スライムと異世界のステーキ-3
ちょ、ちょぉー!!!
「それ!!」
「は?」
「何捨ててんだー!!早く拾え!3秒ルールだ!!」
「え?は?は、はい?」
よく分からないが、怒鳴られたので反射的に拾った店主、焦った勢いで怒鳴り息が切れはぁはぁという俺。
しばらく無言で見つめ合っていたが、痺れを切らした店主が、それでこれが何なんだ?と話しかけてきた。
「それが美味いのに捨てるなんて勿体ない!」
「……は?尻尾がか?」
店主は何を言ってんだ?と言いたげな力の抜けた顔で聞き返してきた。
そうだ!調理法を教えるから、それも調理してくれ!そう伝えると、胡乱げな顔をしながら尻尾をつまみ上げちらりと見るも渋々といった様子で調理を始めてくれた。
血抜きは……大丈夫そうなので、まずは適度な大きさに切り、水と塩を入れた鍋で10分程下茹でをする。
下茹でが終わるとアクを綺麗に洗い流し、バット……は無いので皿に移し塩と料理酒がないのでみりんで代用、こちらを全体にふりかけ休ませる。
おっと、そうだった!関係ないけど、休ませている間にスライムの調理もしてもらおう!
乾燥した寒天のようなスライムを水で戻しておいて貰う。
……のを、お願いしたら、何だこりゃ?食いもんなのか?とまたもや胡乱げな顔をされる。もう俺の事を怪しい子認定されていそうな感じだ。だが、そんな事は気にせず、いいからいいから!とやってもらう!
とりあえず1匹分?拳2個分くらいのサイズのスライムを水に浸して貰う。うん、それじゃぁ今度は尻尾の方がもう良さそうだ!
次はそっちだ!と、塩とみりんをふりかけて置いていた物を鍋に入れ、水と長ネギ、セロリ、玉ねぎ、生姜も入れて煮込んでいく。
ネギやセロリ、玉ねぎ生姜は『肉豪』の店には置いてなかったので、俺が市場で買い込んでいたものを次元収納から取り出したのだ。
よしよし、そのまましっかり煮込んでもらって、その間にスライムだ!
触ってみるとパリパリだった物がふにゃっと柔らかくなっていた。
これを手でむしって小さくしていく。
店主に小鍋を借りて、むしったスライムと水を入れて、火にかけてもらう。
溶けるまで混ぜていて貰うよう頼むと、今度は今日市場で見つけたスイカを取り出した。
夏が旬だからな!絶対美味いよなー!
スイカの上をスパッと切ると、スプーンでコロンと丸い形になるようにくり抜いていく。種が大量に出るが、できる限り取り除いていく。
底に溜まった汁を深皿に取り出し、これまた今が旬の桃を毛を綺麗に洗い流し皮を剥いて小さく切ると少し潰して汁を出しながらスイカの汁と混ぜる。ここに更に水飴と蜂蜜で甘さを足していく。
そのタイミングで店主からスライムが溶けたと声がかかった。
ナイス!いいタイミング!
今混ぜていたスイカの汁や桃の果肉や汁、水飴、蜂蜜が混ざった物を、スライムを溶かした鍋に投入!
それを綺麗に混ざるように煮てもらう。
その間にくり抜いて種を取ったスイカの果肉を中をくり抜いたスイカに戻して、ふつふつと煮立ってきたスライムや果汁を混ぜた物を上からドバーッと入れ、これはこのまま冷やしたら完成だ!
それは何を作ったんだ?と店主が気になって仕方ないと言った雰囲気で聞いてくる。
冷えるまで待っててな!と言ったが、常温で置いていてもなかなか冷めないぞと言われ、仕方なく魔法で冷やしていく。
完成したのは、そう、ゼリーだ!
スライムゼリーと言うと響きが悪いので、『スイカゼリー』だと名前を伝えておいた。
スパッと真ん中から半分に切ると、中に丸いスイカが、コロコロと入ったゼリーが現れた。
「うお?!なんだこりゃ?!」
「ゼリーだよ!」
液体が固まったことに驚いているようだ。
……ああ!そういうことか!保存以外に冷やす事があまりないみたいだから、スライムの使い方も分からなかったんだな!一度煮て溶かしてから冷やすなんてややこしい調理法、知らなきゃしないよな……
皿によそい、店主に渡すとパクッと1口。
「うっめぇぇぇぇええ!!?え?なんでだ?うめぇ!ヒヤッとしててつるんとしてて、甘くて、美味い!美味いぞ!こんなもの初めて食べた!」
美味い美味いと、よく喋れるなという勢いで口にゼリーが吸い込まれていっている。
その様子を見て、店員のお姉さんも物欲しそうな顔をするので、お姉さんにも皿によそい渡すと、待ちきれないという勢いで、皿を受け取り、パクッと1口。
「お、お、おいっしぃぃぃぃ!!!!なんて美味しさなの!あ〜このプルプルが堪らないわ!」恍惚の表情だ。
気に入って貰えてよかった!
こってりしたステーキの後に甘くてさっぱりしたゼリー、最高だよな!と俺も1口。
うっまぁ!え、このスライムのせいか?
