ヲタッキーズ109 普通の腐女子に戻りたい
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第109話"普通の腐女子に戻りたい"。さて、今回はビル壁面を登るコスプレクライマーが死亡w
背後に輸送ダイヤの強奪を狙う古のアイドルグループの存在が浮上、頼みの超天才は機密アクセス権を剥奪されて…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 スパイダー腐女子の死
夜の首都高上野線。地響きを立てて、高速道路上を疾駆するダンプ、トレーラー、SUV…
その振動をビリビリ肌で感じながら、数メートル下の壁面を蜘蛛が這うように動く人影w
「アディ。ザイルが緩んでる!わ…宙吊りょ」
"スパイダー腐女子"のコスプレイヤーw
上野線の真下でザイル1本の宙吊り状態だ。
「急に引っ張らないでょアディ」
キャットウォークから女が顔を出す。
「アディはお取り込み中。ところで、貴女のポーチに入ってるダイヤ、貴女のモノじゃナイでしょ?」
キャットウォークから1本ロープが落とされる。
「返して」
「わ、わかったわ。知らなかったの…ホラ、返すわ」
「そうでしょうね」
女は、ロープを引き上げる。
先についてる袋の中を確認。
「どぉ?ご満足?」
「そうね。とっても…じゃね」
「え?」
ザイル切断!絶叫を残し昭和通りへ落ちる女→即死w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その日の午後。秋葉原合同庁舎ビル前。
「じゃまた。連絡します…君達、どいてくれ」
車椅子用スロープから出て来た密集体形の人混みから、弁護士と思しき人影が弾き出される。因みに上空には戦闘ヘリw
「テリィたん?どうして私の審理の日程を知ってたの?」
「元カノの次長検事から聞いたんだ。で、釈放?」
「YES。私への起訴は全て取り下げられた」
車椅子にゴスロリのルイナは、史上最年少で首相官邸アドバイザーである超天才…だが情報漏洩で国から訴えられてるw
「やったな、ルイナ。ラッキーでした」
「お友達のフィラ・サジラ博士もね」
「でも、サジラは蔵前橋の重刑務所に3週間も拘留されたのょ?…あ、隊長。ごめんなさい」
ルイナの護衛隊長が、ラボに帰ってからにしてくれとジェスチャー。確かに上空でホバリングする戦闘ヘリもウルサイ。
彼女の車椅子は重装備の装甲擲弾兵1コ小隊に取り囲まれている。国家的な資産であるルイナの外出はいつも大騒ぎだw
「機密アクセス権はどーだった?」
「…ダメだったわ」
「何でだ?何もしてないのに」
ルイナは悲しげに首を振る。
「でも、SATOは私を疑ってる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
南秋葉原条約機構は、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に対抗スル首相官邸直属の防衛組織だ。
SATOの司令部は、パーツ通りのとあるゲーセン地下に秘密裡につくられ、日夜敢然と脅威に挑戦している。
で、ルイナのラボはSATO司令部に併設←
「首相官邸のアドバイザーは、そのママだけど、SATOのお仕事はもう無理ね。"シドレ"ともお別れだわ」
ルイナが手にスル模型はSATOの量子コンピューター衛星。
アキバ上空3万6000kmの静止軌道から"裂け目"を監視。
「まぁ他にも面白いコトがあるから退屈しないわ」
「機密アクセス権を取り戻したら?」
「また身辺調査が入ってアラ探しをされるわ。秋葉原のヲタ友に迷惑がかかる。国は遠慮しないから」
ラボで出迎えた相棒のスピアは溜め息。
「何か陰険ね」
「まさに陰険だわ。でも、今までSATOのお仕事で研究が滞ってたコトも事実。ちょうど良い機会だわ」
「そうね。真理の探求に終わりは無いし」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌朝の事故現場。キャットウォークと路面にそれぞれ死体。
「ラギィ警部。アディ・トマキ、22才。ライア・ライト、24才。詳細は不明です」
「至近距離からの音波銃による射殺と転落死、かしら」
「持ち物を荒らされた形跡があります」
現場を仕切るのは、万世橋警察署のラギィ警部。彼女とは、彼女が前任地で"新橋鮫"と呼ばれてた頃からの付き合い。
「コレは首都高HPの応援が必要ね…あら、リルラwどうしてココに?」
「逃亡犯の居所がわかってコレから抑えに行くトコロ。ノルウェーまで」←
「忙しいから手伝えないとワザワザ言いに来たワケ?テリィたん、その内に絡んで来るわょ」
もう絡んでるw
「やぁリルラ。また力を貸してょ(返さないけどw)」
「でも、単純な殺人事件でしょ?何でSATOが絡むの?」
「あのね。被害者は"blood type blue"。異次元人ょ。ソレとチョークバックに"あるもの"が入ってた」
ラギィは、証拠用の透明ビニール袋に入った黒い石を示す。
「何ソレ?…まさか、ダイヤの原石?」
「YES。72カラット5000万円相当のシロモノ」
「ワケあり品か。リルラ、君に似合いそうだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「コスプレクライマーの情報は?」
「2人とも前科前歴なし。ライアは無職。アディはバイトです。友人宅や車の中で点々と生活してた模様」
「何でダイヤを持ってたかは謎。被害者達が凄腕の宝石泥棒には見えナイし」
ラギィ警部に情報が集まる。
「でも、命を狙われたコトは確かょ。ダイヤの情報は?」
「宝石店組合のデータベースで調べてますが、未だヒットはありません。盗難品かも含め不明です」
「どこで入手したのかしら?原産地とかわかる?」
捜査員は一斉に下を向くw
「ダイヤ原石の鑑定って科学が必要ょね?SATOの超天才さんを呼べば?」
「リルラ。ソレが色々とあって、彼女は機密アクセス権を失ったの…ね?テリィたん」
「え。僕?…確かにウチの仕事はやってナイ。ソレだけだ」
リルラの訝しげな視線。僕は溜め息をつく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ビルダリング。最近ビルの壁面をコスプレして登るのが流行ってる。映画"スパイダー腐女子"のヒットで女子率高しw
中でもコスプレクライマーのメッカとされる"推し活通り"には中小ビルの壁面を登るコスプレイヤーの姿が常にアル。
「2人は、コスプレクライマーで"スパイダー腐女子"専門だったわ」
「何か揉め事に巻き込まれてなかった?」
「ライアは、人を怒らせたりしない」
聞き込みに回るヲタッキーズの妖精担当エアリとロケットガールのマリレ。
スーパーヒロイン集団"ヲタッキーズ"は、SATO傘下の民間軍事会社だ。
因みに2人はメイド服。何しろココはアキバだから←
「アディって?」
「ライアより気難しかったカモ」
「彼女達と親しかった人は?」
自らも、真っ赤なビスチェに生足と逝う、サンダーガールのコスプレをしたクライマー仲間は澱みなくスラスラ答える。
「ピィトとヒィトのコンビね」
「死体を発見したのはピィトとハナエだけど」
「ヒィトの本名はハナエ?ウケる」
ってか、どーすればハナエがヒィトに?
