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孤児院の子供と異世界の炉端焼き-2

さてさて、何を食べようかな……


街に着くと空が赤く染まるには少し早いくらいの時間だった。時計がないのでハッキリした時間は分からないが15時くらいだろうか?少し早いが店も開き始めているようだ。


店が開いているなら問題ない!日が落ちる頃に飲食店は忙しくなるので、ちょうどいい時間に帰ってこれたなとキョロキョロと街中を見て回る。


飲食店が多く立ち並ぶ通りに差し掛かった時だ、何かを焼く香ばしいいい香りが漂ってきた。


この香りは……


いい匂いに誘われるまま進んでいくと、広い通りから路地に入った先の店から漂って来ているようだ。


へぇ……凄くいい雰囲気の店だな……


入口は大きな扉が開け放たれており、中はこじんまりとしたカウンターだけの店だ。

奥を覗くと、カウンターの向こう、厨房には網と灰が準備してあり、大きな網で焼く炉端焼(ろばたや)きと、灰に串を刺して遠火の強火で焼く囲炉裏端(いろりばた)が楽しめるようだ。

カウンターと焼き場の間には魚や貝、エビ、野菜等の食材が沢山並んでいる。どうやら、食材を指定して焼いて貰えるようだ。


うほぉ!やべぇ、最高じゃん!ここにしよう!!!


誰か、誰か、体、体ー!!


店内には壮年の男性が2人、離れた席に座っているので知り合いでは無さそうだが、いい顔で魚を食べ酒を飲んでいる。


んー……あれを邪魔するのはちょっと気が引けるな……


外には誰かいないか?と、表へ出てみる。


ん?……ホームレスみたいなおっさんだな……


路地に入った先にあるこの店よりさらに奥に、ボロボロの服を纏った小汚い痩せこけたおっさんが、倒れて……いや寝てるだけ?……まさか、死にかけか?


近寄って見ると息はある。だが、寝てるというよりはぐったりしているようだ。


俺はおっさんに回復魔法をかけてみた。


「……え……?これは……」


おっさんは体の調子が戻ったのか、ゆっくり目を開け、驚いた顔で自らの体を確認しているようだ。


おっさん、体治したお礼に、ちょっと体貸して貰うな!


俺はおっさんの体にすぅっと入り込む。


……うん、上手く入れたな。


さて、泥やホコリにまみれた体で店に入るのは気が引ける。

最近使いまくってレベルの上がった浄化魔法で、身体中の臭いも汚れも綺麗に落とし、ボサボサに伸びた髭と、クシャクシャに絡まった髪も勝手に整えさせて貰った。

ナイフで髭剃りなんか出来ないので、風魔法でだ!


服は……ボロいが仕方ない。

よし行くか!


そう意気込んで、先程の店の方へ行こうとして、ふと視線を向けられているのに気づいた。


誰だ?とそちらを見ると、10歳程の子供が2人。多分男の子と女の子だろう。


「……どうかしたのか?」


じっとこちらを見るのが気になり、声をかけてみた。


「魔法……?」


2人は壁から覗くようにこちらを見ながらも、返事はしてくれた。


どうやら俺が風魔法で髭や髪を整えているのを見ていたようだ。


髪を直して欲しいのかと尋ねると、コクリと頭を縦に振った。


俺は2人に近づいて行き、浄化で体を綺麗にし、髪も希望の長さに整えた。


2人は孤児院の子供のようだ。孤児院なら院長先生なんかがそういう所はちゃんとしてくれそうだが……と、尋ねると、王都には孤児がかなりの人数いるのだとか。孤児院も4箇所もあり、国からの援助も多くなくカツカツの生活をしているそうだ。

2人が生活している孤児院は院長先生とリリーという女性職員の2人で子供達の面倒を見てくれているそうだが、国からの支援金だけでは満足に食料を購入出来ない。どちらかはいつも食べ物を手に入れるために街中を回っているそうだ。

