エピローグ
お読みくださって、本当にありがとうございます。
趣味に走りすぎた作品ですが、楽しんでいただけたならうれしいです。
侯爵家とサリステル公は、ネリからチェルネスフク家についての報告を聞き、大変にお喜びだった。
トーゴは、ネリに対して、コンラートとカッサンドラが父娘であり、エリンはコンラートの孫、カッサンドラの息子であることを打ち明けていた。
さらに、エリンが既に結婚しており、やがてアリアナとともにコピレに来ることもまた良い知らせだった。
第三王女と公爵の息子である王子は薬を手放せない。
チェルネフスク家の冒険者たちが、侯爵家の依頼に応じて材料を準備してくれること、それがこの先も期待できることが、口に出せはしないものの、非常に重要なことだった。
チェルネフスク家は、侯爵家の庇護を受けてコピレで生きていく。
カッサンドラは、エリンと無事に再会し、父の声援を受けてトーゴを口説き落とした。
ある程度覚悟していたトーゴは、今度こそは押し倒されまいと必死の抵抗を試み、逆転の発想で(どうせ結果は同じだが)押し倒される前に自分からプロポーズして難を逃れた。小さなプライドだが、それなりに守れてよかった……
アリアナとエリンは、ヴィクトルとともにコピレに移住する決心をした。
ヴィクトルはコーヒーの魅力に勝てなかったのだ。
コンラートは冒険者を引退して、薬師の店の隣でパン屋を始めた。自然酵母を養い、裏に新築した作業所ではビールを作った。
凝り性のトーゴが、濾過方法を編み出して、澄んだ琥珀色のビールを楽しめるようになるまでにはいくばくかの年月が必要だったが。
コンラート、トーゴ、そしてヴィクトルは、暑い日にナッツをつまみながらビールを空ける夕方を楽しんだ。
トーゴは、収納の中のコーヒー豆がなくなるより前にと、コンラートのパン屋の裏庭に温室を作ってコーヒーの苗を植えた。
ヴィクトルはもうコピレのチェルネフスク家から離れなかった。エリンとアリアナはもう彼の家族だったのだ。冒険者登録をして、トーゴとともに再び魔の森の最深部まで遠征したりもした。男二人の冒険は、それなりに楽しかったがどうやって鍛えたのかすさまじい反射神経と集中力を持つヴィクトルは、ショットガンの腕は必中、対空砲であろうと対戦車砲であろうと、自在に操った。トーゴはただ彼の後をついて歩き、「前からキットラン」とか「左アルナス・ゴイト、三頭」などと索敵情報を伝達するだけだった。
この旅でトーゴはアルナス・ゴイトの仔を二頭手に入れ、懐に入れるようにして大切に連れ帰った。その後大型のカンジュラスを買い、馬に乗って犬とともに野を駆ける夢をかなえた。ヴィクトルが笑いながら一緒に駆けていた。
何か事情がある男のようだったが、誰も尋ねず、ヴィクトルもまた生涯自分について語ることはなかった。
アリアナとカッサンドラは半年違いでお産に臨み、コンラートは二番目の孫と初めての曾孫に同時に恵まれて、十分すぎる幸せだと感謝を口にした。
「なあ、トーゴ、おれはお前が一緒に飛ばされてきて、本当に良かったと思うぜ」
「コンラート、俺たちは三人とも志願兵でしたよね。偶然一緒になりましたが、何か縁があったのかもしれませんねぇ、今となって思えば。
でも、まあ、一緒に飛ばされたのは、あの日一緒にいたからですよねぇ。いまさら言うのもなんですけど、そもそもコンラートが爆撃機に対空砲をぶちこまなかったら、こんなことにはなっていなかったんじゃないですかねぇ」
「まあまあ、今更だぜ。
それよりおまえ、いつまでコンラートだ。お義父さんと呼べ、お義父さんと」
「はいはい、お義父さん」
「え?」
初めて自分を父と呼んだ日本から来た不思議な男を思わず見返す。
浜崎東吾は、ビールをごくりと飲み干し、ヴィクトルはグフッと詰まった笑いを漏らした。
暮れかかる夏の日、台所からはトーゴが仕込んだカレーの匂いが漂っていて、隣の薬師の店から、赤ん坊の泣き声がデュエットで聞こえる。
Thank you for reading, my friends,
志願兵 (Volunteers) 2022年4月 倉名依都




