第一章:第九話
◇ ◇ ◇
「警兵さん。お世話になりました」
「いや良いんだ、大変だったね。困った事があったら来なさい」
アカネさんが起こした爆発事件から二週間が経つ。
俺は会社を休み、爆発への事情説明やアカネさんへの説明に追われた。
今日も警兵の詰所で事件について、事情聴取を終えた所である。
特にアカネさんには、お咎めは無いらしい。
俺達は入口まで見送ってくれた警兵へ、頭を下げて詰所から出る。
「アカネさん、それじゃぁ帰ろうか」
「うん……」
アカネさんはホームシックと、機械の追加発注に全財産を溶かしたショック。
二つのストレスで一週間、引き籠もっていた。
病院を除けば事件以降、今日が初めての外出である。
「明日からは俺も仕事に出るから。ぱぁっとご飯でも食べに行こうか?」
「……うん」
アカネさんを励まそうとしたが滑って悲しい。だが仕方無いのだろう。
本当は詰所へ出頭する事も抵抗されたのだ。
実験動物として捕まる可能性を恐れていたらしい。
俺もアカネさんの身を心配していた……が役所の扱いはこうだ。
「次元旅行者ですね? 保護者の戸籍証明書を提出して下さい」
結論から言えば……アカネさんは異界から来た生命体と同じ扱いになった。
彼女の権利について、具体的な注意点は二つ。
保護者が金銭や公的責任を負う代わりに自由は認める。
税金を納める義務もある。それは後日、納税通知書が来るだろう……との事だ。
「怖かったね。良く我慢したよ」
「うん……」
「もう大丈夫だから」
アカネさんは俺の服を掴んで離さない。
一週間こんな調子で困っている。俺は女性の扱いは得意じゃないんだ。
どうすれば普段の時間が戻ってくるんだろう?
次話も同時更新します。