魔法使い
本日三回目の更新です!
前話見てない方はご注意ください!
魔法使い。
その名の通り、魔法を使う者。
物語の中ではありふれた存在だが、現実ではそうでは無い。
まさに伝説。魔術師ならば誰もが一度は夢見てその頂きを目指す。
しかしその壁は厚く、とてつもなく高い。
歳を重ねるごとに夢は色褪せ、過去となる。そこに例外はない。
カナタが言うにはそんな魔法使いが地球には一人実在しているらしい。
だが、俺が調べた限りレスティナには伝説が残っているだけで実在の証拠は無かった。
レニウスと名乗った天使はそんな伝説上の存在だ。
俄には信じがたいが、この場にレニウスの言葉を疑うものは居ないだろう。
かといって驚きがなかったわけではない。
全員が驚きのあまり硬直している。言葉を理解するのに時間を要している様子だ。
ただ、俺とサナだけはその驚きが少ない。
これは単純に生粋の魔術師ではないからだろう。
あの地獄さえみなければ、俺は今頃普通の学生をしているはずだ。サナも然り。
よって凄いのはわかるが、真にその凄さを理解できていない。
「魔法……使い……?」
ようやく理解できたのか、カナタが掠れた声で呟いた。
重そうに身体を起こし、シルの背から降りる。そして地面に膝を突き、首を垂れた。
そんなカナタにレニウスは訝しげな視線を向ける。
「レニウス様。……一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「一之瀬カナタ。地球の魔術師か」
「ご存知とは……光栄です」
「ここにいるみんなは知っているよ。なにせ勇者パーティだからね。けどそうだな……」
レニウスは腕を組んで考える。まるまる一分ほど沈黙した後、口を開いた。
「まあいいだろう。…………でも、先に私の質問に答えてくれるかな?」
「なんなりと」
カナタは深く頭を下げた。その頭上にレニウスが問いかける。
「地球に魔法使いはいるかい?」
「始祖様の事でしょうか?」
「始祖様……? …………あぁそういうことか。十中八九、その始祖とやらがライゼスだろうね。姿を見たことは?」
「いえ、声をお聞きしたことしかありません」
「そうか。感謝する。約束通り一つだけ質問に答えよう」
「では……」
カナタが顔を上げる。
そしてレニウスの目を見てしっかりと言った。
「……魔法使いになる方法を教えてください」
「あぁ……やっぱりそれか」
カナタの問いにレニウスは困ったような表情を見せた。
「答えてもいいが、おそらくキミは納得しないと思う。それでもいいかい?」
「はい」
「ならば答えよう。……わからない、だ」
「わからない?」
カナタは予想外の答えに首を傾げていた。
魔法使いのレニウスが魔法使いになる方法をわからないと言う。そんな事がありえるのだろうか。
「正確には個人によって違うと言った方が正しいかな。だからわからない……だ。まあ質問には答えてもらったし、一つアドバイスをしよう」
レニウスの言葉にカナタのみならず、ラナやカノンまでもが喉を鳴らした。
「一を極めなさい」
そう言ったレニウスは迷える子羊を導く神父のようだった。流石は天使だ。神々しい。
「一を……極める?」
「そこから先は自分で辿り着かないと意味がない」
「わかりました。ありがとうございます」
「……期待しているよ」
レニウスは踵を返した。
その背中にカナタは頭を下げる。ラナやカノンもそれに続いた。
「それじゃ私は失礼する」
浮遊していたレニウスが大穴に向けて上昇していく。
……無事に切り抜けられたな。
俺は安堵の息を吐く。
結果としてレニウスは敵ではなかった。味方ではないのかもしれないが、今はそれで十分だ。
……疲れたな。
終わりだと認識すると、一気に疲れが押し寄せてきた。
考えることは山ほどある。
だけどそれは後だ。帰ってから考えよう。
俺はラナの手を取った。
「さあ、帰ろう――」
その時、耳に葉擦れの音が聞こえた。
この場所に木なんてない。
不審に思いながら音のした方向、正面へと目を向けた。
暴走した俺が開けた壁の大穴。その前にソレはあった。
木だ。
ただの木ではない。立派な大樹だ。
しかし、立派なのはその大きさだけ。幾重にも伸びた枝の先には一枚の葉も無く、無惨にも枯れている。
俺は瞬時に悟った。
……これは、こいつは!
奈落の森で遭遇した枯れ木だ。
まだ終わっていない。
ご覧いただきありがとうございます!
「続き読みたい!」「面白い!」と思ってくれた方は
下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いします!
面白いと思っていただけたら星5つ、つまらなかったら星1つと素直な気持ちで大丈夫です!
ブックマークも頂けたら嬉しいです!
何卒よろしくお願いいたします。




