孤児院の子供と異世界の炉端焼き-4
はぁ……と満足気な息を吐くと、まだ何か焼こうか?と店主に聞かれた。
うん、まだまだ食べられそうだ。
子供達もまだ食べれると言うので、並べてある食材を物色する。
ふと目に止まったのは、ホタテのような形の貝だ。だが大きさは全然違う、大きさは30cm程で、厚みは15cmくらいだろうか。まずはそれと……お、トウモロコシがあるじゃん!
その二種類を焼いてもらうことにした。
ただし、味付けは塩ではなく、両方バター醤油でお願いする。
またもや怪訝な顔をされたが、やってはくれるようだ。
そういや、パンは置いてないようだ。
主食がないな……魚と鳥とトウモロコシだけだと腹減るかな?と子供達を見る。
何処かでパンを買ってくるか……と考えながら見たそこで、店主が何かを纏めている。
ちょ、それって!!!
店主が捨てようとしていたのは魚の骨やホロホロ鳥の骨だ。
いい事を思いついた!
店主に頼んでそれも調理してもらうことにした。
魚の骨は一旦網でカリッと焼いてもらう。
その間に寸胴2つに水を入れ片方に昆布を、片方にホロホロ鳥の骨をいれて強火にかける。
沸騰するまでに、鰹節を風魔法で削っていく。
この昆布と鰹節、ダンジョンの16階層17階層でドロップした物だ!
昆布を入れた寸胴のお湯が湧いたら、すぐに昆布を引き上げ、今削った鰹節を入れる。そのまま数分煮て鰹節を引き上げる。
そこへ焼いてもらった魚の骨をドバドバと入れていく。
よし!これで、鳥ダシと、魚ダシの準備は完了だ。
あ、かん水が無いじゃねぇか!……仕方ないので、木灰水で代用しよう!
灰を分けてもらって灰が水に沈むのを待っている間にタレと小麦粉の準備だ。
醤油、砂糖、みりん、料理酒を鍋に入れ煮立てていく。
料理酒と砂糖もダンジョンの14階層15階層で手に入れた物だ。
タレの準備を火にかけて、灰入の水を見ると、灰は上手く下に沈殿したようだ。
この上澄みを使う。
小麦粉に木灰水と塩を入れ捏ねていく。捏ね上がったら、片栗粉を敷いて薄く伸ばし、折り畳んで切っていく。
これで麺は完成だ。
タレもアルコールは飛んだようだし、これでよし!
「うぉ?!」
ふと子供達に目をやると!期待の籠った目でこちらを凝視している。
んー……ダシをとるのにかなり煮込まないといけないんだが、子供達を帰す時間もあるしな……
ホタテとトウモロコシが焼きあがったようなので、それを食べ終わったら、ダシの味が薄くても作ってしまうことにした。
ホタテのような貝を分けていると、店主が値引きをするから少し食べさせてくれないかと言ってきた。
バターと醤油のいい香りが立ち込めているので、気になっているようだ。
どうぞどうぞと、ホタテもトウモロコシも分けると、早速と1口。
「うっっまぁぁぁぁあああいぃぃ!!何だこれは!同じ貝なのか?全く違う味だ!いや、噛めば噛むほど素材本来の味もする!だが、この濃厚な風味、後を引く香り、美味すぎる!!」
おっと……店主が大きな声で食レポをするのでびっくりして食べ損ねてしまった。
子供達も店主をポカンとした顔で見ている。
「……俺たちも食べようか?」
「う、うん……」
今度こそ、パクリと頬張る。
むふぅ……醤油の香ばしい香りとバターの風味、それがホタテのような貝の甘味をさらに引き立てて……
「うっめぇぇぇぇええええ!」
ああ、この貝もかなりの美味さだな!プリっとしているのにとても柔らかい食感。溢れ出す優しい甘み、味もホタテに似ている。美味い!
子供達はトウモロコシに齧り付いていた。
甘くて美味しいと満面の笑みだ。
バター醤油で炭火焼きだからな!屋台のトウモロコシの感じだよな、あれは本当に美味くて、俺も大好きなんだよ!
さて、あっちの様子もそろそろ見てくるか!
