚いていた。


あんなに沢山あったのに、お昼で全て無くなるなんて……と。


みんなでガヤガヤ話している間に、今のうちだとライリーと厨房へ向かう。


こっそり次元収納(ストレージ)から昼食を出すためだ。


買ってきた物を次々と取り出すと、ライリーがヨダレを垂れそうな顔で料理の数々を眺めている。


「これで全部だ」


「すげぇ!どれもこれも美味そう〜」


「だよな!早く向こうに運んで食べようぜ!」


「うん!!」


両手で持てるだけ持って食堂の方へ行くと、ちょうど仕込みも終わった所だったようで片付けをしていた。

残って仕込みをしてくれていた子供達も昼食はまだだったようだ。

後ちょっとで終わるから、終わってから昼食にするつもりだったらしい。


それならちょうど良かった!運ぶの手伝ってくれ!と、ライリーがみんなに声をかけてくれ、厨房から食堂へ料理がどんどん運ばれていく。


院長先生とリリーにこの料理はどうしたんだ?と驚いたように聞かれ、ライリーはコウヘーに買って貰ったとポロッと本当の事を話している。


ちょ、おいー!!!


いつもはセクリアが上手く誤魔化してくれていたが、ライリーのやつ……


コウヘーとは誰だと色々聞かれて、ライリーはしまったと言う顔をしているがもう遅い。

知り合いの兄ちゃん……と、なんとか誤魔化し、早く食べようと逃げていた。


……あれ、誤魔化せたのか……?ライリーの体の方を借りた方が良かったか……?

まぁ、今更言っても仕方ないけどな……


やってしまった事は仕方ないと諦め、ライリーの隣の席に着く。

ライリーにコソッとごめん……と謝られたが、こんな子供に隠し事をさせている俺も悪いからな。

気にすんな!と頭をポンポンと撫でておいた。



料理を運び終わると、いただきます!と食べ始める。


まずはスープから、ズズっと1口。


「ん〜!うっまぁぁぁぁい!!!」


白く濁ったスープは白湯(ぱいたん)のようだ。

炉端焼きの店、『火鉢(ひばち)』で鳥の骨から出汁(だし)を摂るやり方を教えたが、同じようなやり方でスープのベースを作ってあるようだ。今まで街中でこういうスープは見たことが無かったが、火鉢(あそこ)の店でやり方を教わったのだろうか?このように美味いものが増えるのは嬉しいな!勝手に美味いものが増えていってくれるとか最高だな、教えたかいがあったぜ!

このスープ、濃厚でかなり美味い。それにホロホロになるほど煮込まれた大きな肉。

こんなに大きな肉だと噛み切るのに苦戦しそうだが、歯の力など全く必要としないほど柔らかく煮込まれていた。

こんなに柔らかくなるまで煮込まれているのに1口かじると溢れ出す肉汁……最高だ。根菜が一緒に煮込まれていたが、こちらも柔らかく、この美味い出汁が中まで染み込んでいてとても美味い。

濃厚なのに優しい味だ。ホッとする、そんな味だった。


次は、エビだな。

殻ごと焼かれてくるんと丸まっている。

大きなエビなだけあり、なかなか分厚いカラだ。

まずは、頭と体の所でパキッと割る。すると頭の方からトロトロとベージュの味噌が流れ出してきた。

おお、垂れる垂れる!と、ジュゥッチュゥッとすする。


「ん!!!」


濃厚だ。なんて濃厚なエビ味噌だ。エビの香りを濃縮したかのようだ。


急いでカラも剥くと、ガブリと身にかぶりつく。

プリっとしたエビの身は凄い弾力で歯を跳ね返してくる。

それをグッと力を入れて噛み切ると、ブチブチっと裂ける身からエビの旨みが溢れ出して来た。


この弾力、この旨み、前に『火鉢(ひばち)』で食べたエビも美味かったが、コレも美味いな!

ダンジョン産だろうか?また俺も海産物が取れるダンジョンにも行ってみるかな!


そんな事を思いながら何かの野菜が肉で巻かれた物をパクリ。


「ん??!!」


肉の中に巻かれていたのは人参のような味の物だ。

そして、この味付けは……


「これ、焼肉のタレか?!」


食べ慣れた醤油ベースのすりおろしりんごが入った焼肉のタレで味付けされているようだ。


美味い!焼肉のタレが肉と人参に合わないわけないもんな!!


バカ売れだとは聞いていたが、出店(でみせ)の料理の味付けにも使われているとは……


それからこれはベーコンかな?


かなり分厚くカットされたベーコンのブロックだ。


燻製技術はあるんだな……どれどれ?


端から1cm程の厚みにナイフで切り分けていく。

切り終わると、1枚つまんでパクリ。


「ん、んん〜!!」


これは美味い!なんの木を使ったのだろうか?少し爽やかさがあるスモーキーな香りが鼻に抜けていく。

余分な水分が抜け、ギュッと凝縮された旨み、溢れ出す甘い脂がたまらん……

塩加減も絶妙だ。

これは明日も買いに行って、いつでも食べられるように買い溜めしておかなくては!!


そんな事を考えながら、最後に薄切り肉が沢山食パンに挟んであるサンドイッチをパクリ。


「んん!!うっめぇぇぇぇぇ!!!」


これも味付けは焼肉のタレか!肉に絡ませサンドイッチにするとこんなに美味いのか!

新発見だ!


適度に脂の乗った肉と香ばしい焼肉のタレの相性は抜群だった。さらにこれはパンとも合う!

焼肉のタレで味付けした料理は米を食べる時にしか食べたことがなかったが、コレは良いな!

これは肉しか入ってないようだが、ここにレタスとか、一緒に炒めた人参や玉ねぎを入れても美味そうだ……


一通り料理を味わうと、セクリアに体を返した。

少しずつしか食べてないから、お腹の容量もまだまだ食べれるだろう。


セクリアは「おいっしいー!」と幸せそうに料理を堪能している。

横を見るとライリーも手が止まらないといった様子でバクバクと頬をパンパンに膨らませて料理を頬張っていた。

ライリーとセクリアだけでなく、他の子供たちも幸せそうな顔で料理を食べている。


こんだけ喜んで貰えたら沢山買ってきた甲斐があるな!


明日はどんな物を買おうかな……?


子供達の幸せそうな顔を見ながら、まだ見ぬグルメへ思いを馳せるのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