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逃走若様 道中記  作者: C・ハオリム
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第8話 「リナがちゃんと考えて商売している」

 「こんな所にも人が住んでいるんだね」


 決して整備されているとは言い難い街道を歩いて行くと、川沿いの少し開けた土地に畑があり、農家が数軒ある場所があちこちにあったことにボクは感心していた。


 「こういう場所で、日用品なんかが良く売れるんですよ。お嬢様、ちょっと路銀稼ぎしていいですか」


 リナが少し大きな集落を見つけてボクに声をかけて来た。彼女の本来の仕事を邪魔したり、妨害する意志はボクには全くない、それどころか思いっきり儲けてもらいたいのだ。

 彼女の儲けは専属護衛のボクたちに還元されるはずなのだ、多分。

 

 「宿営地の状態からすると、つい先日に隊商がこの辺りを通っているから、売れないんじゃないのかな」


 ボクの言葉にリナはニヤッと笑ってみせた。


 「お嬢様、大きな隊商が態々隊列を止めてまでこのような集落で商売はしませんよ。隊列を止めたり、そこから商品を出したりする手間と時間が売り上げと釣り合いませんからね」


 リナはボクにそう説明すると集落の中にどんどんと入って行った。その後をジャグがトテトテと付いて行く、そんな彼女らを集落の人は訝しそうに見ている。ひょっとしたらトラブルが発生するかもしれないと、ボクらは慌ててリナの後を追いかけた。


 「おじさーん、ここでちょっと商売させてもらっていいかなー」


 リナは集落の中央にある広場で何やら数名の住人達と話し合っている割と身なりが立派な老人に声をかけた。


 「おや、尻尾のお嬢さん、商いかい? 何を商っているんだね? 」


 老人は話を打ち切ってリナを見ると穏やかな笑みを浮かべ、何を売ろうとしているのかを確認してきた。必要のないモノを商われても邪魔になるだけだからね。


 「えーとね。髪飾りとか、剃刀、化粧品、尻尾持ちのあたしが吟味したブラシとちょっとした物だよ。お値段は高いのでも大銀貨1枚あればお釣りが出る程度」


 「そこで店を開いていいぞ。場所代はいらん。おい、お前たち、女房殿に、この尻尾の嬢ちゃんが化粧品などを商っていると伝えておくれ。売り切れておったらお前さんら、随分と恨まれることになるぞ」


 「ありがと。じゃ、ジャグ、敷物を敷いて。お嬢様たちは荷物から商品をこの敷物の上に………」


 リナはテキパキとボクたちに指示を下しながら、あっという間に露店を開店させた。


 「ブッコワース伯爵の直轄領、トポリの街で仕入れた化粧品の数々、トポリのおしゃれな淑女の御用達。尻尾持ちのあたしが自らの毛皮で使い勝手を吟味して仕入れたブラシ。切れ味抜群の剃刀、これで男前が上がるってもの」



 店を開くと早速、リナが向上を述べはじめる。彼女の横でジャグも元気な声を張り上げている様子を見て、小さいながら商人なんだとボクは彼女の成長に嬉しい驚きを感じていた。

 そして、彼女と初めて会った時のことを思い出していた。



 2年ほど前、ボクが館の外にシュマとコレットと一緒に買い物に出た時だった。

 ボクは、小さな子供にいきなり、ドンと体当たりされ、思わず転んでしまった。咄嗟にシュマとコレットが駆け寄ってきてくれたが、なんとその子供はボクのポケットの中に財布を取り出そうと手を入れてきた。


 「何してるっ」


 ボクはその子の手を掴んで声を上げると同時に、シュマとコレットががっちりとその子を確保していた。


 「若様を倒すとは万死に値します」


 「しかもお財布に手を書けるなんて、救いようがないですよ」


 その子は今にも喰いかからんとする2頭の猛獣に囲まれ、顔色を失っていた。普通、そうなるよね。そして、その子は大きな目から涙をぽろぽろとこぼしだした。


 「………許して………」


 その子が小さな声で嘆願してきたが、2頭の猛獣はその声を聞く耳を持っていなかった。

 彼女らの第一優先はボクの安全確保だから仕方ないことだけど、その時彼女らは、この子の接近と危険を事前に察知できなかった事の落ち度による負い目と悔しさ、なんかが彼女らの心中を吹き荒れていたのだろう、手加減無しの殺気をその子にぶつけていた。


