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15、孤児院の子供達と収穫祭-1

随分気候も涼しくなり、もうすぐ冬の気配がしてきた今日この頃。


秋の味覚の収穫もそろそろ末期のようだ。

畑の作物の収穫がほぼほぼ終わりのこの時期に収穫祭が行われるそうだ。

畑の作物とは、以前俺が取りに行っていたりんごや栗のような危険な作物では無く、先人が賢者と協力して、危険を取り除いて収穫しやすくした野菜や麦、果物の事だ。分かりやすく言うと日本に生えている野菜みたいな感じだ。収穫するのに暴れたり噛み付いてきたりしない、俺からすると普通の野菜等の事だ。

俺が以前取りに行っていたのは、野生の野菜や果物だ。野生のって言い方もなんだか変だが、自生しているものだ。野生の植物全部が逃げたり襲ってきたりする訳では無いようだが、なかなか危険な物も多いようだ。


収穫祭は10日間行われる。あちこちの領主や貴族が集まり王城でパーティが開かれていたり、街中では歌やダンスをしている人で賑やかで、屋台や出店の数はいつもの数倍になるそうだ。

広く開けられていた広場も出店で全て埋まるほどらしい。


孤児院でも収穫祭に出店(でみせ)を出して参加するそうでこないだから着々と準備が進められている。

出店で売るものを決める時は大変だった。

丁度モンブランケーキを差し入れに行った時に出店の出し物を決めようとしていて、モンブランケーキのあまりの美味しさに「これを出そう!」と、全員の意見が一致してしまったのだ。

だが、作って貰ったのは城の厨房だ。

なぜ孤児院の子供達がモンブランケーキのレシピを知っているんだ?なんて話になったら一大事だ。

なんだかんだと、モンブランケーキを諦めさせるのに一苦労だったのだ。


いやぁ、あん時は焦ったぜ……


結局、代わりになにか出店向けの食べ物のレシピを強請(ねだ)られたのだが、モンブランケーキを出されるよりは良いだろう。

栗の数にも限りがあるしな!


孤児院の子供達はみんなやる気満々で、出店でスムーズに提供できるように、料理の練習や接客の練習、お会計の練習などを院長先生やリリーに教わって毎日頑張っていた。


今日も、明日から開催される収穫祭に向け、最終確認をしているようだ。


俺も、ライリーとセクリアに頼まれて材料の調達を手伝った。

その材料もみんなでせっせと仕込み中のようだ。

俺が頼まれて届けたのは醤油と、ホーンラビット、ポロポロ鳥、ブラウンクック等のあっさり系の魔物の肉だ。

あとは市場や商店で揃えれるようなのだが、みんな出店するのに肉や魚を買い集めているようで、肉や魚は品薄のようだ。


普段は出ないような店が沢山出るって話だし、肉や魚が品薄になるほど飲食店も出るみたいだし、どんな料理が売られているのか楽しみだ!

ライリーとセクリアと一緒に回る約束をしているし、明日が待ち遠しいぜ!


◇◇◇


今日はいよいよ収穫祭の開催日だ。

孤児院の出店する場所は、孤児院から一番近い広場の端の方だった。子供の足でも歩いて5分程とかなり近い。

場所の申し込みをする時にはまだ沢山の場所が選べたようなのだが、院長先生が子供達が人が多い所をウロウロして邪魔になったり、逆に子供達が人混みに巻き込まれて怪我をしたりするのを懸念して端の方にしたようだ。


だが、場所的には屋台の裏から孤児院まで荷物を持って行ったり来たりするのにはとても近くて便利そうだ。


仕込みは孤児院でして、仕上げを屋台のカウンターの中でするようだ。


アレは出来たてが美味いからなぁー!


今日はみんないつも以上に早起きをして朝から準備をしていたようだ。


みんなキャッキャと楽しそうだ。


役割分担は、年上の子が、料理の仕上げとレジを、下の子が商品の数を確認して渡す係をするようだ。

その他にも明日の分の仕込みを孤児院の方でするようだ。1晩タレに漬け込んでるからな。その仕込みも交代交代(こうたいごうたい)でするみたいだ。

院長先生が仕込みの方に、リリーが屋台の仕上げの方に着いてくれるようなので安心だ。


そろそろ準備も整い、何時から始まるんだろう?と、そういえば時間を聞いてなかったなと思った時だった。


「皆様おはようございます!」


街全体に響くような大きな声が聞こえてきた。


え?!スピーカー?……にしてもキーンとはならずちょうどいい音量で聞こえるな……


セクリアにこっそり聞くと、何かの魔法で街中全体に聞こえるようにされているそうだ。

こういう祭りの挨拶や、国王陛下からの新年の挨拶、緊急事態が起きた時などに使用されるそうだ。


へぇ……そうなんだな……魔法って便利だな……


「──それでは、只今より収穫祭を開催致します!

