11、冒険者と異世界のキノコ-1
今日は、秋晴れの澄んだ青空が広がっている。とても爽やかで過ごしやすい気候だ。
俺は今日は山に向かってふわふわと歩いている所だ。
王都から北へ、ダンジョンも通り越してさらに30分ほど歩けば山の麓につく。
そういえば、あれから孤児院に醤油を持って行きがてら、何度か様子を見に行った時に聞いたのだが、かなり大変なことになってるようだ。
ケチャップも焼肉のタレ2種類も売れに売れて予約待ちなのだそうだ。王都中の人々がケチャップと焼肉のタレの虜のようだ。街中ケチャップと焼肉のタレを求める人で溢れているとか……街の人達だけでなく、貴族や王族も虜らしい。
さすがに王様に話さない訳にはいかないだろうが、貴族や街の人達には作っているのが孤児院だと出来るだけバレないようにしてくれているようだ。レシピを求めて拉致なんかされたら大変だからな……もしそんな事になった時はさっさとレシピを渡して人命を優先するように伝えておいた。
材料を運んでくるのも、出来上がったものを運び出すのも商業ギルドのスタッフが全てしてくれるので、子供達がする事はケチャップと焼肉のタレを作って容器に詰める所までのようだ。
クラレンスに頼んで良かった。お願いした通り子供達の負担に出来るだけならないように上手くやってくれているようだ。
子供達はみんなとても元気だった。お腹いっぱい食べられず、肌もカサカサしていたり、ガリガリに痩せていた子も健康的になっていた。今は毎日お腹いっぱい食べられるようになっているようだ。
ライリーとセクリアも毎日忙しくケチャップと焼肉のタレをせっせと作っているそうだ。
忙しいけど、食事は豪華になったと喜んでいた。
服も新しく綺麗なものを買って貰えたそうで、くるくると回って自慢された。
2人ともとても良く似合っていた。
ケチャップと焼肉のタレの予約は日に日に増えているが、1日で子供達が作れる量には限界がある。王都にある孤児院は4箇所だ。他の3箇所の孤児院でもケチャップと焼肉のタレを作っても良いかと聞かれた。なんで俺に聞くんだ?と尋ねると、コウヘーが教えてくれたから確認してからじゃないとと返事を待って貰っていたそうだ。なんて律儀な子供達だ。
醤油をあちこち持っていくのが大変なので、それを何とかしてくれるなら構わないと答えておいた。
次行った時には、他の孤児院でケチャップを、ライリーとセクリアが居る孤児院で焼肉のタレを作るようになっていた。
醤油の入手経路は内緒だとなんとか誤魔化したらしい……まぁ、幽霊に持ってきてもらってるなんて、本当の事を言っても信じて貰えなさそうだもんな。
ケチャップと焼肉のタレが爆売れしたお祝いに、ブラウンホーンブルの肉をプレゼントして、焼肉のタレの本来の食べ方を伝えておいた。
いやぁー、あん時の子供達のテンションの高さったら、かなり圧倒されたなぁ……奮発してミノタウロスの肉をかなりの量を持っていったんだが、かなり美味かったようで、目をギラギラさせて肉食獣顔負けの食欲で、あっという間に肉が全て消えたからな……
凄く喜んで貰えて良かったけどな!ハハッ
こんな感じで、孤児院の子供達はとても元気そうにしていた。
で、今日はなんで山になんか来ているのかと言うと、秋だからだ!
秋と言えば、そう、食欲の秋だ!
秋に旬を迎える味覚は多い!これを食べずにいられるか?いや、否だ!
そしてその秋の味覚、そのひとつが『キノコ』だ!
街で、この時期に王都の北の山で美味いキノコが山ほど取れると聞いてきたんだ!
あ〜、今から楽しみでしょうがないぜ!
松茸、しいたけ、しめじ、なめこ、舞茸……日本でもスーパーに売ってたキノコも取れるみたいなんだよなー!
それからなんと言ってもメインは『オオトロタケ』だ。
なんでも、キノコとは思えないような蕩けるような口当たりでそれはもうかなりの美味さだそうだ。
そんな事を聞いたらキノコ好きとしては山に行かない訳には行かないだろう!
という事でやってきた!
山の麓に着いたが、かなりの人だ。
皆オオトロタケ目当てで来ているのだろうか?
冒険者のような服装の人が多そうだ。
まぁ、山の中にも魔物が出るみたいだしな。武器は必須だよな。
んーと、誰かについていって情報収集しながら探すか……?
キノコに詳しそうな人を探してふわふわと歩いていると……
おお!この人絶対キノコ好きだろ!!
マッシュルームカットのひょろっとした男性冒険者を発見した。
キノコ頭だしな!この人について行ってみよう!
仲間は剣を携えた男性が2人の、3人パーティのようだ。
キノコ頭の男性はローブを着て1.2m程の大きな杖を持っている。魔法使いだろうか。
今日はこの3人の冒険者に勝手に同行させて貰うことにした。
秋晴れの日に山登りとか最高だなー!
冒険者について行きながら、辺りをキョロキョロと見ると、やはり異世界なだけあり、見たこともない草木や花が生い茂っている。
この世界でもキノコは地面が湿気ているような場所や影になっている場所に多く生えているようだ。冒険者達も、湿っていそうな場所を確認しながら山の上へ上へと進んでいる。
ここの山は人も良く来るのか、踏み固められた道のような物が上へ上へと続いている。
だが、ちゃんと舗装されている訳では無いので、大きめの石が転がっていたり、木の枝が落ちていたりとかなり歩きにくそうだ。
しばらく登ると、踏み固められた道から外れて木が生い茂る中へと入って行く。
ギルドでキノコの多く生息する場所を聞いてきたそうだ。
おお!やるじゃん!
これなら安心だな!と、悠々としてついて行っていると、しばらく歩いた先に広い湖があった。
山の上から流れてきた水が溜まって出来た湖のようだ。
岩肌からチョロチョロと水が流れ込んでいる。
水はとても澄んでいて透明度も高い。
おー!綺麗な湖だな……
湖の上を飛行虫が沢山飛んでいる。
大きさは様々だが、あの1m程もありそうな飛行虫は魔物だろうか……?でっけぇな……
湖を眺めているとキラキラと光を反射する水面から時折魚が飛び跳ねている。
飛び跳ねた魚もかなり大きい。
小さい飛行虫を狙って飛び出しているようだが、中には30cm程はありそうな飛行虫を丸呑みにして水中に帰って行った魚もいた。
でっ……かぁー……
そうかと思えば、逆もまた然り。小さい飛行虫に狙いを定めて飛び出した魚を捉える大きな飛行虫もいた。
マジか……虫が魚を食べるとか、さすが異世界……虫、だよ、な?デカいけど……
湖をぐるりと囲む木の根元をしばらく探すとキノコはかなり沢山集まったようだ。
麻袋のような1m四方程の大きな袋がかなり膨らんでいる。
俺の方もしめじが沢山取れた。天然のしめじって初めてだ!日本で食ってたブナシメジよりもかなり大きい。食うのが楽しみだな!
そう思っていると、剣を携えた男の1人が、そろそろ昼休憩にしようと言っている。
おお!昼かー!冒険者の昼飯ってどんなんだろうか?
何気に見るの初めてだな!




