1.転生
これで何社目だろう。
もう数えるのが嫌になるくない落ちている。
お悔やみメールに目を通し、今日2杯目の酒を煽る。元々は嗜む程度にしか飲まなかった酒もいつからか毎日のように飲んでいる。
2杯目の酒を飲み干したので3杯目を注ごうと安酒のボトルを手に取ったが、明日も朝から面接があると思い留まる。代わりに水を入れ、ベランダに出る。
上着も羽織らずに出ると2月の体を指すような寒さに体を震わせる。
すっかりと暗くなった空を見上げる。白い息が空を漂う。
「はぁ、何やってんだろうな、俺」
何度も繰り返した自問自答の答えは出ない。
でも、それでいい。別に答えが欲しくて呟いたわけではないから。
「寒い。そろそろ入るか」
5分もせずに部屋に戻り、布団にくるまる。今ハマっているアプリゲームの周年記念が迫っているため少しでも節約しなければいけないので暖房やコタツを使う余裕がない。
パソコンを起動し、最近の日課になっているネット小説のあさりをする。元々は紙派で、どんなジャンルでも好きだったが、最近は色々あって気軽に読める電子書籍やウェブ小説ばかりだ。ときどきではあるが二次創作を読むこともある。
そういえば、最近異世界転生・転移系の小説が目につくようになってきた気がする。昔からその手のジャンルはそれなりの数があったが、今ほど目立った位置にはなかった。最近は現実が嫌すぎて無意識のうちに異世界系のジャンルを読んでいるような気がするのでそのせいもあるかもしれないが、コミカライズやアニメ化も異世界系が多いので流行っているのだろう。人生が一番楽しかった頃はハーレムラブコメが流行っていたのに。時代の流れを感じる。
ちなみに、俺は今百合にハマっている。可愛い女の子の絡みを見ているだけで、疲れきった心が癒される。
俺がよく利用しているサイトで日間総合1位の小説を読む。数話ほど掲載されており、交通事故で死亡した主人公が異世界で魔法の才能に目覚めたところで話が終わっている。
今回の異世界転生は自殺。生きることが辛くなった主人公が有名な自殺スポットで飛び降り自殺をしたことで異世界で生まれ変わった。
トラックに轢かれてではないことに少し好印象を持った。別にトラ転が悪いわけではないが、直近の数冊がテンプレかのように全てトラ転だったので、別の方法を用意してもらいたかった。まあ、転生前の死に方なんて話には一切関係ないんだけどね。通り魔にナイフで刺されて死んだから転生したら先端恐怖症や刃物みたら震えが止まらないなどの設定があれば別だけど、今のところそういった設定のある話を見たことがないから本当に死に方なんてどうでもいいんだよね。
それにしてもーー
「ワンチャンダイブ、か。そういえば近くにいい感じの場所があったよな」
別に、自殺するつもりなんて全くなかった。なんとなく気になったから。少し体を動かしたくなったから。そんな理由だと思う。
ダウンジャケットを羽織り、ポケットに財布と携帯を入れて外に出る。地図アプリで道を調べながら目的の場所へ向かう。
30分ほど歩いたところで目的地にたどり着く。人通りは少なく、景色が良い。
「この景色だけでもここにきた甲斐があるな。穴場っぽいからまた来よう」
息で指先を温めながら景色を見ていると何か温かい飲み物を買ってくればよかったと後悔する。
ブブッ
十分に夜景を楽しんだのでそろそろ帰ろうかと思ったところで携帯に通知が入る。
逆転採用の連絡かなとありもしない期待を抱きつつ携帯をひらく。画面には先ほどブックマークした小説が投稿されたことを告げる通知が一つ入っているだけだった。
「まあそうだよな」
少しがっかりしつつも、当然の結果を受け入れサイトを開く。どうせならここで読んでから帰ろうと思ったのだ。
更新された話は主人公がピンチになっている可愛い女の子を助けてその女の子に惚れられるというなんともありがちな話だった。何度も読んだテンプレートだが、何故かその主人公が羨ましく感じた。
人生も23年目で恋人の一人もできたことがなく、息子の卒業もまだできそうにない。おまけに就職もできそうにない。そんな人生崖っぷちだから異世界に行っただけで簡単に可愛い女の子に惚れられる主人公を羨ましく思うのだろうか。
しかし、今までだって条件的には同じはずなのにただの一度だってそんな感情を抱いたことはない。だって、所詮それは物語の話で、自分とは無関係なことなのだから。
でも何故か、このときだけは羨ましく感じた。
だからだろうか。気が付けば足が動いていた。
制御下から外れた足は勝手に動き、地面から離れたところでその動きを止める。
重力に従い落下する。
落ちているな。落ちているときの感想はそれだけだった。
意外にも冷静だった。もっとパニックになると思っていた。そういえば、30メートルから60キロのものが自由落下したときのエネルギーはどれくらいだったかな。受験期にはすぐに答えを出せたはずなのに今では公式すら思い出せない。
それでも一つだけわかることがある。このまま頭から落ちたら死ぬってこと。
数秒の落下ののち地面に激突する。激痛を感じる間も無く意識が飛んだ。
気がつくと知らない天井が見えた。予想に反して生きていたみたいだ。喜ぶべきことなのだろうが、これからのことを考えると残念に思う。
