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ライーダさんとの出会い『固い頭を柔軟に』

 初めに言っておこう。

 今回登場する彼の名前は『ライーダさん』だ。したがって、正しく呼びかける時は『ライーダさんさん』が正解である。

 まぁ、そんなふうに呼びかけたことはないのだがな。



 掲示板を初めて訪れた雄太朗は、何と書き込めば良いのか戸惑っていた。

 1人の学生が立ち上げたと噂の掲示板。

 学生達から見れば、雄太朗は立派なオッサンである。


 どんな人が集まるのだろうか。年齢層は? 男が多いのか? 女が多いのか? 規模は? 事前情報が少ないネット環境ほど恐ろしいものはない。

 雄太朗本人は決して人見知りではないが、第一声を誤れば、それがネットでは致命傷になると考えていた。


 そんな環境だ。人間ならば、少しは見栄を張りたいというもの。

 好きなジャンルは古文です。とお堅く高い人間を演じるか、素直に厨ニ病全快の王道ファンタジー大好き人間と名乗るか。


 この難しい二択を迫られていた時、1人の男が名乗りをあげる。


「ライーダさんです。得意なジャンルは童話……かな?」


 雄太朗は驚いた。誰もが格好をつけたい第一印象。そこに、ライーダさんは幼稚とも思える童話を突っ込んできたのだ。


 童話なんて小さな子供に読み聞かせるもの。そんな固い頭の雄太朗は、こっそりとライーダさんの作品を手にとる。

 軽い気持ちで読んでみたが、ライーダさんの物語は雄太朗を幼少期にタイムスリップさせた。


 決して文豪のように卓越された文章ではない。

 地の文にこだわる人ならば、それをレベルが低い作品と呼ぶかもしれない。

 だが、彼の作品には彼にしか描けないものが確かにあった。


 難しい漢字で無理に着飾った情景描写とはほど遠い、とても柔らかな世界。

 血濡れのない平和な世の中に、奇才な不思議を作り出す彼は、雄太朗の童話に対する概念をへし折った。


 真の童話とは、大人を童心に帰すものなのだ。


 そんな衝撃を受けた雄太朗は、堂々と初めての書き込みをする。


「初めまして、雄太朗です。好きなジャンルは……厨二心が滾る、熱い王道ファンタジーです!」

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