女子会
「――女子会を開催します!!!」
夕食後、行儀悪くも執務机に腰掛けながらラナと談笑をしていると、唐突にバンっと音を立てて扉が開いた。
何事かと目を向けるとそこにいたのは勇者が一人。そして隣にはいつもの無表情を心なしかゲンナリとさせているカノンだった。
腕をガッチリと掴まれており、被害者Aという言葉がピッタリと合う。
それで俺は大体の状況を察した。
心の中で合掌をしてから元凶の勇者に目を向ける。
「……突然どうしたサナ。そしてノックをしろノックを。王族の私室だぞ」
「レイには言ってないよ! ラナに言ったの!」
「んなことわかってるわ!」
なぜ男が女子会に参加せねばならんのか。もし誘われたとしても丁重にお断りするところだ。
「……女子会? ってなにレイ?」
一方、招待にあずかったラナは執務椅子の上で言葉の意味がわからずに目をパチパチと瞬かせていた。
「改めてそう聞かれると難しいな。……なんだろ? 女子で集まって恋バナしましょう?」
女子が集まって何をするか。
俺が考えつくのはその一つだった。というよりもカノンを引き連れている以上、十中八九そういう事だろう。
確認の為、サナに目を向けるとうんうんと頷いていた。
「レイの言う通り! 女子が集まってやることと言ったら恋バナでしょ! ラナのことも聞かせてもらうから! そしてノックはごめんなさい。興奮してました!」
サナが早口で捲し立てて最後にぺこりと頭を下げる。そんな勇者の様子にラナは苦笑を浮かべていた。
だけど決して嫌がっているわけではない事はその表情を見ればわかる。というよりも参加したそうだ。
「ごめんレイ。参加してもいい?」
ラナが申し訳なさそうに聞いてくる。
本来ならば俺に許可を取る必要は全くないのだが、このあとは一緒にゆっくりとした時間を過ごそうと約束していたからそれを破ることに対しての謝罪だろう。
だとしても別に謝ることではない。
「もちろん構わないよ。楽しんできて」
「うん! ありがと! でも気になるんだけど、なんでそんな話になったの?」
ラナはパッと笑顔を浮かべると一転して疑問顔になった。それは俺も気になるところだ。
サナがよくぞ聞いてくれたと胸を張る。
なぜだろう。嫌な予感しかしない。そしてこの予感はすぐに的中した。
「カノンちゃんがカナタを好きすぎるからです!」
バカでかい声でそんなことを言いやがった。
ラナが機転を効かせて結界を張ったから良かったものの、張っていなかったら今頃カノンの恋心は廊下に響き渡っていた事だろう。
最低だ。
……まあラナが結界を張る事を信用して大声をあげたんだろうが。
ともあれ超がつくほど最低な行為をしたサナだが、カノンは反応していない。
その表情を言葉にするなら「もう好きにしてくれ」だろうか。まさしく虚無だ。
おそらくなんらかの原因でサナが決定的な場面を目撃。そのまま俺たちを巻き込もうと言いくるめられて今に至る。そんなところだろうか。
……何があったのかはカノンの名誉のため、聞かないでおこう。
再び心中で合掌。
せめてもの情けである。
「って事で女子会! ラナは参加でいいんだよね?」
「うん。参加する。ちなみにいつから?」
「もちろん! この後すぐ!」
こうして急遽、女子会の開催が決定したのだった。