「ピィトとヒィトは付き合ってるの?」
「そーゆーんじゃない。コスプレの"合わせ"ょ。スパイダー腐女子とカレ役のスパイダーメン」
「もう1度、話を聞きたいんだけど」
サンダーガールは少し思案顔。
「ココにいないってコトは…他所でビルダリングかも」
「ビルダリング?」
「ロープなしでビルの壁面を登る奴?渋谷で流行ってルンだって…あ、友達から聞いたンだけど」
思わぬ相棒の発言にエアリは驚き、仲間は目を輝かすw
「"100-ken of rocks"?」
「え。何?」
「渋谷のレトロな雑居ビル街ょ。アバンな感じが超ステキ。知らないの?」
メイド2人とサンダーガールでアキバな会話が弾むw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
渋谷の百軒店は昔の繁華街。戦前からのビルもある一方スタイリッシュなラブホも。その壁に張り付くコスプレイヤー。
まさに今、スパイダー腐女子が2Fの窓から隣の窓に飛び移ろうとして落ち、路上のスパイダーメンに抱き抱えられる。
「惜しい。ちょっと手強かったな、ヒィト」
「ちぇ!あら、メイドさん。登ってみる?ソレとも"デリ"の人?」
「デリヘルじゃナイわ。秋葉原のヲタッキーズょ」
途端に神妙な顔になるピィトとハナエ…じゃなくてヒィトw
「アディ・トマキとライア・ライトの件だけど…貴女達、親しかったんだって?」
「確かに、俺達は良くツルんでた」
「4人でクライミング旅行したわ」
口々に答えるピィトとヒィト。息のあったコンビだ。
「あの2人は、どーやって生活してたの?」
「ライアは秋葉原の観光ガイドの仕事。インバウンドが戻って来たって喜んでた。アディは実家からの仕送りがあったな」
「アディは一人っ子だった。お気の毒に」
さらに身辺調査を進めるw
「ライアの御家族は?」
「御両親を亡くしてる。確か従姉妹が池袋にいたけど、俺達クライマー仲間が彼女の家族みたいなモノだった…」
「みっともないからメソメソしないで!」
ヒィトがピィトの肩をバシバシ叩き気合いを入れるw
「臨時収入がアルとか、何かを見つけたって話は、してなかったかしら?」
「そー言えば、ライアが死ぬ前日に電話して来て、お金が入りそうって言ってたわ」
「ふーんwで、お金の出所は聞いた?」
突っ込むエアリ。
「何か見つけたけど…売れるかワカラナイって」
「あら。何のコトかしら」
「ワカラナイわ」
ホントに知らなさそうなヒィト。
「他には?」
「新しいビルを見つけたって喜んでたな。ハイレベルだから"残骸ルート"と呼ぶとか言ってた」
「殺害現場のコトかしら?」
首を横に振るピィト。
「いいや。特に場所は聞いてナイんだ…そうだ!ヒィト、そのビルを探し出して、あの2人の名前をつけようぜ!」
「きっと喜ぶわ!でも、アンタじゃ手に負えないんじゃナイの?」
「お前なら出来るとでも?」
「フン。さっきのを見てたでしょ?」
「俺がリードだ。後に続け」
「バカ言わないでょ。下で大人しく見てて」
全力でカカア天下だw呆れて立ち去るヲタッキーズ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、ルイナのラボ。
「ルイナ。ソレって飛躍し過ぎだと思う」
「何で?スピア、既成概念の枠から1歩抜きん出た斬新な思考と呼んでもらいたいわ。決まりきった先入観的な発想から離れ、ヒョイと超えてみせただけ。飛躍ってホドじゃないわ」
「…この前ネットに"推測と予想に憶測をかけたもの、ソレが宇宙論"って…」
絶句するルイナ。このタイミングでリルラがラボに登場。
「リルラ!ちょうどよかったわ。美しき宇宙論をストリート育ちのハッカーの手から救って!」
「ルイナ。貴女ったら今や国家安全保障の脅威なんだって?」
「え。あ、うん。何か用?」
リルラはストリート育ちのハッカーを指差す。
「…ちょっと話がアルの」
「え?…あ、そう。じゃ私はコーヒーでも飲んでくるわ」
「ごめんね、ルイナ」
車椅子のルイナがラボを出るや、たちまち護衛に挟まれるw
ソンな相棒を見送り、ストリート育ちのハッカーはボヤく。
「コレ、ムッチャ気まずいわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、護衛に囲まれギャレーでお茶するルイナ。
「あら?ミクスから電話だわ。何かしら?…もしもし?」
ミクスは最高検察庁の次長検事で…僕の元カノw
「何か用?テリィたんなら来てないわょ」
「ううん。ルイナが機密アクセス権を取り戻すの、手伝おうと思って」
「貴女が?でも、どうして?」
護衛の装甲擲弾兵が聞き耳を立ててるw
「理由はナイわ。ただ、ルイナのおかげで私、何度も有罪を勝ち取って来た。私、勝ち星が大好きだから」
「でも、今じゃ私はSATOの厄介者ょ」
「貴女を必要とスルのはSATOも同じハズ」
いつもは仲の悪い2人だが、今日は神妙な雰囲気w
「でも…テリィたんが深入りしたがらナイの」
「え。そーなの?秋葉原のヲタクって諦めが早いのね。貴女は、どーなの?大切なモノのために廃人になる覚悟はアル?ナイ?」
「…テリィたんは多分ナイ。あの人、追うのは苦手なの。迫るの専門だから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「ダイヤの原石を追跡するのは難しいわ。加工前だと大した記録も残ってないし」
「そもそも、未だ盗難届が出てないわ」
「盗難は…もしかして何年も前からカモしれないし」
溜め息をつくヲタッキーズ。ココで思いがけない援軍。
「光学結晶解析を使えば?」
「スピア?何ソレ?美味しいの?」
「ストリートギャングのサイバー屋をやってる時に、宝石屋が良くやってた。対象物に光を当てるの。ダイヤは、結晶だから原子が左右対称に配置されてるでしょ?で、その結晶構造に光を当てる。光学結晶解析では、偏光を結晶に当てて、結晶内の不純物、つまり、窒素や硫黄を反射から分析するワケ。コレで原産地が分かるコトが多かった」
わかりやすい説明だ。何処か犯罪臭もスルが…
「でもね!念のために言っておくけど、ダイヤの産地は各地域と言うより、地球の中心なの!高温高圧のマントルで作られるワケ。ソレが硬度、透明度、純度などの特性でダイヤの産地を見分けるコトを困難にしてるわ」
