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回復魔法と異世界の煮込み料理-3

もうすっかり冷めてしまったブラウンホーンブルの煮込みは綺麗に油の処理もされているようで、表面に脂が白く固まることも無く、冷めてもとても美味かった。

冷めても柔らかさは柔らかいままの煮込みを食べ、今度は自分で冷やし直したエールを飲む。

ぷはぁ!最高だ!


ちょっとトラブルはあったが、今日は来てよかったな……と、堪能していると、先程のトラブルを収めてくれた礼だと、店主が煮込みの皿を渡してくれた。

湯気が立ち登り、いい匂いのする熱々の皿だ。

店主は関係ないのに太っ腹だなと思いながら、礼をいいありがたく受け取った。


冷めても凄く美味かったと伝えると、気を良くした店主は今から明日の仕込みをするから見るか?と言ってくれた。


夜から次の日の仕込みをするなんて、かなり手が込んでるんだな……そりゃあんなに美味くなるわけだ!


店主が、スパスパとよく切れるデカい包丁で野菜を切り肉を切り、巨大な寸胴鍋に入れている。


あぁ、野菜も入ってたんだな!あの優しい味は野菜から出た旨みか……


その様子を見ながら、美味い煮込みとエールを食べていると、途中途中で何かを捨てている。


ん?何を捨ててんだ……?


……あれは……え?!ちょ、ちょ、ちょい、ちょい、


「ちょっと、待て!!!」


「うお?!ビックリするだろ、急に叫んで……どうしたんだ?」


店主は何事だ?と驚いた顔で尋ねてきた。


「それ、何を捨ててんだ?」


「あ?……ああ、これか?」


「そう、それ!」


「これは(すじ)だな」


「なんで(すじ)を捨ててんだよ!」


「は?なんでって……こんな硬いもん食えねぇだろ?」


こんな、こんな、じっくり煮込んでいる煮込み料理を作る店主が、(すじ)をすててるだとぉぉぉぉ?!


「いやいやいやいや、それが美味いのに!!!」


「……これがか?!」


俺は捨てられる予定だった筋部分の調理法を伝え、筋の煮込みを作ってもらうことにした。


俺が言う事に、怪訝(けげん)な顔をしながらも店主はどうせ捨てる予定だったものだしまぁそこまで言うなら……と筋の煮込みを作ってくれることになった。


店主に作り方を伝えていくが、どて焼きにするには材料があれやこれやと色々足りない……


仕方ないな……と、先日市場で買っていた食材を取り出して渡すと、収納魔法(アイテムボックス)が使えるのか?!と、かなり驚かれた。


収納魔法は使える人は稀なのだそうだ。


へぇ……と、話を聞きながらも、次々と取り出す食材に、困惑気味の店主。


ネギやゴマ、リンゴ、ニンニクと出していくと、何に使うんだ?と店主は変な顔をしていた。


(すじ)はどて焼きにして欲しかったが、肝心の味噌が無い。先日市場を見に行った時にも見つからなかったし、店主に聞いても店には無いと言うので、違う味付けを提案しようと思ったのだ。


まぁまぁ、いいから、いいから!と、筋をサッと下茹でしてから、食べやすいサイズに切り、ネギと生姜と一緒に煮て貰っている間にタレを作っていく。


醤油も見つからなかったので、代用の魚醤、味醂、蜂蜜とゴマとすりおろしたリンゴとニンニクと生姜っと!


ぺろっと混ぜたタレを舐めてみると、「うっま!!うん、最高だわ!」


「なぁ、変なもん混ぜてたが大丈夫なのか……?それがタレか?」


あんまりな物言いに、店主にも味見をしてもらうと、

「なぁーー?!美味い、だと?!何だこりゃぁ!?あんな変なもんを色々混ぜて、こんなに美味いなんて信じられん!!」と、目を見張っていた。


うんうん!そうだろ、そうだろ!美味いだろ!


俺はその反応を見て、したり顔だ。

美味いのも当たり前だ、日本では嫌いな人がいないであろう焼肉のタレのレシピだからな!