ギリギリ原型をとどめている程のプルプル具合だ。ゼリーはもっとプルンっとしているものだと思っていたが、液体と個体の境目のような柔らかさだ。すげぇなスライム!
その蕩けるようなスライムゼリーの中からシャリッとした歯ごたえのスイカが、良い!めっちゃうめぇ!
よし、後は肉を堪能した後に……残しておこうと思ったのだが、俺らが騒いでいたせいで、店内にいた客に見つかってしまった。
あー、俺のゼリーがー……
どうしても食べたいと、客に言われ、したなく、本当に仕方なく提供することに。
恨みがましい目で店主を見ると、ちゃんと金は払うからと、すまなそうな顔で言われた。
仕方ないな、厨房を借りたし、てか、ほぼ指示だけ出して作ってもらったし。
店内がうめぇ!うめぇ!の大合唱になったのは言うまでもない。
そして、そんなことをしていると、煮ていて貰ったものが出来上がった。
最後の仕上げに、みりん、塩、胡椒で味を整えて完成だ。
完成したのは『テールスープ』だ。
店主が捨てようとしていたミノタウロスの尻尾で作ったものだ。
店主にステーキを追加で焼いてもらい、エールとテールスープをついで席に着く。
肉を1口食べ、美味いと味わうと、今度はテールスープを。
「ムフっ、うっまぁ!やべぇ、美味すぎ!」
骨からもダシ出てるわぁ、マジで最高すぎる!
骨の周りについた肉も、柔らかく骨からほろりと外れる程だ。
煮込まれた肉を食べ、スープを飲み、またステーキを食べ、ビールを飲む!
生きててよかったーーー!!!………………いや待て、今生きていると言えるのか?霊体だったわ、まぁいいや、人の体を借りたら美味いもんは味わえるしな!
霊体とかどうでも良くなるくらい幸せだ!
満足そうな顔をして堪能していると、みんなが俺の方を見ている。
え?……なに?
そして、スープ!あのスープ俺にもくれ!俺にもだ!と、店主にスープをくれくれコールが始まった。
あー、今日はまだ酔いつぶれる人が出るには早い時間だもんな……
いつもはもう終わりかけ、酔いつぶれて寝ている人、帰って空いた席が目立つようになってから、アレンジを頼んでいたが、今日は早くに捨てられそうになっていた尻尾を見つけてしまったからな。
それに煮込むのに時間もかかる。すぐに取り掛かってしまったせいでこんなことに……
まぁいいか。俺は知らん!あとは任せた、店主!
酒を冷やしてくれと言うもの以外はスルーして、ステーキとテールスープ、キンキンに冷えたエールを堪能するのだった。
結構なサイズの鍋に作っていたテールスープも、大きなスイカの中いっぱいに作っていたゼリーも無くなると、みんな満足した顔で店を出ていった。
店主と店員のお姉さんはテールスープは1口ずつ、味見程度しか食べられなかったそうで、とてもしょんぼりしていた。
店主に詳しいレシピを聞かれ、店で出していいかも聞かれたので、いつものようにどうぞどうぞ!と二つ返事で了承した。
ゼリーのレシピを伝える時に鍋で煮ていたのがスライムだと伝えると、「はああぁぁぁぁぁぁぁぁああ???!!!す、スライムだとぉぉぉお???!!!」と、腰を抜かすほど驚いていた。
あはは、やべぇ、驚き過ぎだろ!!
腹を抱えて笑っていると、笑い事じゃねぇ!とかなり怒られたが、マジで驚き過ぎなんだもんな、仕方ないって!
だが、誰も調理方法など知らなかったのだ、あの食べたことの無いものが出来上がったのも頷けると、俺用に避けていたゼリーを食べ足りないのかじっと見ているが、これは俺のだ!あげる気は無い!
代わりに、今日大量に貰った乾燥スライムを半分ほど分けてあげた。
液体は甘くしてから冷やし固めるのがオススメだが、フルーツはスイカや桃じゃ無くても、何でも美味しくできると伝えておいた。
季節によって取れるフルーツも違うしな、また色々試してみるそうだ。
冷やすのも、ここはステーキ屋だからな、生肉を保存するのに冷蔵庫がある!
大量のエールやワインを冷やすほどのスペースは無いが、人数を限定してならゼリーも提供できそうだと言っていた。エールやワインはデカい樽に入ってるからな……冷蔵庫には入れられないようだ。
それからテールスープも。
今までも尻尾は廃棄していたそうだ。
こんなに美味くなるなら早く教えて欲しかったと泣いていた。
それは知らん……
さらに、味見しか出来なかったと泣いていた。
それも知らん……先に自分たちの分を避けとけば良かったんじゃないか?と伝えると、早く教えて欲しかったと言っていた。
……どんまい
俺は、ロックリザードとミノタウロスのステーキを追加で頼むと会計を終わらせ、バイト代を貰い、テールスープとゼリーを並べて、女の子に体を返すのだった。
結構食ったけど、この子の体めちゃくちゃ食えるみたいでな、あとステーキ2枚くらいなら余裕だろ!
体貸してくれてありがとな!
俺は休む場所を探して街に消えていくのだった。