 「お腹が減っていたのかな? 君のご両親は何をしているのかな? 」


 ボクは2頭の猛獣の背中を撫でて落ち着かせ、この子の安全を何とか確保すると、この子を両親の元に突き出して、親子ともども小言を言うつもりでだった。でも、その子は首を横に振った。


 「両親がいないのかな? 」


 ボクの問いかけにその子はコクンと頷いた。


 「それじゃ、食べるためか」


 ボクはその子に尋ねるわけでもなく独り言を呟くと、その子は首を横に振った。


 「違うの。お金を納めないと寝る場所がない」


 その子は項垂れたまま呟いた。


 「どこかの宿かな」


 「ううん、空き家の物置」


 この子は宿でも寝るような場所でもない所で夜を明かすためにお金を取られている。これは、とても看過できない。ボクは少しばかり憤りを覚えた。


 「許しがたいことだ」


 ボクはこんな小さな子にお金を支払わせようとして、このような犯罪を起こすまで追い込む存在が許せなかった。


 「………つまり、この子供が凶行に走ったのは、そうさせたヤツがいるからですね」


 「手加減なんか必要ないですよね」


 討伐する対象を見つけた猛獣たちは凶悪な笑みを浮かべた。それを見て泣いていた子はボクにしがみついてきた。今だから言えるけど、その時ボクもその子にしがみついていた。それぐらいおっかない表情だったんだ。


 「ステイステイ、今は凶暴になる時じゃないからね。その時が来たら教えるから」


 牙を剥く2人を落ち着かせると、ボクはしっかりとその子の肩を持って、まっすぐにその子の目を見つめると、出来るだけ威圧しない様に質問した。


 「君を追い込んだヤツを討伐する。どこにいるか教えてくれないか」


 「でも、アイツらいっぱいいるし、強いし、お願いすると怖い人がすぐに来るって言ってた」


 ボクの問いかけにその子は怯えながら答えてくれた。小さな子供を頭数と後ろ盾まで使って脅すとは。


 「許せん。心配しなくても大丈夫だよ」


 ボクは思わず怒りを込めて呟いていた。それを聞いたシュマとコレットはボクに同意するように頷いた。


 「きっついお仕置きが必要だよ。二度と悪さできない様に身体に覚えさせないとダメです」


 「お仕置きでは生ぬるいです。生まれてきた事を後悔させてやりましょう。ね、若様」


 彼女らはボクの言葉に過剰に反応しているようで、今にでも誰かに飛び掛からんばかりの勢いだった。


 「じゃ、その悪党がいる所に案内してくれないかな? 悪党は退治しないと、後々面倒なんだよね」


 ボクはその子に安心させるようににっこりして言うと、その子も何とか分かってくれたようで、その悪党のいる所にボクたちを案内してくれた。


 その子が案内してくれた場所は、誰が見てもスラムとか貧民窟と言う言葉が指す場所であると理解できるような場所だった。


 「近所にこんな所があったなんて………」


 ブッコワース伯爵家のお膝元にこのような場所があることが信じられなかった。普通なら、街の警備や運営をするのが伯爵家の仕事だ、それを何もしていないことにボクは驚きを通り超えて呆れ、そして怒りが湧いてきた。