どて焼きのタレが作れたら1番良かったのだが、肝心の味噌が無いので、代わりに思いついたのが焼肉のタレだった。

焼肉のタレ、それはどんな人の胃袋もその魅惑の香りで掴んでしまう麻薬のような究極のタレ……これさえつければあら不思議、どんなものでもたちまち美味くなってしまう魔法の調味料だ!すじ煮込みの味付けにもバッチリ合うはずだ!

市場で買い物しといて良かったぜ!


え?お前幽霊だろ?どうやって買ったのかって?

ふはは、その辺の通行人の体をチョロっと借りてだな……だ、大丈夫だ!支払った金は自分で稼いだものだし、買ったものはすぐに次元収納(ストレージ)に収納したし、借りた体も数分で返したからな!

問題ない!……たぶん


仕込みをしている間、グツグツと煮続けること3時間ほど、様子を見てもらうとかなり柔らかくなっているようだ。

牛すじなら1時間も煮ればだいぶ柔らかくなるのだが、そこはさすが異世界の魔物、ブラウンホーンブル、1時間くらいじゃ、かったいままだったわ……

それで納得だ、1時間煮ても2時間煮ても柔らかくならないなら、調理するのも諦めるだろう……


店主もビックリしていた。

筋が柔らかくなっているのを初めて見たそうだ。


とりあえず、だいぶ柔らかくなってきたなら、もう少し煮込めばどて煮のようにプルプルの(すじ)が完成するだろう!


先程混ぜ合わせたタレを合わせて、煮詰まるまで煮込んでいってもらう。


後は俺が何か言うことは無いし、出来上がるのを待つだけだな!


あー、楽しみだ!


店主もかなり出来上がりが楽しみなようで、鍋の方をチラチラと見て、ソワソワしながら明日の仕込みを続けている。


俺が邪魔しちゃったからな、仕込みがまだ終わってないようだ。


店内はもうだいぶ人が入れ代わり立ち代わり、食事とお酒を楽しんで帰り、残っている人もまばらな上、酔いつぶれている人も多い。


明日も仕事の人はそろそろ帰って休まなくては、朝起きれないだろう。


この体を借りてるおじさんも、そろそろ体を返した方がいいのだろうが、返してしまうともうすぐ完成のすじ煮込みを俺が食べられない……すみません今日だけなんで、そう心の中で謝り、完成を楽しみに待ちながら鍋を眺めるのだった。

蓋されてるから、中は見えないんだけどな、ハハ……




店主と世間話をしながら、さらに煮込むこと2時間程経っただろうか?


「そろそろ様子を見てみるか?」


店主がそう言い、鍋の蓋を開けた。


ふわっと広がる湯気と共に食欲をそそるいい匂いが店内に広がった。


うぉぉぉ!すげぇいい匂い!ッ……たまらん……


小皿に少し入れて渡してくれたので、それをスプーンですくい上げる。


白く硬そうな見た目が、しっかり煮込まれ透明感のある見た目に変わっている。


大きな口を開けてパクっと1口。

もぐもぐと噛むとぷりぷりとした弾力もありつつ、とろりととろけそうなプルプル感もある。


コレ!これこれこれ!


「うっめぇぇぇぇええええ!!!」


噛めば噛むほど、(すじ)からなんともいえない旨みが口の中に広がり、それがタレと相まって、その相乗効果は凄まじく、美味い!

ああ、最高だ!


店主も、


「うっまぁぁあぁい!!!美味いぞ!何だこの柔らかさは!美味すぎる!お、俺は、こんな……こんな……こんな美味いものを毎日捨ててたのかぁぁぁぁぁ……」


美味いと感動し、驚いた後、顔色が悪くなり、今にも死にそうな顔になっている……


大丈夫か……?


まぁ、この美味いものを捨ててたと思うと、あの絶望感も分からなくは無いな……


俺はエールをおかわりして、すじ煮込みを皿に山盛り盛ってもらい、美味い!美味い!最高だ!と何時間も完成するのを待った甲斐があったと、心ゆくまで堪能するのだった。


ああ、余談だが、店主から、すじ煮込みを店で出させてくれと言われたのは言うまでもない。

本当はもっとこうしたかったんだが、使いたかった調味料がなくてな……と俺がぼやくと、さらに改良を重ね、完璧な物に仕上げてくれると張り切っていたのでその仕上がりが楽しみだ。

また暫くしたら、食べに来てみようと思う。

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