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行き止まり

「レイ! 行き止まり!」


 再度襲ってきた白大蛇を両断しながら前を向く。サナの言う通り目の前には行き止まりの壁があった。

 遅かれ早かれこうなる事は予想していた。

 いくら迷路とはいっても必ず行き止まりはある。地図にも書いてあった。


 ……できればもう少し減らしときたかったが……。


 後ろを見れば、赤く光る魔物の目が無数にある。

 もう何体倒したのかわからないが、迫る魔物は少しも減っていない。減るどころかむしろ増えている。

 撤退中に他の冒険者を巻き込まなかっただけ良かったと思うべきだろう。

 流石に庇いながら戦う余裕はない。


「選べる道はない! ここで殲滅する! サナ! 討ち漏らしは頼んだ! カノンとウォーデンはその援護を! アイリスは必要に応じて支援してくれ!」

「レイとカナタは!?」

「俺たちで前線を張る。……第五封印解除!」


 殺戮衝動をねじ伏せ、冥刀を作り出す。


「カナタ。ゲームをしよう」


 笑いかけるとカナタは悪い笑みを浮かべた。昔、イタズラを考えていた時と同じ顔だ。きっと俺も似たような表情をしているのだろう。


「うわぁ。その顔、私嫌いだなぁ」


 サナが若干引いている。自分も嬉々として参加していたくせに何を言っているのやら。


「いいぜ。ルールは?」

「ルールなんて単純だ。どっちがより多く殺せるか」

「そりゃシンプルだな。乗った。合図は頼むぜ?」

「どデカいのをかましてやるよ」


 冥刀を下段に構える。闇が収束し溢れ出す。


「第七偽剣、覇道」


 黒が洞窟を満たし、魔物を片っ端から消し飛ばした。


「第五封印再起動」


 ふぅと大きく息をつき、殺戮衝動を吐き出す。

 揺れる視界に耐えながら前を見る。第七偽剣(覇道)で吹き飛ばしたばかりなのに、赤く光る眼が山ほどある。

 分かれ道から合流したのだろう。


「……やるか! スタートだ!」


 両手に黒刀を作り出し縮地を使う。目指すは魔物の最前列。

 同時に背後から雷鳴が轟いた。縦横無尽に黄色い軌跡が疾る。雷鳴が響く毎に、魔物の首が飛ぶ。


 カナタが天井の木を足場にして着地、刀に雷が集まっていく。


雷覇(らいは)!」


 放射状に広がった雷撃が魔物を焼きながら爆発を引き起こした。

 雷鳴鬼の名は伊達ではない。その戦いぶりはまさに鬼神だ。


「速度では敵わないな」


 雷に速度で勝とうとするなんて無謀だ。だから俺は数で勝負する。


 目の前には蛇人間。

 名前は忘れたが、S級の魔物だ。だが、名前すら覚えていないのだから特筆すべき能力はない。

 ソイツが魔術式を記述した手のひらをこちらに向ける。

 

 俺は魔術式の中心に黒刀を突き込み、そのまま額を貫いた。

 黒刀を九十度捻り、右から来ていた魔物の首を狩る。

 そして左手の黒刀を頭上に掲げる。

 

 天井から生えている木々の間に闇を広げていく。その間に襲いかかってきた敵は、全て右の黒刀の餌食となった。

 天井を闇が満たしていく。十分に広がった後、全てを黒刀に変えた。

 第四封印で作り出せる黒刀は千本。手に持つ二刀を除いてもその数は膨大だ。


「カナタ。当たるなよ」

「問題ない。そのままやれ」


 掲げた左手を指揮棒のように振り下ろすと、黒刀が雨のように降り注いだ。

 隙間もないほどに押し寄せてきた魔物が断末魔を上げて絶命していく。

 運良く当たらなかった魔物も突き立つ黒刀の間を縫った閃光に首が飛ぶ。

 出来上がったのは死体の山だ。

 俺とカナタは吼える。


「「次!」」




 どれほど戦っただろう。少なくとも数時間はぶっ通しで戦っている。

 ゲームとは言いつつもはや何体殺したのかは覚えていない。

 カナタを見ると肩で息をしていた。


「そろそろ疲れてきたか?」

「誰が!」


 煽ってやると雷鳴を轟かせながら魔物を斬り裂いた。

 だがバケモノを取り込んだ俺とは違いカナタは人間だ。魔術で強化しているとはいえ体力は無限じゃない。目に見えて疲れているのがわかる。


 カナタだけではない。討ち漏らしを片付けているサナも、絶えず魔術を使い続けているカノン。的確なタイミングで援護をしているウォーデン。後衛の守りを固めているアイリス。

 誰の顔を見ても疲労している事は明らかだ。

 それに魔術師には魔力という限界もある。魔力を切らした魔術師は一気に弱体化する。タイムリミットは確かにある。

 幸いなのは、魔物の数が徐々に減ってきている事だ。


「カァ!!!」


 頭上で鴉が鳴いた。カノンの援護だ。それを合図に俺とカナタは少し下がる。

 鴉が呪いの霧を吐き出していく。そこにウォーデンの放った炎槍が突き立ち、大爆発を引き起こす。

 多くの魔物が息絶え焼失したが起き上がる魔物もいる。そこにカナタが瞬雷を使い、確実に数を減らす。


 すると地響きがした。うんざりする。


「どうせ一撃で死ぬんだから出てくんじゃねぇよ! 第三偽剣、断黒!」


 これだけ倒せば、どこに出てくるかなんて大体予想できる。だから俺は白大蛇が顔を出す前に偽剣を放った。

 姿を現した瞬間に白大蛇はなす術もなく息絶える。

 蛇視もカノンの魔術で無効化されている為、もはや脅威でもなんでもない。


 その時、またも地響きがした。


「チッ! またか!」


 つい舌打ちが漏れる。だがやる事は変わらない。再び第三偽剣を放とうとしたところで俺は気付いた。


 ……さっきと違う。


 白大蛇が出現する時は洞窟全体が揺れる。それはヤツらが壁の中を移動しているからだ。だから揺れの強い部分に偽剣を放てば倒すことができる。

 しかし今揺れているのは洞窟の奥だ。一定のリズムで揺れている。


 そうして姿を現したのは――。


「……ヒュドラ」

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