皆様存分に楽しい時間をお過ごしください!」


セクリアに色々尋ねている間に収穫祭の開始の挨拶が終わったようだ。


街中がワッと歓声に揺れた。


それと共に、屋台や出店からは「いらっしゃいー!」「寄ってってー!」と、賑やかな声が響く。


なんか祭りっていくつになってもワクワクするよなー!


ライリーとセクリアは午前担当で、午後から屋台や出店を一緒に見て回る予定だ。

先に少し見て回って来ようかとも思ったが、孤児院が出す屋台も上手くいくか少し心配なので、皆が少し慣れてくるまで様子を見ることにした。


「いらっしゃいませー」

「美味しいよー」


子供達が元気よく声を出して客引きをする。


「いい匂いだな!」

「2つ貰えるか?」


「「はい!」」


冒険者のような服装の若い男性2人が最初のお客さんだった。


今回屋台用に教えた料理は唐揚げとフライドポテトだ。

どちらかだけでも良かったのだが、どちらも揚げ物なので準備の手間も極端には変わらないだろうと、味見をしてもらうと両方する事になった。

毎年出店を出しているが、お客さんの人数もそこまで多くないそうだ。なので2品出しても十分対応出来るだろうとの事だった。


昨日まで接客の練習を一生懸命していた子供達は、ちゃんと唐揚げは肉を揚げたもので、フライドポテトは芋を揚げたものだけどどちらにしますか?と確認を取っている。


噛まずに大きな声でしっかり確認が取れているようだ。


なんか、子供達が練習していた事が出来たのを見ると感動するな……


そんな事を考えながら見守っていると、冒険者の男2人は唐揚げもフライドポテトも両方2つずつ頼むことにしたようだ。

それから、これにバッチリ合うエールも用意してある。大きな樽に入ったエールは大きな樽を中は凍らない程度に凍らせてある。

コレなら注ぐだけで冷たいエールが提供できる。良いアイデアだろ?朝からエールの樽が凍っているのを見たリリーは驚きに叫んでいたが、セクリアが何とか上手く誤魔化してくれていた。

少し涼しくなってきたとはいえ、冬でもエールは冷たい方が美味いからな!しかも熱々揚げたての唐揚げとフライドポテトと一緒に飲むならキンキンに冷えているのが良い。

コップを返しに来てくれたらコップ代を返金する仕組みになっているので、子供達はエールも勧めて一緒に売ったようだ。

熱々の唐揚げを食べて、冷たいエールを飲むとめちゃくちゃ美味いみたいですよ!と、言うと良いと口上も伝えといたからな!上手く売り込んでいるようだ。


だが、コレは嘘ではなく事実だ!


現に、受け取った唐揚げをハフハフと言いながら食べ、「うっまぁぁぁぁい!なんだこりゃァ!」「うっめぇえええ!!なんだこりゃぁ!」と、驚いた後に、エールを1口飲むと目をカッと見開いてゴキュッゴキュッゴキュッと、一気に飲み干し、ぷっはぁぁぁぁ!!!と幸せそうな顔をしている。


「やべぇ、エールもう飲みきっちまった」

「お、俺も、もう一杯貰えるか?」


2人は、数歩進んで戻ってきた。


唐揚げ1個で、エールを1杯飲み干すなんて……これは、エールが足りなくなりそうだな……


冒険者の男2人は、唐揚げもフライドポテトも大層気に入ったようで、孤児院の屋台の前から動かなくなってしまった。

腹いっぱいまで居座るつもりだろうか……?


子供達は、そうでしょー!美味しいでしょー!と、ふふんと胸を張って自慢げだ。


そういや、子供達もここ何日も毎日毎日飽きずに練習で作った唐揚げとフライドポテトを美味そうに食ってたっけ……?

毎日初めて食べたかのようないいリアクションをしていた。

毎日「うっまぁぁぁぁい!美味すぎる!」「最っ高!」と、叫んでいたが、昨日も食ってただろと、突っ込む人は1人もおらず、みんな同じような反応だったのだ。

自分達も気に入っている料理を美味そうに食べてもらえて満足気な様子だった。


まぁ唐揚げとフライドポテトが嫌いな奴なんて聞いたことないからなぁ!


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