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北部へ

 その後、俺はアイリスやサナとも踊った。

 完璧とは言えずとも及第点だったように思う。ラナからも「大丈夫だったよ」とのお言葉をいただいた。

 

 ちなみにラナは他の誰とも踊っていない。誘われていたようだったが全て断っていた。少しだけ、いや正直に言うとかなりホッとした。

 ラナが他の男と踊っているところなんて見たくない。

 これが独占欲というものなのだろうか。

 

 そういえばカナタはカノンと踊っていた。

 見た感じカナタがカノンをリードしていて、踊り慣れていそうだった。特級魔術師というのはそこら辺も履修済みなのだろうか。

 ますます貴族みたいだ。


 そして二日後、俺たちは無常氷山に向かうべく再びレニウスと謁見をしていた。


「その前にレニウス。一つ確認させてくれ」

「ん? なんだい?」

「俺の天使因子を起点に転移魔術は使えるか?」

「安心して良いよ。保険のようなものだからね。使徒が出てこない限りはしないと約束しよう」

「やっぱりか……」


 俺の予想は正しかった。

 しかしそれが分かれば覇星選抜会は出ても良さそうだ。

 一応、昨日のうちに覇星選抜会に出ようとしてる事は仲間たちに相談済みだ。

 案の定サナが駄々を捏ねたがなんとか説得した。後は当日に勝手な行動をしないかを見張るのみ。

 嫌な予感がするのは気のせいだと思いたい。


「聞きたいのはそれだけかい?」

「ああ」


 俺が頷くと、レニウスが立ち上がった。


「転移先は無常氷山まで三日の場所に位置するタウス公国のニレルゲンって街だ。準備ができたら向かうといい」

「そういえばレニウス様。一ついいですか?」

「なんだい? ラナ=ラ=グランゼル」

「帰りも転移魔術なんですよね? 現地に使える魔術師がいるのですか?」

「いや、いないよ。その代わり魔導具で連絡がくる手筈になっている。そうしたら部屋ごと転移させるつもりだよ」

「なるほど……そんなこともできるんですね……」

「部屋の座標はわかっているからね。それで、他に質問はあるかな?」


 レニウスの言葉に全員で首を振る。


「よろしい。じゃあ早速転移、と言いたいところだけど……」


 レニウスがそういうと、一瞬で老人の姿になった。それを見てクリスティーナが部屋の外へ大声を張り上げる。


「入りなさい」

「はい! 失礼致します!」


 そうして部屋に入ってきたのは第三聖騎士団副団長レーニア・シナトラストだった。


「どういうことだ?」


 俺は何も聞いていない。仲間たちの様子を見ても聞いてない事は明白――。

 サナが俺の視線を受けてふいっと視線を逸らした。

 

「おいサナ。どういうことだ?」

「そーいえばー、レーニアが同行するって聞いてたような聞いてないような〜」

「クリスティーナ?」


 ちなみに呼び捨てなのは本人の希望だ。

 曰く、レニウスが呼び捨てなのに自分に敬称を付けるのはやめてほしいとのこと。

 

「お伝えしてありま――」

「――すみませんでした! 完全に忘れてました!!!」


 サナがクリスティーナの言葉を遮り、勢いよく頭を下げた。つまりはそういうことらしい。

 クリスティーナがこれみよがしにため息をつく。レーニアも目を白黒させて困惑していた。


「では改めて私からご説明します」

「ウチの勇者がすみません」

「いえ、第三聖騎士団副団長レーニア・シナトラストには勇者パーティの補佐を任命しています。おそらく必要になるだろうと教皇様が仰せです」


 何に必要なのかはわからないが、レーニアの持つ知識、あるいは力が無常氷山にある遺跡とやらで必要なのだろう。

 レニウスが必要だと判断したのなら特に否はない。


「そういう事ならわかった。サナ、大事なことなんだから忘れんなよ……」

「ハイ。スミマセン」

「では改めてレーニアさん、俺の中にある物で不快な思いをさせると思いますがよろしくお願いします」

「いえ、それはもう大丈夫です。こちらこそよろしくお願いいたします」

「では転移を行います。教皇様。よろしくお願いいたします」


 クリスティーナがレニウスに向かって一礼をする。するとレニウスがこちらに手をかざし、魔術式を記述した。

 その様子を仲間の魔術師たちは一挙手一投足も見逃すまいと観察している。

 やがて魔術式が輝くと、俺以外の仲間たちが消えた。


「……どういうつもりだ?」

「いやなに彼女の扱いをね」


 天使の姿に戻ったレニウスが椅子に座る。


「私が私であること以外の情報は伝えても構わない。何を伝え、何を伝えないかは柊木レイ。キミに任せるよ」

「そういう事か。わかった。みんなにも周知しておく」

「そうしてくれ。では行くよ」

「頼む」


 もう一度レニウスが手を翳すと再び魔術式を記述。魔術式が輝いたと思った瞬間、一瞬にして視界が切り替わった。


「レイ! 大丈夫!?」


 遅れて現れた俺にラナが駆け寄ってくる。


「ああ。少し話をしてただけだから大丈夫だ。……にしても少し肌寒いな」


 今着ている服は各種耐性が完備された戦闘服ではないため、寒さを感じる。室内だというのに吐く息も白くなっていた。


「まあ北部だからなぁ」

「……ん。わたしは慣れてる」


 北部出身の二人は特に寒がる様子はない。流石だ。


「それじゃ行くか」


 こうして俺たち勇者パーティにレーニアを加えた九人は北部、タウス公国のニレルゲンに転移した。

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