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王女様と異世界の栗-2

と、いうことで、やって来ました、城の中!


ここなら材料も道具も使いたい物が揃っているのではないかと思ったのだ。

お菓子作りには色々な道具が必要だからな!

城ならきっと、王族に出す為の美味い菓子も作られているはずだ。

あわよくば味見をしてやろうと目論んでいる。


今までは、警護が厳しく、バレるリスクも高いため避けていたが、モンブランの為だとやって来た。


城の周りはぐるりと壁に囲まれており、壁の外をぐるりと深い堀に囲まれている。

東西南北の入口がある所にだけ橋がかけられており、屈強な門番が大勢警備をしている。

かなり厳重なチェックをクリアした者だけが中に入る事が出来るようだ。

並んでいるのは高級そうな作りの馬車ばかりだ。貴族や商人だろうか……?


そんな警備の横をふわふわと通り抜け、中に入っていく。


すっげぇ……


遠くからでもかなり大きく見えていた城は、近くに来るとさらに大きい。


綺麗に手入れされた庭も綺麗に咲く花々や木々で埋め尽くされていた。

馬車が通る石畳の場所以外は綺麗に刈り込まれた芝生も植えられている。

いつまでも見ていられるような本当に美しい庭だった。


凄い……綺麗だな…………ハッ!いつまでも見ている場合じゃなかった!厨房を探さないと!


厨房を探しながら城の中をウロウロと歩き回る。

広い広い通路が無数にあり、1部屋1部屋見てみるが、厨房らしき場所は見当たらない。


ちょ、これ、広すぎだろ……


どれだけの部屋数があるのか……?

1部屋1部屋もかなりの広さだ。

それはもう、俺が住んでいた1LDKのマンションの部屋などキッチンから風呂から丸ごと一部屋に余裕で収まる程だ。

なんなら2部屋、いや、3部屋くらい入るんじゃねぇか?



移動だけでも大変そうな城の中をウロウロとしていると、何やら話し声が聞こえてきた。

声のする方へ歩いて行くと少しはっきり聞こえてきた声は、誰かがギャーギャーと喚き散らしているようだ。


……喧嘩か?……こっちかな?


広い廊下の先に外へ出られる場所があった。

声は外から聞こえて来ているようだ。


おお!


声がしていたのは城の建物に囲まれた中庭のような場所だった。

中庭と言っても貴族の屋敷がすっぽり入ってしまいそうな程の広さだ。


その中庭の石畳が続く先に白塗りの綺麗なガゼボがある。


ギャーギャーという叫び声は、そこに居たのは5歳~6歳くらいの女の子のものだった。


メイドのような服装の女性達に囲まれて喚き散らしている。


あの子は……?


困り顔のメイドさん達の側まで行くと、「嫌だ!嫌だ!」と大騒ぎしている女の子は王女様のようだ。


後ろの方にいたメイドさんの体を借りて近くにいた別のメイドさんにこっそり聞くと、どうやら6人兄弟の末娘、第3王女のアナスタシア様で、末娘という事もあり大事に大事に育てられ、かなりわがままに育ってしまったそうだ。

今日も出されたお茶もお菓子も気に入らないと大騒ぎしているようだ。

このアナスタシア王女様、かなりの偏食なのだそうだ。


……城で出されるような菓子だろ?何が気に入らなかったんだ……?


テーブルに並べられているのはいい香りが漂ってくる紅茶と、クッキーのようなお菓子だ。


そんなにマズイのか?


俺はスタスタとテーブルの傍まで歩いていくと、おもむろにクッキーを1つつまみ上げ、パクリと食べた。


メイドが急に王女様に出されたお菓子を食べたので、そこへいた人達は、え?と、驚きの顔でこちらを見ている。


ガリガリとクッキーを咀嚼し渋い顔で飲み込むと、予備のティーカップに紅茶を入れゴクリと飲んだ。


んー……


やりたい放題な俺に、王女様もギャーギャーと叫びながら暴れていたのも止まり、驚いた顔でこちらを見ている。


これは確かに美味くは無いな……


クッキーはかなりの硬さで、かなりの甘さだ。

あのかったいパンといい勝負な程の硬さ、そして、砂糖をそのまま食べているかのような甘さだ。いくらなんでも甘すぎる。飴じゃ無いんだから適度な甘さというものがあるはずなのに、できる限り甘くしました!という程の甘さだ。

そして紅茶だ。かなりいい茶葉を使っているのだろう、とてもいい香りだ。

だが、渋みが強い。

まだ5~6歳の子供が飲むには渋すぎるだろう。

テーブルに砂糖やミルクは用意されていないのでストレートで飲んだのだろう。

それなら口に合わないのも納得だ。


「確かに、これはイマイチですね……」


勝手に味見をした俺の口から本音がポロリと漏れた。


ポカンとしていた王女様は、俺のポロリと漏らした言葉を聞くと、目をゆっくり見開いて、「そうなの!」と叫んでいた。


「わかってくれる人がいて良かった!美味しいものが食べたい!何とかしてちょうだい!」と、そう言われるのだった。


そう言われ、ハッと我に返り、言葉に詰まる。


うわぁ、やっちまった……と、顔を引き攣らせるがもう既に後の祭りだ。


何とか……何とかねぇ……さて、どうしたものか……


厨房に行って、何とかできるか様子を見てくると苦笑いで伝え、他のメイドさんに厨房に案内してもらう。


案内してくれたメイドさん、名をカシアと言うそうだ。カシアに、今日はどうしたのだとかなり心配された。


借りた体の持ち主はナターシャと言うそうだ。

後ろの方にいたので新人かと思っていたが当たりだったようだ。

まだ入ってきて3ヶ月程の新人で、いつもはとても物静かで大人しい子なのだそう。

間違っても、許可もなく王女様のおやつやお茶に手をつけるような真似はしない。それが今日は……どうしたのだと詰め寄られた。

ハハハ……と苦笑いを返しながら、そりゃそうだわな……と、自分の仕出かしたことを思い返し反省する。

メイド長や王女様に咎められなくて良かったぜ……


咎められなかったと言うより、皆驚きすぎて思考停止していただけのような気もするが、とにかく王女様が納得するようなもんを作って行ったら体を借りたメイドも何も言われないだろう……多分……