「ん?結局、ダイヤの産地は特定出来ないって言ってるの?」
「ソ、ソ、ソンなコトより、ダイヤ原石の輸送手段って知ってる?目立たないケースに入れて運び屋に預ける。輸送日時を知ってるのは1人。せいぜい2人」
スピアの過去がますます怪しくなる話だw
「と言うコトは、輸送中は狙えない?この原石は地球の中心からコスプレクライマーのチョークバックへテレポートしたって言うの?」
「偶然拾っただけでは?高価なダイヤには、呪いの伝説とかつきものだし。ハリポタでも"賢者のダイヤモンド"って触ると呪われるのょ」
「しまった」
思い切り原石に触ってる僕←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アキバ式の井戸端会議←
「ミユリ姉様がソンなに怒るなんて…」
「だって!ルイナ、機密アクセス権を剥奪されたンでしょ?」
「姉様のお若い頃は、こーゆーのが勲章だったのでは?」
僕の推しミユリさんは、ムーンライトセレナーダーに変身しない時はメイドバーのメイド長だ。
アキバに来る前は、池袋のコスプレバーでメイドをやってたので、かれこれン10年のキャリア←
「そ、その"若い頃"って言い方には全力で反発スルけど、まぁその通りw貴女は、正しいコトをしたの」
「姉様、覚悟はしてました」
「 SATOが貴女を罰スルなんておかしいわ」
盛り上がるリモート井戸端会議。
「とにかく、首相官邸アドバイザーはそのママなので、毎日のお仕事には、ほとんど影響ないの」
「その官邸が、貴女のお仕事に制限を加えて来ても、そう言うつもり?」
「…姉様。私の仕事に必要なのは、つきつめればノートと鉛筆ょ。ソレだけで十分なのです」
ミユリさんは、溜め息をつく。
「あと黒板…でしょ?」
第2章 来なかったルイナ
同時刻。万世橋に立ち上がった捜査本部。
「ラギィ警部、通報が入りました!輸送中のダイヤが消えました!」
「あら。事件は進行中?」
「神田花田町のダイヤ商ブライが5000万ドル相当のダイヤ30個ごと行方不明に!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田同朋町の路地裏。
「アレが通報のあったダイヤ商ブライの車?」
「万世橋に無余地駐車の通報があった。ナンバーを照合したらビンゴ」
「あらあら。用心して偽名でチャーター便まで予約したのに無駄だったみたいね」
黒のセダンに歩み寄るメイド2名。
ヲタッキーズのエアリとマリレw
「開いてるの?」
「うん」
「えっと…次は貴女の番ょ?」
顔をしかめるマリレ。運転席でトランクを開けると…死体w
「神田花田町のダイヤ商ブライ?」
「そうみたい」
「いやーん服に死臭がついちゃう」
いち早くセダンから離れてエアリは溜め息。
「この人、ダイヤは持ってなさそうね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「被害者は、神田花田町のダイヤ商"ブライ"の共同経営者でした」
「共同経営者?」
「兄弟で経営している宝石商です。被害者は弟」
首都高HPのリルラは頭をヒネる。
「神田リバー水上空港で殺されたのね。とりあえず、お兄ちゃんの方に話を聞いてみるわ」
「お願いね。で、テリィたんはどー思う?」
「ダイヤ輸送は、常磐モノの鮟鱇漁より危険ってコトがわかった…コレくらいかな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田花田町のダイヤ商"ブライ"。
「今回のダイヤ輸送を知っていたのは、私と弟だけです」
ブライ兄は、ずんぐりむっくりの禿頭←
「弟さんが誰かにリークしたとか」
「そして、殺された?ソンなバカな。弟は慎重で、輸送中は偽名を使い、チャーター便を使うくらいだから、誰にも話さないハズです」
「顧客や従業員に聞かれた可能性は?」
ブライ兄は激しく否定スル。
「輸送計画は、全て開店時間前に立ててた。父が店を立ち上げて私達兄弟も共に働いた…なのに、今や私1人になってしまった」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンクに改装したらヤタラ居心地良くなり僕やら常連やらが沈殿、メイド長は渋い顔w
しかも、今宵の御帰宅は元カノ。首都高HPのリルラ←
「テリィたん。何でダイヤがコスプレクライマーの手に?」
「僕に聞くか?…まぁ小型のチャーター便が…例えば、アフリカの小さな空港から離陸…飛行艇といえば?」
「揺れる?」
カウンターの中でグラスを拭くミユリさんの顔色を確認しつつリルラとのトーク。常連が愉快そうに成り行きを見守るw
「まぁ揺れるょね。そして、時には墜落だ。でさ、確か死んだコスプレクライマーから"残骸コース"って話があったょね?」
「あ。飛行艇の"残骸"に引っ掛けてる?日本上空まで来て墜落となると、北に向かって飛んでいた?」
「チャーター便だから、飛行計画をアテにならないし、エアルートによってはレーダーにも映らないわ」
僕は(ミユリさんをチラ見しながら)アドバイス。
「世界のどの空港でも離着陸の場所って記録してるハズさ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
場所を変えて万世橋の捜査本部。
首都高HPは"乗り物警察"のエリートで、その捜査権限はワールドワイドだ。たちまち南アフリカの小空港がヒット。
「コレだわ。東ケープ州のキンバーライトパイプ発、シンガポール経由で東京。でも、神田リバー空港には着水の記録がナイわ」
「犯人は、南アフリカでパイロットを襲い、秋葉原へ飛行中に墜落。そして、その墜落現場にコスプレクライマーが…」
「じゃコスプレクライマーを殺したのは誰なの?テリィたん」
みんなが僕を見る。
「そんなのわかんないょ。で、落ちた飛行艇の情報は?」
「偽名で借りられてた。トランスポンダーは電源が入ってなくて使えない。かと言って、エアルート沿いに探すのも不可能」
「ルイナに頼んで絞り込んでもらおう」
たちまちSATOから横槍が入る。
「ルイナは今、秋葉原にとって脅威なの。SATOの機密アクセス権を付与出来ない。捜査には加えられないわ」
「(ソンなコト逝ってる場合?)レイカ司令官、じゃビルダリングが出来そうな"残骸"ルートを探してょ。"シドレ"を使えば1発だろ?」
