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商業ギルドと異世界のシチュー -2

さてさて、今日は何を食べに行こうかな……


空が赤く染まる頃、飲食店が立ち並ぶ通りをふわふわと歩いているところだ。

昼間はかなり気温も暑くなって来ているが、夕方になると暑さも少し落ち着いて、まだ過ごしやすい気候だ。


だが俺は暑い日も嫌いじゃないぜ!なんてったってビールが美味いからな!

あっちぃーと、服をパタパタさせながら冷蔵庫を開けてキンキンに冷えたビールを取り出す時の期待感、プシュッと缶のプルタブを開ける時の軽快な音、そして口の中に流れ込んで来るビールのヒヤッとした温度、シュワっと喉を刺激するあの爽快感、火照った身体を通り抜けて体に染み渡っていく快感……

いい、思い出しただけでもいい、想像しただけでヨダレが垂れそうだぜ!この世界(アルナイル)ではビールはまだ見かけてないけど、エールがあるからな!

早く飲みに行こう!!待ちきれないぜー!!


エールへの期待感に胸を躍らせながらふわふわ歩いていると、ふと戦闘職のような()で立ちのガタイのいい男に目が止まった。


皆が往来(おうらい)する中、ある店の前で(たたず)んでいる。


……何してんだ?入らないのか?


少し気になったので、男に近づいていって見ると、小さな皮袋(かわぶくろ)の中を眺めながらため息を吐いていた。


「はぁ、金がねぇ……」


何だ?貧乏なのか?


「……こんな事なら、武器の新調はもう少し先にすれば良かったかな……」


そう言いながら背中に携えている大きな大剣をチラリと見た。


あー、武器を新調したせいで金が無くなったのか!


「ここの店のシチューが美味いって聞いてきたのに、支払いが足りなかったら……値段が分かっている店に変えるか……?」


そう言いながら、目の前にある店を見た。



ほぉほぉ!ここの店のシチューが美味いんだな?!

よしよし、それなら心配すんな!

俺が代わりに満腹になるまで食べてきてやるからな!!!


俺は今日はこの男の身体を借りる事に決めると早速、体に入っていく。


……うん、上手く入れたみたいだな!


よし、美味いシチューをたらふく食うぞー!


店の名前はシチューとパンの店『琥珀(こはく)』。

シチューの食える店だとこの男が言っていたが、どんな物か楽しみだ!


俺は悠々と店の中に入っていくのだった。




店内に入りメニューを聞くと、ホーンラビットのシチューかツノトカゲのシチューが選べるようだ。

どちらも野菜もたっぷり入っていて美味しいんだとか。

それにパンが付いてくるそうだ。


どっちも食べたいが一気に頼むと冷めてしまうので、まずはホーンラビットのシチューを頼んだ。

それからもちろんエールもだ!

ついでに、酒を冷やすバイトをさせて貰えないか聞いたら、店主に確認してきてくれると、店員の女の子は厨房の方へ入っていった。


今日も良い席に座れたんだよな!

カウンターの厨房の中がよく見える席だ。

厨房への出入口近くなので、料理が届くのも早そうだ。


少し待っていると、料理と共に店主が厨房から顔を出した。

この店は女性の店主のようだ。

豪快に笑う口の大きな女性だった。


「酒を冷やしてくれるって?」


「はい、雇って貰えますか?」


「ええ、お願いするわ!今日は氷魔法が使える人が捕まらなくてねぇ、困ってたのよ!」


冷えたエールやワインが出せる日と、(ぬる)い物しか出せない日とでは、客の入りが違うのだそうだ。

もう皆すっかり冷えたエールの虜のようだ。


「ありがとうございます、飯食べながらより、ちゃんと働いた方がいい、ですかね?」

もう注文しちゃったけど、どうしようかと思い尋ねてみた。


「いや、そのままで構わないわ、出す前の酒を持ってくるから、ここで食べながら冷やしてもらえるかしら!」


「はい!」


ラッキーだ。ちゃんと中で働くんじゃなくて、食べながらで良いなんて!


んじゃ、早速と、並べられたエールやワインをどんどん冷やしていくが数が多い。


ちょ、シチュー食べる暇が無いじゃねぇか!