 「あ、そうか………」


 その時、ボクは伯爵家の事を思い出して、がっくりと肩を落とした。

 彼らに、このような事を考える頭も時間もない、こんな事に時間を使うなら彼らは躊躇わずにトレーニング使うだろう。

 つまり、この伯爵家は普通ではないのだ。だから、こんな所にこんな場所があっても当然なのだ。


 伯爵家の筋肉、肉体こそ全ての価値観が、こんな小さな子に悲しい思いをさせ、犯罪に走らせているのだ。


 後日、父上に領内の治安について意見する機会があり、この件を話したが、帰ってきた答えは


 「身体を鍛えよ」


 の一言だった。と言うか、父上はどんな時でも「身体を鍛えよ」ぐらいしか口にしないのだけど。


 「どぶの臭いがします」


 「ネズミの匂いもしますね」


 シュマとコレットが辺りの鼻をひくつかせて臭いを嗅いで、とても嫌そうな表情を浮かべた。嫌なら嗅がなきゃいいのに。


 「嬢ちゃんたち、来る場所間違えているぜ」


 こんな場所ならではの定型文的な台詞が聞こえると、辺りからわらわらと小汚い、悪臭漂う男どもが湧いてきた。

 ボクはさっきの子をそっと背後にかくまい、護身用の短剣に手をかけた。


 「貴様らか、身寄りのない子供から、寝床代を取っている悪党はっ! 」


 ボクは小汚い連中の中で一番偉そうにしている、ジャラジャラと光物を纏った狼の獣人を指さした。


 「どこの坊ちゃんか知らねぇが、いきなり人を悪党呼ばわりとは礼儀がなってないな。俺らが礼儀ってのを教えてやる」


 狼がパチンと指を鳴らした。


 「? 」


 彼の配下であろう男たちがじっと彼を見つめた。狼はもう一度指を鳴らした。彼の配下は首を傾げると、じっと彼を見つめた。


 「あの坊主を痛めつけろ、女は好きにしていいぞ」


 「なーんだ、そう言う事ですかい。それなら、そうとはっきり言ってくださいよ」


 「………」


 配下たちは狼の言葉で初めてそれぞれの得物を取り出した。その奥で狼が肩を落としてため息をついていた。自分の意志が部下に通じないと言うのはもどかしいと言う点では同情を感じたりしたが、今はその時じゃない。


 「シュマ、コレット、凶暴になる時だ」


 「Yes,sir! 」


 ボクの言葉に彼女らは短剣、ナイフを構えると嬉々として悪党とされている奴らの群れに踊り込んだ。


 「とうっ」


 シュマは気の抜けたような気合を発して、斬りつけるより短剣のヒルトで男を殴り飛ばすと、短剣と大ぶりなナイフで二刀流のコレットが目にもとまらぬ速さで、武器を使うのではなく、回し蹴りをして犠牲者の意識を刈り取っていた。


 「ふんっ」


 ボクも近寄って来るのを短剣でぶん殴った。襲ってくる連中は喧嘩慣れしてはいたけど、皆ボクと同じ人で、真っ当な訓練を受けたようには見えず無駄な動きが多い、その上、事前に何をしようかと教えてくれているような振りの大きな攻撃ばかりで、優男のボクでも躱すのに苦労しなかった。そして、シュマとコレットと言えば、獣人の身体能力の上に戦いについてはちゃんと訓練を受けているから、普通の男なんかは彼女らの敵にすらならない、喧嘩慣れしている程度では対抗することも能わないだろう。で、実際、襲ってきた連中はあっという間に薄汚れたスラムの道路上に転がることになった。

 

 「飼いならされた犬と猫の癖にいい動きするじゃねぇーかよ」


 狼は身につけていたジャラジャラしたモノを手に取った。それは、装飾品に見せかけた鎖でその先端には球形の錘がついていた。そいつは、それをぐるぐる回して遠心力をつけるとコレットに向けて放った。


 「遅いっ」


 コレットは放たれた鎖が伸びきった時点で狼より早く鎖を掴み、ぐっとホールドする、彼女は鎖をぐいっと引っ張ろうと力込める、狼はそれに抗うように引き返した。いくら訓練をしていると言っても猫でしかも少女のコレットが純粋な力比べて叶う訳もなく、狼にの方向に引きずられる。そこに


