5、商業ギルドと異世界のシチュー -1
今日はあっちぃなぁ〜!
最近は日に日に外の気温が上がっているように感じられる。
街行く人の服装も少しずつ薄着になってきているようだ。
この世界にも四季があるらしい。
そして俺が街に着いた時は春だったようだ。
どおりで過ごしやすい気候だと思ったぜ!
それが今はもう夏に差し掛かった頃のようだ。なんだかんだあっという間だったな……
それにしても、日の出ている時間が長くなってきたし、暑い!
そう、暑いんだよ!俺は霊体だろ?なのに暑さを感じるんだよ、まいるよな……
ということで、今日は室内が涼しい商業ギルドに避難している。
商業ギルドでは朝から色々なものの取引がされている。
なので、どれがどの位の価値があるのかの市場調査も兼ねている。
え?市場調査はもっと早くしとけって?
別にいいだろ、どうせまだ体も貰えてないしな。
体が手に入った時に、ぼったくられることなく取引ができるようになってれば、それでいいんだよ!
ということで、見学中だ。
機械での量産なんてされていない世界だから、物は全て手作りだ。
なので、どれもこれも結構な値段だな。
タバコもあるみたいだ。パイプを使ったり、何かの葉で包んだりして吸うようだ。これがなかなかいい値段で取引されていた。
後は石鹸、これも結構な値段だ。少し油臭い匂いのする石鹸だったが、石鹸があるのはありがたい。シャンプーやボディソープはまだ見かけてないが、あったらそっちの方が使い慣れててありがたいんだけどな。
塩や小麦粉なども商業ギルドが管理しているようで、取引が頻繁にされていた。
次元収納があるし、冒険者じゃなくて商人を目指すのも有りだな。
そんな事を考えながら見学していると、大量にじゃがいもを持ち込んだ人がいた。
「すみません、これ買い取って貰えますか?」
「はい、拝見します」
この世界の商取引は、この人みたいに商業ギルドに直接持ち込んで、商業ギルドに買い取ってもらう方法、直接商人に卸す方法、屋台や市場、店舗などでお客に直接売る方法が一般的なようだ。
ギルドに持ち込むと全て買い取って貰えはするが、仲介手数料を取られる上、他の売り方に比べ1つ当たりの値段が安くなってしまう。
直接売り手に卸す方法は、買い手に値段を交渉されることはあるが商業ギルドのように仲介手数料は取られない、ただ希望個数を揃えないといけないので、かなりの量を取引出来る物でなければならないようだ。
屋台や市場や店舗で売るなら、値段設定も自分で決められるし売上は全て利益になるが、店を出す場所を借りる必要があるので、場所代を払わないといけないようだ。
このじゃがいもを大量に持ってきたおじさんは、手数料を取られても商業ギルドで全てを買い取って貰えるのがいいと判断したようだ。
おお!新じゃがか?初夏だっけな?じゃがいもの収穫時期って……美味そうなじゃがいもだな……街中じゃ売ってるのを見かけなかったんだが、ちゃんとあったんだな!
「お待たせしました、こちらの品物ですが、残念ながらこの位の金額になってしまいますが……よろしいですか?」
「へ?こ、こんなに沢山あるのに、たったそんだけか?!」
「この芋は、食べて腹痛を起こす方が度々いらっしゃって人気がないんです……ギルドとしましても売れない物を高く買取ることは難しくて……」
「うぅ……わか、りました、それで、いいです……」
申し訳なさそうに言うギルドのお姉さん、悲しそうに頷くじゃがいもを持ってきたおじさん。
……この世界のじゃがいもって、腹痛を起こすのか?
じっとじゃがいもを見ていると、少し皮が緑になっている物も混ざっていた。
あぁ!これか!なんかじゃがいもの芽や緑の所は食ったらダメだって聞いたことあるな!
腹が痛くなった人は、多分こんなのとか、芽の部分を食べたんだな!
じゃがいもを見ている間に取引が終わったようで、おじさんはギルドを出ていき、残されたじゃがいもを受付のお姉さんが別の場所に運ぼうとしていた。
わ!ちょ、ちょっと待ってくれ!売れないなら俺が買う!!
そう叫んでも、俺の声が誰かに聞こえるはずもなく、体、体……と借りられそうな体を探す。
急いで辺りを見回すと、入口近くの椅子に座っている男性を見つけた。
あ!ちょっとだけ体借りますね!すぐ返すんで!
聞こえてはいないだろうが、一応声をかけて体に入った。
……うん、上手く入れたな!
「すみませーん!」
「え?はい?」
「その芋、俺に売って貰えますか?」
「え……えぇ?!これをですか?」
「ダメ……ですかね?」
「い、い、いえ、大丈夫ですが、何処かで売られるのには向きませんよ?」
「はい、大丈夫です」
美人な上に親切なお姉さんだな、商人の身体を借りたから何処かで売ると思ったんだろうな。
売れないかもしれないってのをちゃんと教えてくれるなんて、見た目もいいのに性格もいいな。
全部自分で食べる気満々の俺はご機嫌に、大きな木箱に2箱もあるじゃがいもを全て買い取った。
俺、じゃがいもはめちゃくちゃ好きなんだよな、じゃがバター、肉じゃが、ポテトサラダ、フライドポテト……こんなに美味いのにみんな食わないなんて勿体ねぇな!
まぁ、俺は料理人なんかじゃなくて、ただ食うのが好きなだけの一般人だからな、じゃがいもを布教して回る気はないけど、何処かで作ってもらうかしないと今は体がないからな……
どうしようかな……?
ついでに受付のお姉さんに、バター、牛乳、塩、小麦粉、卵、油など、市場じゃなかなか売っていない食料品を扱っていないか聞き、ある物は買い取ってから、おじさんの身体を元の場所に返しておいた。
そして、誰かが倉庫に買い取った品を持って行くまで待った。
かなり、待った。
朝は色々持ってくる人も多かったんだが、昼も過ぎると商業ギルド内はかなりガランとしていた。
そして何かを売りに来る人も粘って粘って待っていると、ようやく来たって感じだ。
こんなに待つなら、勝手に探した方が早かったかもしれないな……
俺は商業ギルドの倉庫が見たかったのだ。
じゃがいものように不遇な扱いを受けている美味い物がまだ眠っているかもしれないと思ったからだ。
ガラガラと台車を押しながら奥へ入っていくギルド職員の後を追い、進んでいくとそこにはかなりの大きさの倉庫があった。
え、ええー?!いや、マジか……ひっろぉ……
そのサイズはサッカーコート4面分はありそうな程のサイズだった。
屋根も着いており、空調設備が備えてある区画もあるようだ。
中には棚がいくつも並び、品物も大量に保管してあった。
すっげぇな……
驚きつつも置いてある物を端から順に確認していく。
空調設備が付いている箇所には、食料品が多く保管されていた。
見た事のない野菜?や果物?なんかも多くあった。
それから、他の場所には工芸品のような物や、食器類、馬車や屋台の骨組みなんかも置いてある。
こんな物まで保管するなら、この広さも必要か……
俺はそのデカい倉庫の中をふわふわと見て回り終わると、市場で見かけなかった物を、その辺を歩いていた人の身体を借りて商業ギルドで大量購入するのだった。




