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熱砂迷宮

 それから約三十分後、カナタ、カノン、ミシェルの三人は熱砂迷宮にいた。


「……凄いなこれは」


 カナタが感嘆の息を漏らす。

 迷宮へと続く階段を降りてまず目に飛び込んできた光景は、地平線の彼方まで続く砂漠だった。

 頭上には容赦なく照りつける擬似太陽。

 地上には灼熱の風が吹き付け、砂を舞い上げている。遠くに見えるのは砂の竜巻だろうか。


 ……これは、魔物よりも環境の方が厄介かもな。


 カナタとカノンが身に付けている戦闘服はグランゼル王国が用意した逸品だ。金に糸目を付けずに作られた服は最上級の各種耐性が付与されている。

 中には熱耐性も含まれている為、暑さはかなり軽減されているはずだ。

 しかし、それでも尚カナタは茹だるような暑さを感じていた。


 吹き付ける熱風が肌を焦がし、汗さえも蒸発させていく。


「……カナタ。……これ」

「ああ。助かる」


 カノンが自分も身に纏っているフード付きのローブをカナタに渡した。

 直射日光がキツイからと受付嬢が用意してくれたものだ。


「しっかし……どうなってるんだこれは」


 カナタはローブを纏いながら呟く。


 今、三人のいる場所は迷宮。紛れもなく地下だ。

 なのにも関わらず視線の先に()()が見えない。

 見た目通りの広さ()()()()事はまず間違いないだろう。


 ……ループさせているのか? でもどうやって? ……いや今は考えている場合じゃねぇな。


 魔術的な疑問は尽きない。だが今はとにかく時間がない。考察は後にしようとカナタは決めた。


「……でも入れてよかった」


 カノンがポツリと呟いた言葉に、カナタは頷かざるを得なかった。

 

「……だな」


 

 

 話が付いた後、カナタとカノンはミシェルを引き連れ受付に向かった。

 そこで衝撃的事実を知ることとなる。


 E級冒険者はA級迷宮には入れない。

 当たり前と言えば当たり前だが、地球人のカナタは知らなかった。

 小説や漫画といったサブカルチャーに精通しているレイやサナなら気付いたのだろうがカナタは違う。まさに寝耳に水だ。


 カノンはというと、ただ単に忘れていた。


「カノンは知らなかったのか?」


 と聞かれたカノンは、気まずそうに目を逸らし「……わたし冒険者じゃないし」と言い訳を口にした。

 カナタが苦笑を浮かべたのは言うまでもない。


 受付嬢もまさか勇者パーティの二人がE級冒険者だとは思っていなかったらしく、大いに困惑した。


 しかし結果としてカナタとカノンはその場でA級冒険者に昇格することができた。

 グランゼル王国のギルドマスターであるフェルナンドの通達が、ネッサのギルドマスターにも届いていたからだ。


 全てが済んだ後、受付嬢が「勇者パーティの方なら特例で入れたと思いますけどね」と苦笑いをしていた。



 

「多分レイとラナのお陰だな。後で礼を言わないと」

「……ん」

「さて、ミシェルさん。もう一度聞くが、今は迷宮内に他の冒険者はいないって事で合ってるよな?」

「はい。S級冒険者の救援が来るまでは立ち入り禁止となっています」


 ギルドでは迷宮管理局という名の通り、冒険者の入出記録を取っている。

 その記録によると現在熱砂迷宮内にいる冒険者パーティは「遥かな空」のみらしい。


「なら他人に迷惑をかける心配はいらないな」


 カナタが手を翳すと、雷が集まり刀となる。

 内包された凄まじい魔力量に魔術師であるミシェルは目を見張った。


「……すごい」

「……カナタの凄さはこんなものじゃない」


 カノンが得意げに胸を張った。


「あまりハードルを上げるな」

「……はーどる?」

「あー伝わらないのか。なんて言うんだろうな。難易度?」

「…………なんとなくわかった。……でもカナタは凄い」

「はいはい。ありがとな」


 カナタが適当にあしらうとカノンは頬を膨らませた。

 

「……む。……なんか適当」

「時間がないからシルを呼んでくれ」

「……たしかに。……おいでシル」


 カノンが呼びかけると、影から銀狼シルが飛び出した。カナタのまわりを一周すると甘えるような動作で足に頭を擦り付ける。


「え!? 魔物!?」


 ミシェルが驚いて杖を構えた。しかしシルはどこ吹く風だ。まるで脅威に感じていない。


「安心しろ。カノンの使い魔だ」

「使い……魔?」

「まあ簡単に言うと仲間だ。ミシェルさんはそいつに乗ってくれ。カノンはどうする?」

「……ん」


 カノンはカナタに向かって両手を広げた。


「……抱え方はよーくかんがえて」

「……わかったよ」


 カナタは渋々頷くと、カノンをお姫様抱っこした。


「……むふ」


 カノンは先ほどとは打って変わってご満悦の様子だ。無表情が少しだけ崩れている。


「カナタ様とカノン様は()()()()ご関係なんですか?」

「……どう思う?」


 カノンがミシェルに意味深な視線を向ける。するとミシェルは頬を赤らめた。


「え? あっ。そうなんですね」

「違う。バカ言ってないで早くシルに乗ってくれ」


 はやくも疲れてきたカナタである。

 

「違うんですか?」

「……時間がないんだろ?」

「あっ。すみません」


 ミシェルはおそるおそるシルの背に乗った。


「じゃあ案内を頼む。方角は?」

「一階層は北に直進です。そうすれば下に降りる階段があります」

「了解。先導は俺がする。カノン。しっかり掴まってろよ?」

「……ん」


 カノンがカナタの首に手を回して強く抱きついた。


「ミシェルさんも振り落とされないように。シル、頼んだぞ」

「ワオン!」


 シルが吠えた次の瞬間、カナタの姿が掻き消えた。


「え?」

 

 一拍遅れて、シルも駆け出す。凄まじいスピードで。


「ぎゃあああああああああああ!!!」


 乙女のものとは思えない悲鳴が熱砂迷宮に響き渡った。

ご覧いただきありがとうございます!


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