とりあえずナースコールでもしようかと腕を伸ばそうとするが思うように動かすことができない。単なる筋力不足か、それとも後遺症による麻痺か。理由は分からないが、自由が利かない。まあ、動いたところでナースコールの場所が分からないので無様を晒すことになるのだけど。
そう、俺は小学校に入学するよりも前に喘息で一日入院したことがあるだけで、それ以降はただの一度も入院するようなことはないのだ。つまらない俺の人生でそれが唯一誇れることだと思う。その入院の記憶も無く、親に聞かされただけなので実質0回。
動くことができないので声を出そうにもまるで舌足らずな赤子のように上手く発音できない。諦めて寝ようとしたとき一人の女性が姿を見せた。
比較対象がないので分かりにくいが背は高く170は超えているように見える。俺より高い。別に悔しくないが。
金髪に灰色の瞳。服もゆったりとした部屋着のようで、言い方は悪いかもしれないが、医者や看護師っぽくない。かと言って自分の母親かとも言えない。母親には悪いが、俺の母はこんなに美人ではないし、何より、今年でちょうど俺の倍の年齢になるのでここまで若くない。女性の年齢を推測するのは難しいがどう見てもこの女性は20歳前後にしか見えない。この見た目で40や50代ならそれはもう詐欺だ。
女性が俺のそばまだやってきて俺の頭を優しく撫でる。
見た目以上に大きな手だな。頭がすっぽりと覆われている。
まるで小さな子供をあやす様に俺を撫でた女性はおもむろに服をたくし上げた。ゆったりとした服の上からでも分かってはいたが、大きな胸に目が釘付けになる。別に胸派であるわけではないが、引力でも働いているかの様に視線が引き寄せられる。
自身の胸を晒した女性が俺を軽々と抱き上げる。
乳頭の位置が顔にくるまで抱き上げられたためピンクの綺麗な乳首が目の前に迫る。それにしても、女性の乳首が出ている作品が18禁に指定される理由がようやくわかった。
そして、抱き上げられたことで自分のサイズがはっきりと分かった。
女性の両腕ですっぽりと覆われるだけのサイズ。つまり、赤子と同じくらいの大きさ。
これはまさか、そういうことなのだろうか。
心のどこか片隅では異世界でなくてもいいから転生して人生やり直したいと思っていた。
でも本当に転生するなんて思ってもいなかった。あのときだって、別に自殺するつもりはなかったし。結果として転生してしまったけど、あれ? ということはもしかして、この女性は俺の母親ってこと?
ヤバい。どうしよう。こんな美人が母親なのは嬉しいが、どう見ても日本人じゃない。俺は英語含め、外国語の成績が壊滅的なのだ。使われている言語は分からないが、日本語でない可能性の方が高い。
いや、言葉の不安ばかりしていても仕方がない。俺の中身は大人だけど子供は言語を覚えるのが早いとどこかで聞いたことがあるし、この体は物覚えがいいかもしれない。とにかく未来の俺に託すしかない。
それよりも今問題なのはこれから授乳プレイが始まるということだ。
美人の胸を吸うことができるのは嬉しいことかもしれないが、俺はまだ通常プレイすら経験したことがないのだ。いきなり特殊プレイをさせられるのはたまったものじゃない。
しかし、ムリだとは言ってもいられない。現に、今まで意識していなかったので気がつかなかったが、空腹がひどい。泣きそうになるほどお腹が空いている。
これは食事。これは食事。これは食事。これは食事。これは食事。これは食事。これは食事。これは食事。これは食事。これは食事。これは食事。これは食事。これは食事。これは食事。
何度も心の中で唱えて目の前にある胸に吸い付く。
すぐに甘い液体が出てきたので飲み込んでいく。両胸十数分ずつ飲んだところで満腹になる。
腹が満ちると自然と眠たくなるもので、少しずつ瞼が重くなり意識も遠のいていく。
先ほどまで寝ていた場所に戻される。
頭を撫でられたことによって俺は眠りについた。最後に女性が何かを言った様な気がしたが、俺には聞き取ることができなかった。
何とも言えない不快感と共に目を覚ます。
股の辺りが湿っぽいのでおそらく漏らしたのだろう。この歳になってと思うが、反面、この体はいうことの聞かない子供なので仕方がないと思っている自分もいる。割合的には羞恥が優っているので何とも言えない気持ちになる。
これは、泣いて知らせないといけないよな。
そうは思っても、泣き方なんて覚えていない。感動的なアニメを見て泣いてしまうことは多々あるが、今しなければいけないような声に出して泣くという行為はもう10年以上していない。
とりあえず音だけでも真似て叫ぶ。
「うーあーあうー」
それほど激しく声に出したわけではないが、すぐに先ほどの女性がやってきた。
女性は声を出している俺を見て少し考えるそぶりを見せると直ぐに何かを探しに戻った。しばらくして替えを持ってくる。
そこから先は地獄だった。
自分と同じくらいの歳の美女におむつを変えられる。想像しただけで恥ずかしさで死にそうになるのに、それを実際にされる。神なんて信じていないのに今直ぐ殺してくれと神に祈ってしまった。
全く、性癖が歪んだらどうしてくれるんだ。
ブックマークと感想お願いします
良ければ、下にある☆も押してください