「ソレくらいなら…」
"シドレ"は、アキバ上空3万6000kmの静止衛星軌道から"リアルの裂け目"を監視スル量子コンピューター衛星だ。
「エアルートと"残骸"ルート、両方から探そう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ムリムリ!そんな飛行艇、見つけられっこナイわ。アメリカ本土で行方不明の航空機ってバミューダ海域で消えた機数より遥かに多いのょ知ってる?」
「ココはアキバで、アメリカじゃないからイマイチ説得力を感じない例えだけど、良く知ってるなw」
「サブスクTVでやってたわ」←
僕はSATO司令部のギャレーで大好きなパーコレーターで淹れた薄いコーヒーを飲んでる。話相手はハッカーのスピア。
「ダイヤ、飛行艇、コスプレクライマー…情報がバラバラなのょ。ソレでも、何100万という小惑星のように、同じ重力源の周囲を回ってるハズなんだけど…」
「ダイヤって重力源も、万物を惹きつけるょね」
「…でも、良いアプローチだわ。その分析で、ターゲットエリアが6つは出るハズょ」
車椅子の超天才、ギャレーにコーヒーを飲みに登場。
「ルイナ。ソレが…8つなのw」
「 SATOから"シドレ"の情報はもらってルンでしょ?」
「高層タワー街ではシグナルが弱過ぎて"シドレ"は場所を特定出来ナイ」
ストリート育ちのハッカー、スピアはルイナの相棒…と逝うより唯一のヲタ友だ。スピアに対するルイナの信望は厚い。
「スピア。貴女がジャージ姿というコトは、未だホンキ出してナイみたいだけど、いつかの"noisy edge"は試してくれたの?」
「ゴメン。"noisy edge"って何だっけ?美味しいの?」
「だから"squash"ょ。覚えてる?テリィたんのUFO追跡騒ぎの時に使った解析アルゴリズム」
もう100年前の出来事に思えるゼ←
「実は、UFOではなかった奴だょね?せっかく宇宙人のコスプレまでして待ってたのに」←
「いつもテリィたんの夢を壊してばかりで悪かったけど、私達あの時、あのアルゴリズムで弱いシグナルからノイズを取り除いてUFOの飛行ルートを特定したわょね?」
「そーだった…ごめん、ルイナ!私、今からホンキ出す!」
ジャージを脱ぎ捨て、スク水になるスピア。微笑むルイナ。
「コレはコーヒーブレイクょ。ミーティングじゃナイから」
第3章 摩天楼の決戦
アキバの駅前から始まった再々開発は、次々と高層タワーを生み、今やアキバはちょっとした摩天楼の街となっている。
「全員、速やかに散開!何が何でも"残骸"ルートを探し出すのょ!見つかるまで帰って来るな!」
ラギィ警部の命令一下、僕を含むヲタッキーズや刑事や警官隊が散りコスプレクライマーはもちろん彼シャツラッパーやインバウンド向けの観光案内所、スケボー少年に聞き込み。
「被害者は、無許可で摩天楼クライマーをやってた模様!」
「摩天楼クライマー?」
「摩天楼の途中階ベランダからコスプレしてテッペンを目指す連中のようです」
もはや低層階で遊ぶビルダリングの域を超えてるw
「警部は何か手がかりを?」
「うん。高層階に、あの夜、機械音を聞いたセレブがいたわ」
「機械音?飛行艇の爆音かしら」
首都高HPのリルラが反応。
「うーん違うと思う。もっと軽い羽音のような…」
「妖精さん?」
「まさか」
みんなが一斉にエアリに注目。彼女はメイド服の下に妖精の羽根を折り畳んでいる…上を向いてモジモジとするエアリ。
「とにかく!ソレゾレもっと調べましょう。誰かが墜落場所にたどり着くカモ」
「ラギィ。摩天楼と摩天楼の間は電波がなく圏外ょ」
「みんなにトランシーバーを支給。2時間後、ココに再度集合。OK?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。SATO司令部に併設されたルイナのラボ。
「進んでる?スピア…あら、スク水なの?」
「ミクス!"シドレ"のデータ情報にも裁判所命令が必要なんてw助かったわ」
「気にしないで」
ミクスは、最高検察庁の次長検事で…古い元カノ←
「ルイナは平気?」
「首相官邸アドバイザーの仕事で忙しくしてるわ。最近は、文科省のリクエストで世界の学生をリモートで教えてる」
「ラッツも忙しそうね」
ラッツは、僕の渋谷時代のストリートネームだw
「ヲタクって意外にワーカーホリックょね」
「のめり込みやすい人種だから。渋谷にいた頃、ラッツが推し活とセックスをしてない時に考えるコトと言えば…推し活とセックス」←
「確かに夢中でやりだしたら止まらないわ。でも、ソコがカワイイ」
話がノッてきて隣に座るミクス。
「良いコトだと思うわ…でも、ラッツは秋葉原に来てから、何か責任感に縛られてる感じがスル」
「秋葉原ファミリーの長男って感じ?」
「サラリーマンなのに、ヲタクの行方ばかり気にしてる。"萌え"がみんなとの絆だから」
付け足すスク水のスピア。
「えっとソレから食べ物も気にしてる」←
「そうそう。食べ物にうるさいわね。親の顔が見たいわ」
「全くね、クスクス」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アキバの摩天楼を1本ずつ当たる。
「どーしてココの駐車場で被害者の車が目撃されたのかわかった。公衆トイレの近くだったのね」
「お隣の摩天楼のベランダは、宴会場だったみたい。コンビニ食品のゴミだらけ」
「ラギィだけど。ヲタッキーズは"AKBハイタワー-WEST"に来てくれない?"崖"が多くて1人じゃ無理だわ」
最近の摩天楼はデザインビルが多く、随所にベランダや小屋上がアル。その全てからビルのテッペンを目指すのが可能。
「ヲタッキーズ、マリレ。了解」
「エアリょ。ハイタワーに向かうわ」
「…」
僕だけ応答しないw
「テリィたん?…どーしたの?スルー?」
まさか。目の前にもう1台トランシーバーがアル。そして…
「転落死したコスプレヲタクから聞いたのね?」
「な、何が望みだ?」
「アンタのコスプレ仲間に奪われたモノ。ソレを返して欲しいだけ」
トンでもない展開になってる。摩天楼群では低い方のタワービル屋上。ピィトとヒィトがホールドアップさせられてるw
2人はスパイダー腐女子&スパイダーマンの"合わせ"←
その"合わせ"をホールドアップさせる…アイドル軍団?