カシアに案内され厨房に行くと、アナスタシア王女様のワガママに応えるために、料理人達はてんやわんやだ。

既に誰かが今日のおやつは気に入らなかった事を伝えに来ていたようだ。


もうすぐ昼食の時間だ。

昼食の準備もしないといけないのに、アナスタシア王女様のおやつの準備、それもアナスタシア王女様が気に入って食べてくれるおやつの準備もしないといけない。


昼食の準備をするコック達と違い、アナスタシア王女様のおやつを準備する人達は手は動いておらず頭を抱えていた。


あー……多分あの人達だな……


俺はその人達に近づいて行き、ここへ来た事情を説明した。


思った通り、頭を抱えていた人達はアナスタシア王女様のおやつをどうしたらいいかと悩んでいたようだ。


やっぱりな!


協力しますと申し出ると、道具や食材がなになに揃っているのかを見せてもらう。


ついでにモンブラン作りに使える物がないかも見ておこう!


流れでアナスタシア王女様のおやつの準備を手伝う事になったが、本来の目的はモンブランだ。

だが、俺のせいでナターシャに迷惑がかかっては大変だ、いや既に若干手遅れな気もしないでもないが、挽回しておかねば!


食材を保管してある場所を見ると、おおー!なんでもある!すごい品ぞろえだ!


あー!あるか心配だったベーキングパウダーもあるじゃねぇか!ヨシヨシ、それなら先にササッとあれを作って王女様に出してやろう。


誰か手伝って貰えるかと聞くと、料理長 (みずか)ら手伝ってくれるそうだ。それから料理人を2人アシスタントにつけてくれるという。


よろしくお願いします!と挨拶をして早速始める。


作るのはもうすぐ昼ごはんの時間だが、デザートだ、……まぁいいだろ。


料理人の1人に、生クリームに砂糖を入れ、ひたすらかき混ぜホイップクリームを作って置いて貰う。

泡立て器のような物が無かったので、マドラーを10本程紐で括りまとめた物でやってもらう。箸があればもっと軽くて良かったのだが無いものは仕方ない、頑張ってもらおう!


次は、メインだ。準備するものは、小麦粉、砂糖、卵、牛乳、ベーキングパウダー、バター。

いる物がなんでも揃っているのはめちゃくちゃ良いなー!さすが王宮の厨房だぜ!


こっちもバター以外を全部混ぜ合わせてもらい、その間にフルーツを切っていく。

おお!秋のフルーツがいっぱいだ!

柿、りんご、梨、ぶどう、これだけあれば十分だ。


オシャレに見えるように切って皿に避けておく。


さて、それじゃぁメインを焼きますかね!

フライパンにバターを溶かし、混ぜておいてもらった生地をトローっと流し入れていく。


ふわっとバターのいい香りがした後に、甘い香りも漂ってきた。


んー、いい匂いだ……


表面にふつふつと空気が割れた穴が出来てきたら裏返し時だ!


ホッ!と裏返し、今度は蓋をして中まで火が通れば『ホットケーキ』の完成だ。

これを繰り返して何枚も焼いていく。


やり方を覚えた料理長が焼いてくれると言うのであとは任せ、焼いてもらっている間に、皿に盛り付けていくか!


ホットケーキを3枚程重ねて、上にバターをポテッと乗せておく。

周りに生クリームと切ったフルーツを綺麗に盛り付けて、蜂蜜を用意して完成だ。

蜂蜜は食べる前にかけてもらう方が美味そうに見えるからな!ホットケーキの上をトロォーッと流れる蜂蜜のツヤツヤと光る様子はかなり食欲をそそられる。

あ、そうそう、先日作ったりんごジャムも添えておくか!これも絶対合うからな!


完成だ!さて味見を……と、余分に焼いていたホットケーキを少し切り、生クリームをつけてパクリと1口。


「ん〜!うまぁぁぁぁい!」


ふわっふわで温かいホットケーキ、その上でとろっと蕩けたバターの風味。さらに生クリームのふわふわ食感とシュワシュワと口の中で消えていく口溶け。最っ高だ!

噛むと優しい甘さのホットケーキと生クリームの甘さが混ざり合い、口の中が幸せだ。

温かいホットケーキだからこそ、バターの風味もしっかり感じられるようだ。

ここでフルーツを……と、梨に手を伸ばすと、止められた。


へ?


お前が食べてどうするんだ!機嫌の悪い王女様に急いで持って言ってくれ!と言われ、追い立てられる。


ちょ、まだ1口しか味見してない!俺も食べてから……


と、そんな意見は通らなかった。

早く持っていけ!とトローリーと呼ばれるワゴンと一緒に追い出されてしまった……

……はぁ、仕方ない。お茶の方は一緒に来てくれたメイドのカシアが用意してくれているようなので、砂糖とミルクも乗せるとガラガラとホットケーキを運んでいくのだった。


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