食べ物を分けてくれる人もいるが、毎日ともなると、分ける方の負担にもなる。なので日に日に食べ物を集めるのが難しくなっているようだ。

そんな事もしている為、全ての子供の状態をしっかり把握するのも難しいそうだ。

2人も食べ物を探す為に、孤児院を抜け出して来たのだそう。


孤児院も大変なんだな……


2人に帰らないといけない時間を聞くと、まだ時間はありそうだ。


それなら一緒に飯を食っていこうと誘ってみると、嬉しそうな顔をして着いて来た。


店の名前は、炉端焼き『火鉢(ひばち)』。海産物を中心に焼いてくれるようだが、肉や野菜も置いてある。楽しみだ。


子供2人を連れて店に入ると、店は店主1人で切り盛りしているようで、いらっしゃいと、店主に席に誘導された。


希望の物を焼いてくれるのだが、値段表が見当たらない。

値段を聞くと、物によって違うと言う。


俺はお金を幾らか渡して、これでおまかせでと頼んでみた。


「へ?こんなにか?!」


「美味いものが食えるくらいの額か?」


「そりゃ、こんだけあればかなり食えるぜ!」


「なら、店主の美味いと思うおすすめと、あとエールと……何飲む?」


「ジュース」


「あるか?」


「ああ」


頼んだら後は待つだけだ。

飲み物を先に渡されたが、エールもジュースも(ぬる)かった。

それをキンキンに冷やして飲みながら待つ。

目の前で調理されるライブ感!コレはなんの料理でも最高だ。

塩を振った串に刺さった魚や肉を囲炉裏(いろり)に、大きな貝と、大きな海老を網に乗せてくれた。

貝も海老も凄い大きさだ……

目の前で調理される様子を見て、子供2人は目を輝かせている。

いつも孤児院ではご飯の準備を手伝って入るようだが、こんなに大きな貝や海老を焼いているのを見るのは初めてだそうだ。

俺も初めてだ。人の頭ほどあるような大きな貝を見るのは……海老も伊勢海老の倍ほどは有りそうなサイズの海老だ。

ジュゥゥゥゥッといい音を響かせ炭火で焼かれている。

しばらく焼くと、貝からも海老からも汁が滴り、それが炭に当たりまたいい音と、いい香りを辺りに充満させる。


あー、待ち遠しい!


料理が出来るのを待っている間に、子供達と話していたのだが、男の子の方がライリー、女の子の方がセクリア。2人とも歳は9歳だそうだ。

孤児院は15歳までは面倒を見てくれるが、街で雇って貰えるようになる12歳で、孤児院を出ていく子が多いそうだ。

孤児院の大変な状況を理解しているからこそ、負担にならないように出ていくのだろう。


12歳なんて……まだまだ子供なのに……


2人も働けるなら働きたいが、9歳では雇ってくれる所は無いそうだ。


雇っては貰えない……か、だが、あれなら……


孤児院の中でお手伝いなら大丈夫なのか尋ねると、それなら大丈夫なようだ。


そうか!それなら……と明日伝えに行くと言いかけて、ハッと止まる。肝心なことを忘れていた。俺には自由に使える体がない。


期待の籠った目で見られるが、どうしようかと言い淀んでいると、ライリーが驚くことを口にした。


「俺の体でもできること?」


「……え?」ドキッ……


「俺の体、使ってくれて良いよ」


「な?!……え、ど、どういう……」

ドクン……ドクン……ドクン……


「妖精さんでしょ?」


「ッ……?!」


2人が見ていたのは、この体の持ち主が死にかけているところからだったようだ。元々知り合いで、一緒に食べ物を探したりしていた間柄だったそうで、今日は人が違うと既にバレていたようだ……一緒に食べ物探してるなら金持ってたらおかしいし、魔法使って身綺麗にしてるのもおかしいよな……


うわー、マジか……


人の体を借りて、怪我をした人を治したり、困っている人を助けたりする妖精がいるという噂が広がっているそうだ。

その妖精はグルメで、美味しいものの作り方を広めてくれているという話もあるようだ。

妖精の噂をよく耳にしていた2人はすぐにピンときたようだ。


あー、それは多分、俺……だよな、好きなもん食ってたらこんな事に……ハハッ……


そこまでバレているならと、はぁとため息を吐き、白状した。だが、他の人達には内緒にして貰えるように頼んでおいた。


2人は、本当にいたんだ!と俺に興味津々だ。名前から歳から好きな物から根掘り葉掘り聞いてくる。


好きな物を2~3個、聞かれたくらいに、「おまちどう」と、店主が焼けた貝を差し出してきた。


助かった……店主いいタイミング!


俺は、早く食べようと、まだ話を聞き足りない様子の2人に声を掛けるのだった。

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