「音波銃で脅されたって、俺達は何も知らないょ!しっかしカラフルだなお姉さん達w」
「あったり前ょ元祖グループアイドルだモノ…わかったわ。先ず、どっちかを殺してから、もう1人に聞くコトにスル。じゃ女から…」
「…では、今夜の摩天楼地区の天気です。南西の風2〜4m、夜から北西の風。明日、日中は晴れ。最高気温30〜36度。午後になると風速3〜4m…」
僕は目の前のトランシーバーを最大音量にして、屋上の反対側に投げ、口から出まかせの"天気予報"をオンエア←
ピィトとヒィトに音波銃を向けてたのは赤、黄、青のアイドル衣装に身を包んだコスプレ3人組だが周囲を見回すw
ココで笑い声と共に現れれば黄金バットになれそうw
「ミキィ、アンタはコイツらを見張って。スゥゥ、アンタは私と来て。行くょ!」
自動小銃と狙撃銃を構えた"悪のアイドル"2人がトランシーバーの方へ向かう。彼女達はキャンディーズなのか?
心配げに見送るミキィちゃんを不意打ちするピィト!顎に頭突きを喰らわせて揉み合うトコロを背後からバケツで…
ヒィトがトドメ←
令和のバケツ女w
「コッチだ!急げ!」
僕が手招きスル塔屋に向けダッシュするピィト&ヒィト!
気づいたランちゃんスーちゃんが塔屋に向け撃って来るw
「飛び込め!僕が閉める!」
スパイダー腐女子とスパイダーメンが塔屋に飛び込む!
僕は1歩前に出て塔屋の扉を閉め…ぎゃ!お尻に衝撃w
「やられた!…と思ったらトランシーバー?粉々だw」
僕のトランシーバー、戦死。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、ラギィ達は大騒ぎだw
「テリィたんとの交信が途切れた!最後は何者からか銃撃を受けてた!」
「音波銃の発砲を確認!20km四方を捜索開始!」
「間に合わない!SATOに戦闘ヘリの出動を要請して!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヒィトのバケツ反則攻撃で気絶したミキィにペットボトルの水をかけて目を覚まさせるのは…リーダーのランンちゃん←
「ミキィ。この役立たズ」
「ピクピクしちゃって」
「普通の女の子に戻り過ぎだわ」←
ミキィに音波銃を持たせ、追跡を開始!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ルイナは、官邸からのリクエストで全世界のエリート学生に向けて"組み合わせ論"をリモートで講義してるw
「…ジャン・カルロ・ロタ曰く。"組み合わせ論"とは、ビー玉を箱に入れる方法が何通りアルかを考える…」
ラボのドアが荒々しく開けられ、護衛の装甲擲弾兵を突き飛ばして入って来たミニスカポリスは…首都高HPリルラだw
「ルイナ、お願い。来て」
「ダメょ。私には機密アクセス権がナイ」
「テリィたんが危ないの」
猛然と車椅子をダッシュさせるルイナ。素晴らしい加速w
「テリィたんが?テリィたんがどーかしたの?」
「移動中に話すわ!あ…」
リルラは、慌ててリモート授業に"出演"←
「全世界のエリート学生諸君…自習ょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕達は摩天楼の中を必死に逃げ回る。命がけの鬼ゴッコだ。
鬼はラムちゃんではなく音波銃で武装した3人組アイドルw
「何やってたんだょ君達は?!"スパイダー腐女子で撮ってみた"って奴?」
「あの摩天楼の壁面を見たろ?あんな"崖"は、秋葉原じゃ初めてさ。見つけたら登らズにはいられない!ソレがコスプレクライマーってモンだ!」
「とにかく!どこかに隠れナイと…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
またまた同時刻。SATO司令部に併設されたルイナのラボ。
「ダイヤを運んだチャーター便だけど、シンガポールから東京湾上空でコースが消えるの。そこから先のルートが特定出来ない。しかも、アルゴリズムには解釈不能なデータ列が残ってる。私、何処か計算ミスしたかしら」
「あらあら。検算には数日かかるわね」
「必要ナイわ。スピア、前提条件の置き方に問題がアル。恐らく、シンガポールからの飛行艇は東京湾上空で喪失してる。その後、何らかのデータ質量の移動があったと解釈すべきょ」
なるほど。全員が納得スル中、リルラは頭を抱える。
「あぁSATOのレイカ司令官に怒られそう…でも、ソレはテリィたんを助けてから考えよっと…どーせ私は、SATOじゃナイし」←
「スピア!このサイトのバックドアにアクセスして。某国の国家空間情報局ナンだけど」
「ハッキング完了。画像をモニターに!」
ラボのモニターに映るのは…アキバの摩天楼街w
「コレは約30分前の某国スパイ衛星からの高解像度画像ょ。コレに未解析のデータ列から推定した飛行経路を重ねて…スピア、コッチのアルゴリズムを回して」
ルイナの指示でスピアがデータを打ち込むと…モニターのリモートセンシング画像に赤い矢印が伸びて…唐突に消えるw
「ターゲットロスト。この摩天楼をclose-upして…ココに何かアル。ホラ、大きくて光を反射してる…屋上に大きな石が転がってる?スペクトル分析だと…花コウ岩だけど」
「住宅地図のデータと照合スルと…ビルの名前は…"フルボッコヒルズ"」
「待って!ソレ、超古代からの山岳信仰の御神体を祀ったビルだわ。オカルト雑誌"ラー"編纂の"聖地の歩き方"によると、ビルを建てる前に超古代の巨石文明遺跡が見つかり、発掘調査が行われたらしい。今では、発掘された太陽石が屋上に祀られ、希少ポケモンが出没するポケGOの聖地になってルンだって。そして…」
リルラは唇を噛む。
「コスプレクライマー達が探してる"崖"もスラングではレクトだわ。全てがつながった!恐らく、敵も味方も、その"レクト"に集まるハズょ!急いで!摩天楼に戻るわょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
確かに不思議な屋上だw狭い屋上には空調やらダクトやらがウネウネ。その真ん中にしめ縄を巻いた巨石が居座ってるw
摩天楼の中を逃げ回ってた僕達は、再び屋上に逃れ、塔屋の屋上で息を殺していたのだが、再び屋上へと飛び降りたら…
