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再誕

本日三度目の更新です!

前を読んでない方はご注意ください!

 ――悪魔が再誕した。


 浅黒い肌に、紅い瞳。身体中に走っている赤黒い(ライン)。顔はレイそのものだが、纏う雰囲気が刺々しく荒々しい。

 封印のあった胸の中心には底の見えない穴があり、絶えず闇を生み出している。


 生み出された闇は空中に漂い、悪魔を取り巻く。

 上半身はなにも身につけておらず、下半身を覆っているのは袴のように変化した闇だ。


 加えて、背には漆黒の翼があった。身体を包み込めそうなほどに巨大な大翼だ。極め付けは額の二本角。禍々しくも雄々しいその姿は魔王よりも魔王然としている。


 これではどちらが魔王かわからない。

 (はた)からみれば魔王(レイ)を討ちにきた勇者(騎士)の構図にも見える。

 それほどまでに悪魔(レイ)の姿は邪悪だった。


 ……なに?


 ラナだけが気付いていた。姿が変わっている事に。

 心臓が締め付けられるような、妙な胸騒ぎをラナは感じた。この変化は決して良いモノでは無い。

 直感がそう告げていた。


 ――バリン。


 魔王が自身を戒める拘束を破壊する。そのまま音もなく地面に降り立った。

 回復魔術を使ったのか傷はすでに塞がっている。


 悪魔が魔王を見据えた。

 ラナ達の存在などまるで意識していないのか、双方は一瞥すらしない。


 ……よかった。意識誘導は成功してる。


 不安は募るが、ラナはひとまず胸を撫で下ろした。前提条件はクリアだ。


 ラナの視線の先で悪魔と魔王が対峙する。互いが互いを見据えて動かない。しかし、殺意だけは高まっていく。

 張り詰めた空気はまさに一触即発だ。

 なにか少しのキッカケがあれば弾けてしまうだろう。


 ラナはすぐにでも封印の構築に取り掛かりたかったが、二人が纏う風格に圧倒されていた。

 喉が渇き、筋肉が硬直する。

 少しでも動けば、こちらに意識が向くのでは無いかという恐怖があった。


 ……これを封印する?


 ラナの額から冷や汗が流れる。

 昔のレイならば可能だっただろう。なにせ一度は自らの手で封印している。

 だけど今のレイを封印できるとは、とてもではないが思えなかった。それほどまでに昔とは隔絶した力をレイは持っている。


 ……でも、レイが信じてくれたんだ……!


 ラナは拳を強く握りしめ、己を叱咤した。


 ……やるしかない!!!


 恐怖を振り払い、小声で呟く。


「みんな下がって」


 ここに居ては戦闘に巻き込まれる。まずは安全の確保が最優先だ。


 念のため思考加速を発動し、二人の対角線上に入らないように少しずつ後退する。その間も悪魔と魔王は動かなかった。


 ……よし。


 壁際まで移動したラナは心の中で小さく呟くと、レイが描き出した紋様を魔力の光で再現した。

 

 この紋様は一種の暗号だ。

 封印や刻印のように何かに魔術を刻みつける場合、そのまま魔術式を記述してしまうと不都合がある。

 第三者が干渉できる余地が残ってしまうのだ。つまりハッキングである。それを防ぐための技術が暗号化だ。

 

 暗号化というものは術者ごとに決まったルールがある。

 だからラナは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 あり得ない事だ。

 なにせラナはこの紋様を完璧には理解できていない。

 そして、理解できないものは作れない。

 

 だがその疑問はひとまず置いておく。


 ……あとで絶対に説明してもらうんだから!


 ラナは一つずつ丁寧に暗号を解いていく。

 紋様の意味するところに適切な式を代入し、魔術式を組み立てる。わからないところはひとまず置いておく。全て解けば何かわかると信じて。

 結果、とてつもなく巨大な多重立体魔術式が出来上がった。


 ……なに……これ。


 予想はしていた。だがそれでもなお、ラナは戦慄を禁じ得なかった。

 これほど緻密で繊細な魔術式は見たことがない。どこかがほんの少しズレるだけで破綻する。そんな、奇跡的なバランスの上に成り立っている魔術式だ。


 ……解るのはおよそ七割。


 残りの三割がラナには理解できなかった。そのため、解けていない。結局、他の全てを解いてもわからなかった。

 おそらくこの部分に暗号化を施したのは自分ではない。

 

 ラナは歯噛みした。このままでは確実に失敗する。

 

 魔術というものは基本的に魔術式に魔力を流すだけで成立する。しかしそれは通常の魔術式だけだ。立体魔術式は訳が違う。

 魔力を流す順番やタイミングも正確でなければならない。暗号化されたままでは不可能だ。


「……何か……方法は」


 途方に暮れていた時、隣にいたカノンがポツリと言葉を溢した。


「……これ……私の」


 ラナはカノンに視線を向けた。


「カノン……?」


 ラナが理解できなかった箇所にカノンが手を伸ばし触れた。そこにカノンが魔術式を代入すると()()()()


「……っ!? カノン! わかるの!?」

「……うん。……たぶん」


 光明が見えた。

 

「この部分の解析を頼める?」

「……わかった! ……やってみる!」


 カノンがコクンと小さく頷くと、虚空から二十もの鴉を召喚した。

 現れ出でた鴉は悪魔と魔王の目を引かないように、ひっそりとカノンの身体や周囲に降り立つ。

 続けてカノンが呼びかけた。


「……おいで、シル」


 呼びかけに応え、銀狼が現れる。カノンの周りを歩くと隣にいたカナタの足に寄り添うようにして座った。


「……召喚魔術」

 

 ラナは目を見開いた。

 レイから聞いてはいた。カノンは召喚魔術を使うと。

 疑っていたわけではないが実際目にすると、どれだけ常識ハズレかがわかる。

 カノンがこのまま成長していけば、一国の魔術師団を一人で相手をすることも可能だ。


 ……絶対に敵に回しちゃダメだ。


 それは王女としての思考。カノンを敵に回せば最悪、国が滅びる。カノンはそれだけの潜在能力を秘めていた。

 だが今は味方だ。心強い事この上ない。


 ……私も始めないと!


 暗号を解いたとして出来上がるのは闇を封じるための魔術式だ。


 やらなければならない事は二つ。

 この立体魔術式の正しい発動手順を導き出す事。

 そして魔王を封印するために改良を加える事。

 どちらも凄まじく難易度が高い。だけどやるしかないのだ。

 ラナは魔術式に意識を向けた。


 その時、唐突に魔王が動いた。

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