誓い
17時頃に前話更新してます!
読んでない方は一度戻って頂けると幸いです!
瞬間、視界が開けた。目の前に魔王の首がある。
因果逆算。
斬るのならば、此処に居なければならない。だから居る。
――取った。
漆黒の刀が魔王の首を捉えた。
先程は阻まれた刃が、なんの抵抗も無く通る。斬った感触がひどく希薄だった。たがしっかりと斬った。
血飛沫を上げながら、首が飛んでいく。
そして地面に落ちる前に灰となって消えた。身体の方もボロボロと崩れていく。
……勝った。
それを見て、俺は崩れ落ちた。
身体を支えることすら出来ずにうつ伏せに倒れる。
文字通り、指一本動かせない。唯一動かせるのは眼球だけだ。見えるのは地面だけ。その地面にも血溜まりが広がっていく。
大事な物が零れ落ちている感覚がする。
……これは……まずいな。
死に際から無理をしすぎた。もはや闇を操る事すらできない。それは再生ができないことを意味する。
「レイ!」
視界が霞んでいく中、気配でラナが近くに来たのがわかった。
……ごめん。
そう言ったはずが声に出なかった。代わりに大量の血が口から溢れた。
「カ⬛︎タ! 手遅⬛︎にな⬛︎前にレ⬛︎⬛︎封⬛︎を⬛︎く! そ⬛︎ ⬛︎たら⬛︎生する⬛︎ら! 暴⬛︎する⬛︎思うか⬛︎⬛︎えて!」
「わか⬛︎た!」
「ア⬛︎リス! す⬛︎に私⬛︎カナタに⬛︎復を!」
「う⬛︎!」
なにやら大声でラナが指示を出している。みんなが集まってきたのだろうか。
……ごめん。俺はもう……。
「聞⬛︎て、⬛︎イ! 封印⬛︎解――」
頭が働かない。思考に靄がかかっている。ラナの言っていることが理解できない。
「封⬛︎を解⬛︎か⬛︎――」
ラナが何かを言った後、うつ伏せから仰向けにさせられたのがわかった。もはや目は見えず、視界は暗闇に閉ざされている。
だけど、胸の中心に手を当てられた事はわかった。あの時と同じ、とても暖かい魔力が流れ込んできたから。
そして次の瞬間、俺は殺戮衝動に呑まれた。
「レイ! レイ!」
重たい瞼をゆっくりと開ける。すると目の前にラナの顔があった。このアングルは知っている。俺はラナに膝枕をされているのだ。
そう気付いた途端、顔が赤くなった。
恥ずかしくて起きようとしたが、身体が動かない。まるで金縛りにでもあったみたいだ。
「……え? ……どういう……状況――」
掠れた声が出た。その瞬間に全てを思い出した。
俺は、魔王との戦いで致命傷を負ったのだ。
「……あ……れ? 生き……てる?」
「よかったぁ! よかったよぉ!!!」
ラナが俺の頭を抱え込むように抱き締め、涙を流している。
「……心配……かけて…………ごめん」
「……ホントだよ。……ばか」
震える声でラナが言った。
俺も抱き締め返したかったが、腕すら動かせずに断念した。代わりにすこしでも近づこうと頬を寄せる。
唯一動かせる目で周りを見ると仲間たちが集まっていた。
みんな大きな怪我は無さそうだ。カナタも服はボロボロになっていたが、外傷は特に見当たらない。アイリスの回復魔術のおかげだろう。
「カナ……タ。なにが……あった?」
俺の傷は確実に致命傷だった。
何度も死んだ俺だからこそわかる。あそこから助かる道はない。
「その封印だよ。全部解除したんだ。そんでまた封印」
「あー……理解した」
要は初めてバケモノの肉を喰らった時と同じ現象だ。
あの時、俺は真っ二つだった。そこから回復したのだから、あの致命傷から再生できても不思議ではない。
……文字通りバケモノだな。
内心で自嘲が漏れる。
「暴走はしなかったか?」
「それはみんなで抑え込んださ」
やはり暴走はしたらしい。手間をかけさせた。
「……わるい。……ありがとう……みんな」
お礼を言うとみんなが頷いてくれる。
「ラナも……ありがとな」
「うん……!」
ラナは鼻を啜りながら頷いた。
頭を撫でたい衝動に駆られるが、やはり身体は動かなかった。
……とはいえ、みんな無事でよかった。
誰一人欠けること無く魔王を倒せた。これで本当にラナを救い出せた。
誓いは果たされたのだ。
……本当に感謝だな。
安心したら瞼が重くなってきた。
「レイ。今は休め。あとは任せろ」
「……わるい……な」
俺の意識はそこで落ちた。
ご覧いただきありがとうございます!
次回で完結になります!
明日の朝7時頃に更新します!
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