1杯飲んでから聞けばよかったかと若干後悔しながらも、俺の氷魔法の腕はかなり上がっており、以前とは比べ物にならない程ササッと小さい樽に入った酒をベストな温度にさせることが出来る。なので、かなりの量を頼まれたがあっという間に冷やし終えていった。



しばらく次々と並べられる酒を冷やしていたが……よし、やっと落ち着いたな、では早速シチューの方を、いただきます!と、目の前にあるのに食べられないお預け状態だった俺は、ワクワクしながらシチューに手を伸ばす。

スプーンでそっとシチューをすくい上げる。

熱々で出してくれていたシチューは、少し冷めていたが、かき混ぜると中はまだ熱々のようで湯気がふわっと立ち(のぼ)りいい匂いをさせた。

クリームシチューではなく、店名と同じ琥珀色(こはくいろ)のシチューだ。


その匂いに、美味(うま)そう……と生唾を飲み込むと、早速とばかりに、すくい上げたシチューの乗ったスプーンに口を近づけ、パクっと1口。


「うっめぇぇぇぇええ!!」


キャベツ、かぼちゃ、豆、玉ねぎ、人参等の野菜がたっぷり入っているからか、野菜の優しい甘さと、あっさりとしたそれでいて旨みもしっかり感じられるホーンラビットの肉、最っ高だぁぁ!!!

しっかり煮込まれ野菜はトロトロになっている。肉もしっかり煮込まれており、とても柔らかくホロホロだ。

味付けも野菜や肉の味を引き立てるようなあっさりとした味付けでとても美味い。

優しい味でいくらでも食べられそうだ。

それに2cm程にスライスされた黒いパン。


ガリッ……硬ったぁぁっ??!!!何だこれは?!

……こ、このパンは、ちょっと硬すぎるな……


あまりの硬さに驚いて、目をまん丸に見開きパンを見つめていると、店員の女の子がシチューに浸して柔らかくして食べるのだと笑いながら教えてくれた。


どうやらパンが硬いのは当たり前の事で、食べ方を知らない事に驚かれたようだ。

あまりに変な顔でパンを見ているので笑われたようだ。


そんなこと言われても、こんな硬ったいパンを食べたのは初めてなので仕方がない。


なんて言うか……ドイツパン、そうドイツパンをもっともーっと硬く、しわくしたような感じだ。硬い上に噛み切るのも一苦労だった。

(※しわい…噛み切りにくい、ほねがおれるという意味)


んー……シチューは美味いんだけど、このパンはなぁ……

パンは皿に残したまま、今度はツノトカゲのシチューを頼んだ。


すぐに運ばれて来たツノトカゲのシチュー。

こっちも美味そうだな……

うさぎも初めて食べたが美味かったし、トカゲも食ったことは無いが期待大だな……


硬いパンはさっさと横の皿に避けて、シチューへ手を伸ばす。

こちらの方がスープがトロリとしており、ホーンラビットのシチューよりも色が濃いようだ。

色が濃い=味が濃い。単純思考の俺は、ホーンラビットのシチューより濃い味を想像しながら、そっとすくったシチューを口に運ぶ。パクっと1口。


「ん……んん?!う、うっまぁぁぁい!!!」


なんだこれ、なんだこれ!マジで美味い、色が濃いから、味が濃いのかと思ったが、トロっとしていて味が深い。

それにこの肉!少しコラーゲン質な感じのするプルプルでトロトロなのに食べ応えのある肉。

ホーンラビットも美味かったけど、俺はこっちの方が好きかもしれないな。

うん、最高だ!


だが、ホーンラビットのシチューも美味い!とまたおかわりをする。

ツノトカゲのシチューとホーンラビットのシチュー交互に食べると同じような見た目なのに全く違う味わいで尚更食が進む。

シチューのおかわりをすると、必ず付いてくるこの硬いパン。

横に避けるのでパンが山盛りになってきた。


なんせこの男の体、いくらでも食える。ガタイが良いだけあって、かなりの大食漢のようだ。


酒を片手間に冷やしながら、美味いシチューを堪能し、肉の塊を頬張りエールを流し込む。

熱々のシチューで熱くなった口内をキンキンに冷えたビールが満たし冷やし、喉を流れていく。

うん、最高だ!無限に食べれるわ!


堪能する俺以上に他の客は、酒を飲むピッチも上がっているようだ。

みんなたらふく飲んで食って堪能したと笑顔で帰っていく。


だいぶ客足が引き、店内も空いた席が目立ってきた頃、俺は店主の女性に声をかけた。

今日手に入れたじゃがいもが食べたくて、茹でて貰えないかと頼むためだ。

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