「イテェ!」
「ピィト!」
「大丈夫か?」
スパイダーメンのコスプレしたピィトが足を挫くw
「折れたカモしれない。スゴい痛む」
「行くわょ!」←
「俺はダメだ。テリィたん、ヒートを連れて先に逃げろ」
強気な(だけのw)スパイダー腐女子&冷静なスパイダーメンw
「相手はアイドル3人組だ。俺を置いて早く行け!」
「ダメょ!みんなで逃げるの!」
「見つかった!」
いつの間にかキャンディーズが屋上に戻り発砲してくる。
巨大な空調機の影に身を隠して、僕は擲弾筒を準備スル。
「スパイダー腐女子!見つけたわょ!降伏しなさい!コスプレイヤーは殺したくない!」
「ウソつけ!用済みになったら殺すつもりでしょ!アディとライトみたいに!」
「フン!お見通しかい?じゃココで死にな!」
悪のアイドルが音波銃、短機関銃、狙撃銃を一斉射撃w
対する僕は、擲弾筒の駐板を据え空調機の裏から発射!
「oh no!jap, grenade launcher!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「SATO司令部よりヲタッキーズ!総動員で"レクトヒルズ"に急行せょ!北緯35度7019、東経139度7743!」
「ROG!テリィたん達の居場所がわかったわ。全力出撃!」
「こちら、ラギィ警部。全パトカー、直ちに"レクトヒルズ"へ!ヲタッキーズに遅れを取るな!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
激しい撃ち合いが続く"レクトヒルズ"屋上。
「ダメだ!もう走れない。テリィたん、ヒートを頼む。俺はもう無理だ」
「らめぇ!捕まったら殺されるわ」
「もう擲弾筒も弾切れだろ?奴らは俺を殺さない」
恐らく脚を骨折してるピィトは、状況を正確に分析してる。
「おい!何を考えてる?ダメだ。一緒に逃げるぞ」
「テリィたん。このママじゃ全員殺されちまう」
「待って!」
止めるヒィトの手を振り解き、飛び出して逝くピィト。
「撃つな!ココだ!」
「両手を上げてコッチへ来い!何だ1人だったのか?」
「ダイヤを隠した場所を教える!だから、撃つな!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
投降したピィトを両脇から抱え、リーダーのランちゃんとスーちゃんは"飛び去る"。彼女達は妖精らしいw
僕とスパイダー腐女子のヒィトは、ズッと隠れていた空調機の物陰から這い出て、未だ硝煙漂う中で深呼吸←
ところが、僕達は既に狙撃兵の標的になってるw
「ねぇピィトはどーなるの?」
「とりあえず、君を逃したら、全力で追いかける」
「彼が死んだら私は…私は…」
泣き崩れるヒィトは照準スコープの十字線に捉えられてる…
「おっと振り向かないで。私は首都高HPのリルラ。この距離なら私は絶対に外さナイ」
狙撃銃の照準スコープの中にヒィトを捉えた青アイドル服のミキちゃん。その後頭部には音波銃の銃口が当てられてるw
「ライフルの引き金からゆっくり、ゆーっくり指を離してね…ハイ、よく出来ました。良い子ね。貴女は今から私の捕虜ょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「thank you!thank you!」
命拾いしたスパイダー腐女子がミニスカポリスを泣きながら熱く熱くハグしてる。百合っぽくて萌えるアキバ的な風景w
僕も元カノをハグしたいょ←
「良くココがわかったね」
目の前を青アイドル服のミキちゃんが連行されて逝く。
「あぁきっとラッツは怒るわね」
「…やれやれ。ルイナか」
「でもね。あと1秒遅かったらミキちゃんが貴方の頭をブチ抜いてたわ」
うーんソレもそーだw
「わかった。リルラ、あと残りは2人だ」
「ピィトは?ピィトのコトも忘れないで!彼は、ダイヤのありかナンて知らないの。ウソがバレたら殺されるわ!」
「まさかアイドル3人組が妖精だとは…マンマと逃げられたわ。でも、必ず見つけ出す。全力を上げるから」
ミニスカポリスはスパイダー腐女子に約束。もう1つ約束は…
「テリィたん!テリィたん!無事なの?」
「ルイナか。今、何処?」
「…SATO司令部」←
やっぱりなw
「早く帰れょ。レイカ司令官に知られたらマズい」
「はーい」
「ありがと、ルイナ。でも、2度とSATOの仕事はスルな」
第4章 価値ある推し活
万世橋の取調室。窓のない狭い部屋は、サイキック抑制蒸気で蒸せ返る。蒸し暑いがコレでミキちゃんは妖精力を失うw
「身分証がなく、一切口を割らズ完全黙秘です。アイドル服のカラーから恐らくミキちゃんだと思われますが…」
「甘い。国営放送の時と全員集合では、毎週色違いだった」
「さすが警部。昭和に詳しいですね」
心底驚く部下に思い切り脱力するラギィw
「…で、リルラ。ランちゃんスーちゃんは、スパイダーメンを人質に取って逃げたワケね」
「YES。でも、悪のアイドル団は、何でダイヤの輸送を知っていたのかしら」
「神田花田町のダイヤ屋さんが怪しいと思うの」
その声にラギィとリルラは振り向く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
監視カメラ画像をスーパー倍速で見るヲタッキーズ。
「姉様、いました。このカップルです」
「右がシンガポールで離水した飛行艇のパイロット。そしてコッチは…」
「あら。ランちゃんじゃナイの」
溜め息をつくムーンライトセレナーダー。
「どうやら、婚約指輪を買いに来たワケではなさそうね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ありました。ショーケースの裏側に」
マリレが隠しマイクを発見。1945年の陥落寸前のベルリンからタイムマシンで脱出した時間ナヂスはこーゆーの得意←
あ、マリレは国防軍だょ念のため←
「いつの間に盗聴器を…しかし、店内に電磁バリアを張ってるので無効なハズ」
「でも、実際に会話を盗聴されてたコトは間違いナイのです、ブライさん」