 「正義の鉄拳っ」


 シュマが飛び込んで狼の前にしゃがみ込むと伸びあがる勢いで思いっきりアッパーカットをかちこんだ。

 ボクはソイツの足が浮いたのを目撃した。

 可愛そうに狼は仰向けに倒れたまま動かなくなった。


 「おい、もし、この事で文句があるならブッコワース家に直接言ってこい」


 ボクは伸びている狼に怒鳴りつけていると、この騒ぎを聞きつけてひょこっとリナが現れた。


 「若様、あちゃー、コイツを〆たんですね」


 リナは伸びている狼をしゃがんで、つつきながら楽しそうな声を上げた。


 「あたしも、こいつらに商売邪魔されてたんですよ。いい気味です。これだけの怪我をしたら、あっという間にシマを取られますね。知ったこっちゃないですけど」


 意識を失っている狼にふふっと鼻で笑うと、彼女はボクの影に隠れている子に気付いて尋ねてきた。


 「若様、その子は? 」


 「若様の財布を狙った悪ガキです」


 リナの問いかけにコレットが即答した。その目には少しも同情の色はなかった。


 「まだ、断罪していません」


 シュマが怯える子をがっしり捕まえ、何の表情も表さず言い放った。


 「相手は、まだ子供だぞ。それにこの子はやらざるを得ない状態で………」


 「命まで取りません。少し、お話してきます」


 「世の中、やっちゃいけないことがあることを教えてあげるよ」


 ボクは2人に何とか思いとどまるように諭したが、猛獣たちは聞く耳を持たずその子を引きずるようにして、廃屋の中に入って行った。


 「若様、大丈夫でしょうか」


 リナは心配そうにボクに尋ねてきた、多分大丈夫だろう、少なくとも頭から齧ったりしないだろうと考えて、彼女にあやふやな笑みで答えた。



 「良く理解しましたね」


 「さっき言ったことを守っている限り、君の命は奪わないよ」


 コレットとシュマが泣きじゃくる子供を伴って廃屋から出てくるころ、伸された連中が起き上がりだしたが、彼らは2頭の猛獣を見るやその場から退散していった。残ったのは未だに意識が戻らない狼だけだった。


 「この子が若様の財布を………」


 リナはその子をしげしげと見つめると、うんと頷くと、ボクに視線を転じた。


 「若様、この子、私に預けて貰えませんか」


 リナは泣きじゃくるその子の頭を優しく撫でながらボクに尋ねてきた。


 「この子、親御さんはいないんですよね。行く宛が無かったら、私の商売のお手伝いを欲しいんですよ」


 「ボクも今日知り合ったばかりだからね。その子が良ければリナに任せるよ」


 ボクの言葉のとおりに、ジャグはリナのお手伝いとして犯罪に手を出すこともなく、働きだし、読み書きとマナーを教えられて現在に至っている。そして、恥ずかしいことにジャグが女の子だと知ったのはつい最近の事なんだけど。



 「お買い上げありがとう。うん、これはおねぇさんに似合っている。旦那の見る目が変わるよ」


 リナは髪飾りを中年の女性に元気よく手渡すと、その女性は「やだねー」と言いつつも、ニコニコしていた。その髪飾りが似合っているのか、どうなのかは最近そちら側の性になったボクには判断がつかなかった。


 ジャグはその隣で剃刀をおじさんに手渡していた。彼女らの商売は好調なようで、敷物の上に広げた商品は綺麗にはけていた。


 「久しぶりに買い物できたよ。もう今日は日が暮れる、ここに宿はないが、儂の家に空き部屋があるから、お嬢さん方5人ぐらい泊まれるぞ。どうかな」


 集落の長らしい老人がリナにニコニコしながら話しかけた。


 「ありがとうございます。最近、野宿が続いていましたから助かります。この辺りは山菜などが名産と聞いていますが。売って頂けるものは何かありますか? 」


 リナが集落の長の言葉を受け、早速商談を始めるのを見たボクは彼女が商人であることを確認していた。


 「そうじゃな。山菜は食うから残っておらんが、薬草の類は乾燥させて売りに行こうか思っておった所じゃよ」


 「その薬草見せてもらえます? 良かったら買い取りたいから」


 リナは集落の長について、彼の家に向かった。彼女の背を見送りながら、ジャグが懸命に店じまいを始めたから、ボクたちも手伝う事にした。


 「ジャグ、ごめん。ちょっと仕入れの商談していたから。いいのが手に入ったよ」


 そろそろ店じまいも終わろうかと言う頃にリナが走って戻ってきた。彼女は、荷造りした後の背負子やリュックサックの空いたスペースを確認して、ボクたちをじっと見た。


 「………ボクたちも商品を持つんだね。了解」


 ボクは彼女の目を見て何が言いたいかを悟ると、シュマとコレットにも同じことになると目で訴えた。


 「お安い御用です」


 彼女らはボクの訴えたいことを悟ってくれた。どこかの連中とは大違いだ。

 ボクらはリナの後について、集落の長の家に向かった。

 集落の長の家は、集落の大きさに応じた大きさで、客間も十分な広さがありボクたちが同時に泊まっても余裕があった。


 「よいっしょ」


 リナが部屋に何かを詰め込んだ大きな籠を背負って入ってきて、それを床に降ろした。


 「リナ、それは? 」


 「仕入れた薬草。傷薬、熱さまし、下痢止めとそれぞれの効能ごとによって袋に入れられているから、売る時も仕分ける必要がないから楽ですよ」


 リナは籠から粗い布の包みを手にしてボクに見せてくれた。でも、素人目にはそれが何だか分からない、でも彼女の瞳を見ていると、何かのリアクションをするべきであると義務感にかられた。


