冒険者と異世界のキノコ-3
昼食を食べ終わると、湖の周りを探索し、さらに山の上の方へと歩いていく。
だが、なかなかオオトロキノコは見つからない。
……探していないのか?まだ見付かっていないだけか?
んー……
また体を借りて、尋ねてみることにした。
「は?オオトロキノコ?!」
「ああ、探しに来たんじゃ無いのか?」
「いや、ルーベン、お前それ本気で言ってんのか?」
「おかしな事言ったか?」
「言ってるだろ!」
「俺らレベルの冒険者じゃ、オオトロキノコの採取は無理だぞ!」
「……へ?何でだ?」
「何でだって……お前なぁ……」
「ルーベンそんなに言うなら、取れる場所に連れてってやろうか?」
「え!本当か?場所はわかってるのか?」
「そりゃ、場所はみんな知ってるだろ?」
「ルーベン、マジで今日変だぞ?」
「そんな事はいいから、早く案内してくれ!」
「え……」
「お、おぅ……」
2人はオオトロキノコの生えている場所を知っているようだ。
それで何で採取に行かないんだか……?
キノコをとるのにレベルなんかが関係ある訳ないだろ!キノコだぞ?
かなりの値段で売れるという話だし、味も間違いなく美味いらしいし。
俺からしたら取りに行かない意味が分からない。
そんな事を考えながら、木々を避けつつ道無き道を歩き進めると、木々の間を抜けた先に広い広い花畑が現れた。
「すげぇ……綺麗だな……」
赤、黄、白、ピンク、オレンジ、青、紫……色とりどりの花が、見渡す限りに咲き乱れている。
色々な色が混ざっているのになんとも言えない調和が取れているようにも感じられ本当に美しい風景だった。
「あそこだぞ」
花畑をうっとり眺めていると、仲間の男が端の方を指さした。
なんだ?と、指を刺された先を見る。
森と花畑の境、そこにあったのは……
「な、な、何だありゃぁ??!!!金塊……?!」
「何だじゃねぇよ、蜂の巣だろ」
「え、蜂……の巣……?」
「世界一凶暴だと言われている、キラービーの巣だよ」
「キラー……ビー……オオトロキノコは?」
「オオトロキノコはキラービーの巣に生えるキノコだ」
「……は?……はぁぁぁぁあああ???!」
「うっせぇ!マジで今日変だぞ、お前」
「何でそんな所に生えるんだ?」
「キラービーの巣の成分を吸収して成長するらしいぜ?」
なるほど、これでは取りに行けないと言っていたのも納得だ。
オオトロキノコは蜂の巣、それもかなり凶暴なキラービーという蜂の魔物の巣に生えるキノコだそうだ。
キラービーが作る巣の成分を吸収して成長する。その為、地面や木に生えるキノコとは違い、取るのがかなり難しい。なんせ近づくだけでキラービーに襲われるからだ。
だが、そんな危険を犯してでも取りに行く人、食べたいと言う人が後を絶たない。なので幻のキノコとも言われているようだ。
なんて事だ……目の前にあるのに食べられないなんて……
俺のキノコ……ん?いや、ちょっと待てよ、俺なら取れるんじゃないか?
そうだよ!俺は魔物に襲われないじゃねぇか!
すうっとルーベンの体から抜け出すと、俺はふわふわとキラービーの巣に近づいていく。
デカい……かなりのデカさの巣だ。三階建てのアパートくらいはありそうな程のサイズの巣だ。蜂もデカい!大人の拳2つ~3つ程のサイズだろうか。こんなデカい蜂に襲われてはひとたまりもないだろう。これはレベルが足りないと採取を断念するのも理解できるな……
おお!?コレ全部がオオトロキノコか……
蜂の巣の周りには巣を埋め尽くす程のキノコが生えている。
まるで黄金のような見た目だ……近づいただけでなんて芳醇な香り……
光を受けて黄金に輝くキノコ、形はマッシュルームのようだ。金に輝くマッシュルーム……
だが、その大きさはマッシュルームよりかなり大きく、大人の男が手を広げたくらいのサイズはありそうだ。
これは凄いな……
まだ焼いてもいないのに、なんとも甘く良い香りがしている。
他の冒険者も取りに来るなら、取りやすい場所のは残しておくか。
俺はふわっと飛び上がると、蜂の巣の上の方から風魔法でオオトロキノコを切り取り、次元収納にせっせと収納していった。
キラービーはキノコを切り落とす度にキノコの動きに反応しているが、俺の姿を見る事は出来ないし、触れる事も出来ない。
どんどん消えていくキノコに困惑しているようだ。
こういう時は霊体で良かったって思うよなー!