ガタリと椅子を引き立ち上がると、みんなが俺に注目する。
ホタテとトウモロコシを食べたせいで、今から何をするのかと期待値は最高潮に上がっているようだ。
俺を見てヨダレを垂らしそうになっている。
いや、俺は食いもんじゃないからな!そんな顔で見んなよ!
そんな食われそうな視線に晒されながら、麺を湯掻く準備をして、出汁の様子を見てみる。
少し味見をしてみるが、やはり4~5時間は煮込みたいところだ、味が少し薄い。
だが、今日は時間もないし仕方ない、コレで我慢してもらおう。
深い丼サイズの皿を借りると、店主も食べると言うので4人分スープの準備をしていく。
麺が茹で上がると、麺を入れ、トッピングは準備する時間もなかったので、先程のホタテを少し避けていた物とネギだけ散らして『魚介醤油ラーメン』の完成だ。
ラーメンは〆にピッタリだよなー!確かにこういう店にはパンはあんまり合わないもんな!
みんなに配って俺もスープを1口、その後麺をズゾゾゾゾゾッッと啜り上げる。
「むふぉ、うっめぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
魚介の出汁と鳥の出汁がよく効いている。なんて濃厚な出汁だ。まだ2時間も煮込んでなくてこの美味さ!その2種類の出汁を上手く融合させるこの醤油。全てが主張し過ぎず綺麗に纏まって美味さを爆発させている。さらにかん水がなくて木灰水で代用した麺。ツルツルでぷりっぷりだ。美味い!
あ〜、久しぶりのラーメン、マジで最高だぜ!
あれ?そういや静かだな。と店主と子供達を見ると、シンっ身動きもせず、目を見開いて3人とも動きを止めている。
え?不味かったか?ズズっ……スープをもう一度飲んでみるが、なかなか、いやかなり上手く出来ている。
俺はかなり美味いと思うが、異世界の人の味覚はやはり俺とは多少違うんだろうか……?
少し気まずい気持ちで、3人を見ると、恍惚の表情で顔を上げた。
3人とも、美味しい……こんなに美味しい物があるなんて……知らなかった、こんな世界があるなんて……と、涙を浮かべ蕩けた表情で今にも昇天しそうだ。
おー!ビビった!不味いんじゃなくて良かったけど、美味すぎたってことか?
まぁなかなかいい出来だよな!鶏ガラと魚介の旨みも短時間の割にしっかり溶けだしていて、醤油のタレともマッチしている。
元々の魚もホロホロ鳥もかなり美味かったから、骨から出るエキスも濃厚で美味いんだろうな!
異世界でもラーメンの美味さは共通のようだな!
3人は、スープの最後の一滴を飲み干すまで、いや、飲み干しても蕩けた表情は戻らなかった。
幸せそうで何よりだ!
店主に詳しい作り方を聞かれ、店で出してもいいかと尋ねられたのは言うまでもない。
出汁はもっと煮込めばもっと濃厚になると伝えると、目を見開いてゴクリと生唾を飲み込み、これ以上にか……?と、目をぎらりと光らせていた。
食べ終わるとお会計をして、子供達を送って行ってから、戻ってきて続きを説明することにした。
孤児院に何も言わずに、引き止めているからな、心配させているだろう。
孤児院までの間にある店で、パンや果物、野菜や肉を3人で抱えて持てるだけ買って孤児院に行った。
案の定、院長先生達が心配していたので、俺がご飯を食べようと引き止めていたのだと謝っておいた。
無事だと分かると、すぐに許して貰えたので良かった。
買ってきたお土産を渡し、ライリーとセクリアに明日はどうしたらいいかと話しかける。
朝はいつもやることがあるそうなので、お昼ご飯を食べ終わってからなら大丈夫だと言うので、お昼頃に来ることを約束した。
着いたらいきなりライリーの体を貸してもらって良いそうだ。
「それじゃぁ、また明日な!」
「うん!コウヘー、ちゃんと来てよ!」
「コウヘー、約束だからね!」
「おう!ちゃんと準備してくるからな!」
ライリーとセクリアの頭をガシガシと撫で、明日の約束を交わすと、俺は店に戻ってラーメンの作り方を店主に教え込むのだった。コレでラーメンも好きな時に食えるようになるぜ!!ひゃっほー!