「ブライさん。盗聴器は、電磁バリアを回避するため、屋上に設置した小型のパラボラアンテナを経由してシグナルを送ってました。衛星を経由して地上の受信者に音声が届く仕掛けです」
戦闘工兵の経験もあるマリレの説明。うなだれるブライ氏。
「つまり、どこからでも店内の話は筒抜けだった、と言うコトですか?」
「YES。でも、パラボラアンテナが向いてた方角は明らかだし、こんなシグナルを受信スル衛星は限られる。少なくとも衛星の特定は可能ょ」
「盗聴されたと思われる会話の日時を教えてください」
ブライ氏は、激しく首を縦に振る。
「弟と話した日時をお教えします!…でも、ソレで何かワカルのですか?話した内容は、お話し出来ませんょ」
「不要です。包括的幾何学解析を行えば、盗聴に使われた受信機の位置を推測するコトが可能です。ね?スピア」
「問題ナイわ」
リモートで即答が返って来る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「姉様。相当複雑な解析だけど、スピアに出来るかしら」
「モチロン出来ナイわ。でも、彼女は出来る人を知ってる」
「え。」
ムーンライトセレナーダーは、溜め息をつく。
「そろそろ、私も一肌脱がなきゃね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
30分後。ルイナのラボ。
「ルイナ、助けて!」
「ミユリ姉様!ソレにスピアも…何事ですか?」
「貴女の頭脳を借りたいの」
しかし、車椅子の超天才は悲しげに首を振る。
「ソレが姉様、SATOの捜査には協力出来ないのです。さっきはテリィたんが危ないと言われ思わズ…」
「ルイナ。じゃ素粒子物理学の研究だと思って!バブルチェンバー内の分析プログラムで粒子飛跡の検出を…」
「待って、スピア。ルイナには正直にお話ししましょう。実は、テリィ様の自称・元カノで渋谷育ちのミクス検事から難癖をつけられてて…」
ミクスの名が出るや鬼の形相になるスピア!
「テリィたんの自称・元カノですって?!あのミクスって、前に私のアルゴリズム解析は法廷証拠として使えないとかコキ下ろして、SATOでの予算カットまで画策した女なのょ!」
「そうなの!ソレにテリィ様のコト、ラッツとか呼んで。何ょイヤラシイ。渋谷時代のテリィ様ナンて何もかも大っ嫌い!ねぇタバコとか吸ってたのょ!」←
「ですょね、ミユリ姉様。ソレにミクスはテリィたんの"元カノ会"にも未登録です!元カノとして認めないわ!」
最後は"自称・元カノ会会長"のスピアだw
「ミユリ姉様達がソコまで…わかりました。スピア、もういいわ。データを見せて!」
「でも、今のルイナにはSATOの機密アクセス権がナイから…」
「いいから貸して!粒子飛跡の解析アルゴリズムでしょ?スピアには無理。私が見るから!」
スピアからファイルをひったくるルイナ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、僕はヒィトのお見舞いで"外神田ER"。
「死んだアディもライアも、とても良いコスプレクライマーだった。ただ、軽はずみって言うか世の中の見方が甘かっただけ…テリィたん。ピートは未だ生きてると思う?」
「SATOも万世橋も、そう信じて探してる」
「ピィト…アイツ、スゴいょ。命がけで私を救った。ソレと同時にテリィたん、多分アナタの命も救ったわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATOのギャレーに次々黒板が運び込まれ、その全てに難解な数式を書き殴るルイナ。ソレを必死に書き留めるスピア。
「うん。コレでOK…ねぇ!ミクス次長検事サマには、いつ見せるの?どんな顔スルか法廷に見物しに行きたいわ」
「そうね!でも、そのお楽しみはまた今度!」
「あ、スピア。待って!」
ダッシュで駆けて逝くスピア。ギャレーの外では、メイド服のミユリさんが、ルイナ護衛の屈強な装甲擲弾兵に説教中。
「みなさん。コレはコーヒーブレイクょOK?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「SATOのパツキン姐さんの弟子の分析で、盗聴シグナルの受信先が特定出来ました。受信先は、外神田同朋町の借家。借主の名はジムス・マイヤ」
「インターポールのデータベースにヒット!"ジムス・マイヤ"は、この女が使う偽名の1つのようです」
「本名は、アレク・レザル。傭兵部隊"地獄のキャンディーズ連隊"隊長。過去の共犯者は、キスジ・クソンとナイゼ・ルムア」
本部のモニターに次々と画像が並ぶ…が、ナゼか全員ビキニでポーズをとってるwさすが異次元人のキャンディーズだw
「ミキちゃんの本名はナイゼ・ルムアだったのか…残るは、ランちゃんとスーちゃん。一気に解散まで追い込むわょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
外神田同朋町。ジムス・マイヤの借家。
「あのスパイダーメン、ダイヤを隠した場所を言わないわ。拷問して散々痛めつけてみたけど」
「かと言って、いまさら墜落現場には戻れない。警察に待ち伏せされる」
「しかし、どうやって落ちた飛行艇からダイヤを持ち出したの?」
スーちゃんの疑問に答えるランちゃん。
「ダイヤはドローンに搭載して輸送してた。東京湾上空でドローンだけ切り離して秋葉原まで運ぶようプログラムしてあった」
「え。ソレをパイロットは知ってたの?」
「まさか。私が信じるのは"地獄のキャンディーズ連隊"のアンタ達だけょ。パイロットは、最初から消耗品」←
残忍な笑みを浮かべるランちゃん。
「…あのガキはどーする?」
「もう用済みだわ」
「じゃ絞めちゃうね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
拷問部屋にした寝室の床に、散々拷問され、口から血をドクドク垂らしてピィトが転がっている。
血飛沫が飛んだ黄色いアイドル衣装のランちゃんがピィトを上向きに転がし、羽交い締めにスル。
「じっとしてて。楽に死ねるわ」
「…地獄に堕ちやがれ」
「その地獄から来たキャンディーズなの」
その瞬間!ドアを蹴破り短機関銃を構えた警官が飛び込む!