攻撃もされず、幻のキノコをサクサク取れるので、調子に乗ってキノコを取りまくるのだった。
◇◇◇
いやぁ、取った取った!かなりの量だぜ!
ぜ、全部は取ってないよ、本当だ!3分の1……いや、4分の1程は残っている。
取りやすい下の方を残しておいたし大丈夫だ!……多分。
ルーベン達はまだいるかな……?と、体を返した辺りを見ると、驚いた顔で3人とも突っ立っていた。
近寄ってみると、キノコがどんどん消えていった事に驚いて呆然と眺めていたようだ。
金色に輝くキノコだからな、結構離れているここからでも光って見える。
それが無くなると、蜂の巣の色は茶色やベージュ、グレーや黒のまだら模様だ。
今ここから見ると下の方だけ光っている。茶色の山に金の輪が着いている感じだ。
……ちと取りすぎたか……?ま、まぁ、やっちまったもんはしょうがない、ポカンとなってる間にまた体を貸してもらおう!
再び、ルーベンの体を借りると、イソイソとその場でかまどを石で組み、焚き火をしていく。
石づきは採取の時に切れたみたいで残ってないからそのままでいいか!
表面を布巾で軽く拭き汚れを落として。
まずはどんな味か確認するために、軽く焼いてみよう!
やっぱ網焼きだよなー!
かまどに網を乗せて、オオトロキノコをそっと置く。
カサを下にしてしばらく焼くと、焚き火の火に炙られたキノコは、シュワシュワと表面に水滴が浮いて来た。
それと同時に良い香りが漂っている。
焼く前からいい匂いがしていたが、焼くとさらに芳醇なキノコの香りが辺りに広る。
それとカサが焼けた香ばしい香りも……
ヒダ部分に水分が溜まってきたら食べ頃だ。
まずは素材の味を確認するために軽く塩だけかけて……いただきます!
焼き立て熱々だ。
フーッ、フーッ、と息をかけて少し冷ましてから、ガブリッと1口齧る。
ハフハフッ、ん!んん〜!!!
「うっまぁぁぁぁぁぁあああい!!!!」
な、何だこれ!なんて美味さだ。まるで肉のような味だ!
口の中に広がる芳醇な香り、フッと鼻に抜ける心地良さ、口いっぱいに広がる旨み、舌に当たるキノコの感触、噛む力など必要ない程の蕩ける食感……凄い……
オオトロキノコの味に驚き、夢見心地で味わっていると、仲間から声をかけられた。
「ちょ、ルーベン?!」
「おまっ、なんでそのキノコ……オオトロキノコじゃねぇか!!?」
「あぁ、美味すぎるぜ……」
「はぁ?!美味すぎるとか、そういう問題じゃねぇ!」
「お前、どうやって取ってきたんだよ!」
「まぁまぁ、そんな事より、食べてみたくないか?」
「え……」
「良い香りだろ?」
「ッ……ゴクリッ……」
「これとこれがもう焼けてるぜ」
「ッ……はぁ、はぁ、はぁ……」
「さぁさぁ、皿とフォークをもって」
「……ッ……」パクリッ
「どうだ?」
「うっめぇぇぇぇぇええええ!!!!」
そうだろ!そうだろ!
「なんて美味さだ……これは本当にキノコなのか……?」
「こんな美味い物、初めて食べた……口の中で蕩ける肉のようだ……」
2人とも恍惚の表情だ。