 「うん、すごいよ。これをナンガで売るんだね」


 「無理に付き合って下さらなくてもいいですよ。素人には分からなくても不思議はありませんから」


 リナはボクに気にするなと、にっこりして籠の中身を確認するように取り出した。


 「今日は良く売れたみたいですね」


 コレットが仕入れた薬草を確認しているリナに嬉しそうに声をかけた。


 「売れたおかげで、この薬草を手に入れることができたんだよ。普通ならここからナンガまで売りに行くから移動する手間がかかるんだけど、あたしがここで買うから、それを省けるってことで結構いい値で買う事が出来たんだよね」


 思ったより仕入れた薬草の質が良いのか、リナはホクホクした笑みを浮かべている。多分彼女の心の中では様々な計算が為されているのであろう。


 「で、卵は売れたの? 」


 隊商の宿営地で拾った卵についてシュマが尋ねるとリナは首を横に振った。


 「得体の知れない卵はいらないって。食べられるかどうかわからないし、もし、何かが孵ったら怖いからだって。これはナンガで売る予定」


 リナは持ってきた卵をコツコツと叩いた。卵の中に何が入っているか分からないから、あまりヒドイ扱いをしない方が良いと思うんだけど。


 「おじいさんが、今夜、ラズを差し入れようかって聞いて来たから、きっぱりと断りました」


 「うん、その行動は絶対に間違いないよ。これからも姿勢を貫いてほしい」


 絶対にこの方針は変えてもらいたくないことをボクは彼女に力説した。


 「いい取引ができたのが何よりうれしいですね。ここに泊まることにしたのが良かったですね」


 リナが仕入れた荷物を皆の荷物に仕舞いこみながらニコニコしていた。


 「どういう事? 」


 シュマがベッドに腰かけて武器の手入れをしながらリナに尋ねた。


 「トンデモない商品を売りつけてトンずらするような悪徳商人じゃないと判断されたからよ。元々あたしら尻尾持ちは正直だってイメージがあるから、店を構える時は不利になるけど、行商する場合は有利になるんですよ」


 リナは綺麗に手入れされた尻尾を振って見せた。確かに、獣人の悪党と言うのは物理的な悪事を働くイメージが強く、詐欺だとかのインテリ系の犯罪を働くイメージあまりないことにボクは気づいて、1人納得した。


 「今度はその薬草を今回みたいに露店で売るの? 」


 「これは、薬屋さんに卸すのよ。個人で薬草をガンガン買う人っていないでしょ。それに、いくら乾燥させていても、湿気たりしたら商品価値は下がるから、早めに捌きたいのよね」


 コレットの疑問にリナが商人らしい答えを出すと、ボクたちは互いに驚いた表情を浮かべた。


 「リナがちゃんと考えて商売している」


 ボクは思わず声を出してしまった。どうしても彼女のイメージは小物を仕入れてチマチマと商っているものしか浮かばなかったから。


 「こう見えても、商工会に登録されている真っ当な行商人ですよ。行商界の妖狐とはあたしのこと」


 リナは自慢げに言ったけど、その妖狐ってのは自称だと思う。


 「リナが妖狐なら、私はロスタ様の忠犬ですね」


 「私は、ロスタ様に仇なす者に祟る化猫です」


 シュマとコレットも張り合って妙な二つ名を名乗りだした。後で思い出すと転げまわるぐらい恥ずかしい思いをするから、こういう事は控えるといいと思うのだけど。


 「二つ名なんて、自分で名乗るんじゃなくて、自然に周りが言い出すモノだと思うよ」


 ボクはやんわりと彼女らに黒歴史を作らない様に注意した。

 ちゃんと注意したから、後から「あの時に………」なんてことはナシだからね。

この世界の商工会とは、商人や職人など経済を支える人たちの相互協力、保証、銀行的な仕事をする組織です。また、様々な仕事の斡旋もしています。

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