煌しずくとの出会い『相互評価とは』
雄太朗の掲示板話をするためには、煌しずくを真っ先に知る必要がある。
彼女は、とある小説サイトの自主企画で知り合った戦友とも呼べる女性だ。
膨大な時間を使って書く小説。それを初めて投稿した時は、ワクワクが止まらない。だが、ネット小説を書いたことのある多くの人が、現実の辛さに直面したことがあるだろう。
自信を持って書いた物語。読んでさえもらえれば、絶対に楽しませることができるはず。
そんな妄想と自信は、3日もあれば打ち砕かれる。
更新してもつかないPV。
やっとの思いで軌道にのれば、時にくる辛辣なコメント。
謎の盗作疑惑をかけられることも。
世界で我を通し生きぬくことは、想像以上に楽ではない。
だからこそ、個は仲間を求めて彷徨い始める。
その先にある1つの答え。それが相互評価だ。
お互いの作品に評価を与え、自己満足の世界に浸る。雄太朗はそんな相互評価を悪とは捉えない。
何故なら、煌しずくとの関係性もそれに近いものがあったからだ。
お互いに作品を読み合い、時には更新された話に一番乗りできるかを競い合ったこともあった。
周りから見れば、それは露骨な相互評価に見えたかもしれない。
だが彼女とは、それがきっかけで仲良くなれたのだ。そしてお互いの作品にコメントをし合うことにより、初めて他者と自分をしっかりと比べることができた。
そんな彼女を身近に感じるようになった大きなきっかけが1つ。
彼女はなんと雄太朗の作品100話記念にと、知人に頼みファンアートをプレゼントしてくれた。初めてのファンアート。それは雄太朗の心を奮わせるに十分過ぎるものであった。
知り合いだからといって、好きな作品に評価を戸惑っている人がいるならば、少しだけ考え方を変えてみてほしい。
全ては使い方1つ。相互評価といっても、その使い方で善と悪を分けることができる。相互評価の悪とは、読む気もない作品に片っ端から高評価をつけ、その見返りを強引に求めるものだ。
そして煌しずくと仲良くなれたことは、この先に大きな変化を作り出す。
とある日、彼女からお誘いを受けた。
「小説を書く人が集う掲示板が作られるみたい。私は仲の良い人しか誘いたくない。よければ来ませんか?」
詐欺師の決まり文句のような会話。本来なら絶対に断る案件だ。
どこぞの誰がいるかも分からない。そんな場所で何を得ることができるのか。
だが、彼女は個よりも協を選択できる人間。他人の成功を願い、共に感動することができるお人好しなのだ。
そんな彼女の誘いを断ることは、人道に反するというもの。
雄太朗は、思いきってその言葉に身を委ねてみたのだ。