ちば君との出会い『サムネイル事件』
ここらでもう1人、読みをメインとする人を紹介しよう。
彼の名はちば君。
荒れ狂うネットの世界にも、平和で温厚な人は存在する。ちば君もどちらかといえば、自ら人に食ってかかるタイプではない。
誠実な性格の彼は、おはようのスレをたてることが多い。そして、旅番組のようにいたる旅行先の写真をそこに貼ってくれる。
時には紅葉や雪。満開の桜や広がる大海原など、美しい季節を感じさせてくれる景色。
時には日本の歴史を教えてくれるお寺などの建造物。
時には朝からそんな食べるの?! と突っ込みたくなる朝食バイキングの写真。
知識や経験は豊富に揃っているが、それを得意気に見せびらかすことなどはせず、掲示板ではいつも冷静に言葉を残す。
無限と錯覚するほどの旅記憶を秘めたちば君。
どこでもドアを持っているのでは? と思うほど、色々な経験談をおはようの言葉に添えてくれるのだ。
それは自分の知らない新たな世界を教えてくれる。興味もなかった場所が、突如魅力的な場所に変わるのだ。
そんな変化を気軽に与えてくれるのは、ネットの良い部分だろう。
掲示板にも慣れ親しんできたころ、小さな事件が起きる。
謎の人物『X』、サムネコロコロ変わる事件だ。
掲示板にはサムネイルがあるのだが、基本は誰かが季節感のあるものにちょこちょこ変更してくれている。
そんなサムネがある日、掲示板にくる人をイメージして作られたアニメ調のものに変化するといった事件が起きた。
どこからか拾ってきた絵に、それぞれの作品や人柄をイメージした言葉が添えられている。
しかもそれが数分ごとに新しいものへと変わるのだ。
更に恐ろしいのは、雄太朗をイメージして作られたサムネのキャラ絵が、本人の若いころにそっくりなのだ。
何とも奇妙な事件は、最後まで犯人が判明しず、謎の人物『X』として処理された。
だが雄太朗は確信している。
あの犯人は、ちば君だ。
何故なら、彼はどこでもドアを所持している。
きっと雄太朗が寝ている間に、顔をチェックしにきたのだろう。
そんな妄想をしながら、今日もちば君の旅写真で旅心を味わうのであった。