6、スライムと異世界のステーキ-1
今日もよく晴れてんなー
地球だったら毎日セミがうるさいくらい鳴いているだろうな。
この世界にはセミはいるのかいないのか分からないが、この辺じゃ鳴き声は聞こえない。街中にはあまり木も植わってないからかもしれない。
今日も俺は日課の市場探索をしている所だ。
こないだ、じゃがいもを見つけただろ、あれは商業ギルドでだったが、じゃがいもの時みたいに珍しい食材を見つけられるんじゃないかと思ってな!
毎日足繁く市場に通っているって訳よ!
体がない上に、娯楽もないからな、この世界。
今の俺の唯一の娯楽は美味いもんを食うことくらいだぜ。
王都は城を中心に東西南北に街が広がってるんだが、四方にそれぞれ出入りの出来る門がある。市場はその東西南北にある門の近くにそれぞれ広場があり、そこに場所代を払って店を出すみたいだ。
なので市場は入れ代わり立ち代わり毎日違う人が店を出す。
王都に住んでいる人は自分の店舗を持っている人が多く、近くの町や村から品物を持って売りに来る人がここの市場で店を出しているみたいなんだ。
毎日売ってるものが違うから見てて楽しい!
売ってるのは食べ物ばかりじゃなくて、アクセサリーや服やナイフ、民芸品みたいな物とか、植物で編んだ籠なんかも売ってたな。
あ、そうそう、驚いたのはヒヨコや鶏みたいな鳥も売ってた事だな!
浅めの木箱に結構な数入れられててな、ぴよぴよ言いながら動いてるから何かと思ったぜ!
日本にいた時にも本物のヒヨコなんか見たこと無かったのに、まさか異世界に来て見られるなんてなー……
んで、その横で鶏がケージに入れられてたんだよ。育てばこうなるって見本かな?数羽いたが……?まさか食用……?
王都はかなり広くて、毎日4箇所とも見て回ろうと思うと一日がかりでも見きれない程だ。なので、日替わりで各市場に行ってみてる。行っても1箇所かせいぜい2箇所だな。朝ぐるぐると見て回って、昼からは冒険者ギルドで治療のバイトしてたり、森に魔法の練習に行ったり、他のギルドの見学に行ったりと、その日の気分でウロウロしてるからな。
この霊体の状態だと疲れることは無いし、腹も減らないし、眠くもならないんだよな。だから全ては気分次第だ。ハッハッハー!
……だいぶ慣れてきたけど、やっぱ体は早く欲しいぜ……
ウロウロ市場を見て回っていると、ダンジョンドロップ品なんて看板が置かれた店を発見した。
へぇ!ダンジョンのドロップ品かぁ……
ダンジョンがあるってのは小耳に挟んでたが、どんな物がドロップするんだ?
興味をそそられ、店に近づいていく。
店の前にはかなりの人だかりができている。
俺は人の上をふわふわと浮いて近づいて行く。
こういう時は霊体なのも便利なんだけどな……
ドロップ品は、牙や爪、白やグレーや黒の毛皮、皮、鱗に、髭?や針みたいなのもあるし剣やナイフまである。それから大きさが様々な魔石、ポーション、貴重な薬草、それから野菜や果物、肉、魚……って、食いもんもドロップすんのか?!マジで?!
結構な範囲を借りて品を出しているだけあり、種類も量もかなり豊富だ。
それにしても美味そうな野菜、肉、魚もドロップするなら、俺もダンジョン行ってみたいな……今度調べとくかな!
何を買おうかと見ていると、天日干し寒天みたいな物も置いてあった。それも大量に。
……何だこれ?寒天?
パッと目につき、気になったので、近くにいた人の体を借りて尋ねてみた。
すると、スライムのドロップ品なのだそうだ。
食べ物ばかりがドロップするダンジョンのスライムはこの謎の乾物しかドロップしないらしい。
使い方も分からないし、ギルドでも引き取って貰えないそうで、捨て値で市場に出しているそうだ。
捨て値と言うだけあり本当に安い。
寒天にしか見えないそれを、試しに買ってみることにした。
食べ物しかドロップしないダンジョン産なら食べ物だろう。そして俺はそっくりの物を知っている。
となれば試してみるしかないよな!
少しだけ買おうと思うと、おまけで全部くれた。
え、買おうとした分よりおまけが多いんだが?!
どうせ買う人もいないからいいよいいよ持ってってと苦笑いの店員。
ま、まぁそういうならありがたく貰っとくかな!
さて、試してみるのに必要な材料も色々仕入れに行くかな!
俺は市場の中を必要な材料を求めてウロウロと彷徨うのだった。
◇◇◇
さて、今日は何食べようかな?
今日は市場探索で一日潰れちゃったな、楽しかったけど!
市場は本当に広くて、色々な物を売ってて見ていて飽きない。
今日は欲しいものもあったので、4箇所ある市場を全て回ったのだ。
いやぁ、マジで広い!さすが王都!
俺が王都に着いて最初に見つけた広場も、秋の収穫時期になると市場に早変わりするそうだ。
あんな広場があちこちにあって、夏の終わりから冬前までは出店で全て埋まるそうだ。王都に買い物に来る人もどんどん増えて来るらしく、毎日がお祭り騒ぎなんだとか。
今でもかなり人が多いが、どんな事になるのか楽しみだ。
そんな事を考えながらふわふわと歩いていると、ぐぅー〜〜〜っと凄い音がした。
なんだ?なんだ?なんの音だ?と、辺りを見回すと、行き交う人混みの中、少し顔を赤らめお腹を押えている少女がいた。
……もしかして、あの子の腹の虫か?
何人かが、進む足を緩め、辺りをみていたが、気づかない人も多かったようだ。
少女は、よかったバレてなさそうという顔で、ホッ息を吐き出すと、正面の店を羨ましげに眺めたあと、しょんぼりした様子で歩き出した。
何を見ていたのかと、少女の視線が止まっていた先を見ると、おお!マジか!
俺は見てしまった、その看板を……