「万世橋警察署!万世橋警察署!」
「手を上げろ!彼を解放スルんだ!」
「抵抗すれば射殺スル!」
窓ガラスが割れ、ヲタッキーズが音波銃口を突っ込む!
スーちゃんはホールドアップ。さらに表に回る警官隊w
「クリア!」
「主犯アレク・レザル、通称ランちゃんの身柄確保!」
「ゆっくり手を頭の後ろに回せ…早くしろ!」←
ムーンライトセレナーダーがピィトを抱き起こす。
「表に救急車が来てるわ。立てる?」
「…君に似合いそーだ」
「あら?ありがと」
ピィトからダイヤを預かるムーンライトセレナーダー。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パーツ通り地下にあるSATO司令部。
「東京湾底βポイントで"死海ダイバー"が墜落した飛行艇の残骸を発見」
「遺体で見つかったパイロットの検視報告の結果です、レイカ司令官」
「薬物反応?毒を盛られて墜落したの?」
監察医は、顔をしかめる。
「仲間に裏切られたのでしょう。モノホンのクズどもだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。
それぞれ血塗れだけど赤、青、黄のアイドル服を着た"地獄のキャンディーズ"が仏頂面を並べ、手錠されて座ってるw
「秋葉原デジマ法に拠り異次元人専門の弁護士の同席を求めるわ」
「後でね。その前にお話しタイムょ」
「宝石店を盗聴して、ダイヤ輸送を知った仲良しキャンディーズの物語」
尋問するラギィとリルラの息はピッタリだw
「先ずダイヤの持ち主を殺し…」
「盗んだダイヤは飛行艇で東京湾へ」
「そこで毒が効いたパイロットは死亡。飛行艇は墜落。でも、ダイヤはドローンで秋葉原の"崖"を目指した」
ラギィが書類ファイルをピシャリと机に叩きつけるw
「でも"崖"でコスプレクライマーが見つけたのは、輸送ダイヤのホンの一部だった」
「なぜなら…恐らく、あくまで恐らくの話ょ?仲良しキャンディーズの内の誰かが、事前にダイヤを盗み、そのまた一部だけをパイロットに預けたから」
「飛行艇が墜落すれば、ダイヤの抜き取りもバレないと踏んだんでしょ。あ。コレ、あくまで仮定の話だから」
激情の余り手錠のママ、立ち上がるランちゃん隊長w
「私がドローン輸送を仕込んでたのを知らなかったからね?!アンタ…」
ラギィとリルラの2人がかりで座らせる。
「摩天楼の街を探し回った消えたダイヤは、とっくに仲良しキャンディーズの誰かの懐に入ってたワケね」
「今頃はカタールでワールドカップを観戦してたのに!」
「…ソレが秋葉原で捕まっちゃったクスクス」
世にも恐ろしい顔でスーちゃんを睨むランちゃん。
何が何だかわからズにキョトンとするミキちゃん。
「キスジ・クソン。蔵前橋の重刑務所で待ってるわ。無事に刑期を過ごせると思うな。覚悟しろ!」
もう普通のキャンディーズには戻れない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"外神田ER"。夕暮れの病室に喜びが大爆発する。
足を引きずり姿を現したピィトに飛びつくヒィトw
「無事だったのね!」
「おいおい。お見舞いに来たのは俺の方さ」
「キスして!」
キスするw
やれやれ。やっとヒィトが女の子だと気づいたみたいだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「テリィ様。結局、ダイヤはスーちゃん名義の貸金庫に入ってたそうです。スーちゃん、司法取引に応じました」
「そっか。しかし、今回も何だかんだで、ルイナのアルゴリズムのお陰だな。ありがと、ルイナ」
「あぁミユリ姉様にダマされたw私、またレイカ司令官に怒られちゃうわ」
ラボから"オンライン飲み"で参戦のルイナは凹む←
「推しゴトのためには覚悟も必要。超天才もスーパーヒロインも同じょ。でも、機密アクセス権を剥奪された身にしちゃ大活躍だったわね。ありがと」
「リルラさんがホント強引なのょ!」
「渋谷時代から誰も彼女には逆らえないさ」
今頃、ミクスはクシャミだなw
「テリィたん。私、やっぱりSATOの決定に抗議スルべきなのかな?機密アクセス権、取り戻したい」
「…実は、僕もそう思う」
「マジ?」
僕は御屋敷のモニターの中のルイナに語りかける。
「マジさ。ルイナが国家の脅威だなんて馬鹿らしいょ」
「でも、テリィたん達の立場はどうなるの?」
「構うモンか。どーせ僕達は"廃人"さ」
ミユリさんが僕のコトをウットリ見つめてる。
メイド姿の彼女に見つめられ、つい饒舌な僕。
「スーパーヒロインを推すのは、いつだって命がけ。でも、ソレこそ"価値あるヲタ活"だと思うのさ」
おしまい
今回は"ビルダリング"と称するビル壁面をコスプレして登る架空の流行をコスプレクライマーのコンビ、不審な死を遂げるクライマー達、彼女達を追う古のアイドルグループに模した傭兵集団、ダイヤ商の兄弟、傭兵集団を追う次長検事、首都高ハイウェイポリス、超天才に相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。
さらに、クライマー同士の恋バナなどもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、コロナ急増の中、5回目ワクチン接種が進む一方、円安に沸く?秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。